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デレバレッジ開始か?中国開発銀行がスラム街再開発計画向け融資を停止 

中国開発銀行がスラム街再開発計画向け融資を停止 中国は本格的にデレバレッジを開始した可能性

China Development Bank tightens approvals for property redevelopment programme: source

 

中国開発銀行(China Development Bank/CDB)がスラム街再開発計画向けの新規融資をストップ。あわせて、地方支店に付与していた融資権限を取り上げて中央直轄での判断に変更することを決定したそうです。

これは、中国におけるデレバレッジ(過剰な借り入れの解消)が本格的に進むことを意味しています。

 

中国はここ数年、民間部門、非民間部門ともに、大きく借り入れを増やしてきました。

https://www.bis.org/statistics/tables_j.pdf

 

 

https://www.bis.org/statistics/totcredit.htm

 

もちろん、債務比率でみれば、中国よりもっと債務比率が酷い国はいくらでもあります。日本などはその例です。

しかし、中国の場合はまだ一人当たり名目GDPが1万にも達していない国です。しかも伸び方が急すぎるのです。

直近では、かなりこの伸びが減速していますが、5年移動をとってみればまだまだ急な伸びと言えます。すくなくとも、中国の中央政府はそう考えているようです。

中国は、本格的に構造調整の引きがねを引くようです。

 


 

さきほどの記事の内容に戻ります。

記事中の「スラム街再開発計画」ですが、これはどういったものかというと、簡単にいってしまうと、北京の胡同みたいな古い街並みを全部壊して、最新式の高層マンションや公園、上下水道、ガス管、高速通信網と高規格道路をつくる都市化プロジェクトです。

こういった都市化プロジェクトに中国の地方政府は多額をつぎ込んできました。

地方政府と大手不動産会社がJVを作り、中国開発銀行(CDB)などから低利で借りて、スラム街住民を立ち退かせて、新たな街を作って金持ちに販売する・・・それが中国型のスラム街再開発です。

ちなみに、こうやって立ち退いた住民は新しく建てられたマンションを与えられるそうで、それを半分売ってカネに買えて消費したりするなど、中国の旺盛な消費を支える原動力ともなってきたそうです。既存住民にとってはそんなに悪い話でもなく、地方政府によっては元の広さの二倍をあてがうような例もあるとのことで、まるで三方一両得みたいなプロジェクトになってきました。

こういったスラム街の再開発・都市化プロジェクトですが、2017年には600万軒以上を改修するのに1兆8400億人民元(2807億ドル/約31兆円)をつぎ込んだそうです。31兆円・・・すさまじい金額です。

そして今年は580万軒以上のスラム街を都市化改修する計画で、中国開発銀行(CDB)によると1-5月のあいだにすでに4369億人民元を融資実行しているとのことです。JVは何倍レバレッジで回しているのかわかりませんが、仮に二倍だとするとすでに約9000億人民元が開発に投入されたことになります。

 

ここでいったん、中国開発銀行の融資がストップすることになりました。

 

なにがあったか?

正確なことはわかりませんが、中国開発銀行の資金調達元である中国人民銀行の意向が反映されていることは間違いありません。そしてそれは、中央政府の意向でもあります。


さて、このスラム街再開発プロジェクト向け融資が止まることで何が起きるでしょうか?

まず、どの程度の期間、融資がストップするかはわかりません。すぐに再開されるかもしれません。ですから影響がどのくらい出るかは確実にはいえません。最悪の事態を考えて書きます。

 

最悪の事態をいうと・・・

中国のスラム街再開発プロジェクト融資が止まるということは、中国の不動産、資材(鉄やアルミ、塩ビパイプ、ガラスなど)、建設機械などが構造的な調整の波に襲われるということです。資源株、資本財は大変です。また、不動産の一部売却で潤った人々の消費も大きく落ち込むはずですから、娯楽的要素の強い消費やインバウンド消費にも影響するかもしれません。

その場合、ひとつ言えることは、世界的にシクリカルなセクターには投資をすべきではない、ということです。中国がくしゃみをすればアジア圏全体が風邪をひきます。アジアが風邪を引けば・・・世界はどうなるでしょうか。アジアへの融資を膨らませてきた日本の銀行や生損保もタダでは済まないでしょう。鉄鉱石や原料炭、エネルギーや非鉄金属など全般がメタメタに売られる可能性があります。


 

まさか、中国がそこまで苛烈な引き締めをするとも思えない?

いえ、とりあえず今年は習近平指導部二期目が始まった年ですから、あとあとの伸びしろも考えて抑え気味な経済運営を行う可能性は十分にあります。

また、このタイミングで行われたということは、アメリカの中間選挙への影響を狙ってのものかもしれません、その場合ですと、中国当局によるデレバレッジが長引いて、アメリカともども死なば諸共な展開になる可能性すらあります。

とりあえず、中国のデレバレッジが米中貿易戦争の最中に本格化したことは、世界にとって非常に残念なことだと思います。続報がないのでフェイクニュースじゃないの?とすら思います。もし本当に中国がデレバッジにホンキだしているなら、いろいろとヤバすぎると思います。