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アメリカの外交はハブ&スポーク~イラン制裁措置巡り国際司法裁判所ICJから脱退へ

国際司法裁判所ICJ、米国による対イラン制裁の一部解除を命令~米国は国際司法裁判所ICJからの脱退を表明

 

質問箱に以下の質問がありましたので補足コメントします。

 

https://twitter.com/chu_sotu/status/1050850170403868672

 

先日、こんなニュースがありました。

米の対イラン制裁、国際司法裁判所が「人道物資」の除外を命令 AFP

 

この記事に補足して要約すると以下のようになります。

米国は対イラン核合意から離脱を表明
米国は同時に、イランに対して経済制裁を行うことを表明
これに対してイランは、1955年(パフラヴィー朝時代)に米国と結ばれた修好条約に違反するとしてオランダ・ハーグにある国際司法裁判所(ICJ)に提訴
これに対し国際司法裁判所ICJは、対イラン制裁のうち人道支援物資や医療品、食品、航空機部品などの制裁解除を解除するよう全会一致で採決。仮決定処分を出した
米国は国際司法裁判所ICJの裁定に反発。ウィーン条約の「紛争の義務的解決に関する選択議定書」からの脱退を決定。

 

 

という流れになります。

なお、米国は同時進行でパレスチナ自治政府から「在イスラエル大使館のエルサレム移転は国際法違反である※1」として国際司法裁判所ICJに訴えられていましたが、こちらも米国は拒否。

今回の国際司法裁判所ICJからの米国脱退においては、こちらのパレスチナ側との裁判を脱退の根拠にあげていますが、実際には対イラン制裁解除を回避するためのものであったのでは、と多くの関係者は指摘しています。

※1 在イスラエル米国大使館のエルサレム移転問題・・・第三次中東戦争によってイスラエルが獲得したと主張しているエルサレムですが、実際には実効支配であって、1967年の国連安保理決議ではイスラエルの占領を無効とする決議242が全会一致で可決されています。

この決議242にはアメリカも賛成票を投じているため、アメリカは国連決議ではイスラエルのエルサレム占領を認めない一方で、自国の議会ではイスラエルのエルサレム占領を既成事実化する在イスラエル米大使館移転を認める決議をしていることになりました。

今回、トランプ大統領は過去の議会決議をもとに在イスラエル大使館のエルサレム移転を強行しましたが、これに対してパレスチナ自治政府は「エルサレムはイスラエルの国土ではない」として国際司法裁判所ICJに訴えていたわけです。

 


 

とまぁ、いつものことながら、解説を始めるとどんどん脇道に行ってしまうのが悪い癖なのですが・・・

 

とりあえず、アメリカは、国際協調なんてする気がないんです。

これは歴代の政権でもそうだったんですが、特にトランプ政権下においてはその傾向が強まっています。

国連外交ではなく、アメリカを中心としたハブ&スポーク外交がトランプ政権の目標です。

 

 

この構造は先日のUSMCA(新NAFTA)の枠組みからもみてとれます。

交渉内容の特徴のひとつは、カナダとメキシコの二国間の枠組みがほとんどないこと。アメリカとカナダ、アメリカとメキシコという二国間の交渉の結果がUSMCAです。

そしてUSMCAのもう一つの特徴が、「加盟国が勝手に非市場経済国と通商協定を結ばないこと」と縛る条文。

この二つをあわせると、結局、アメリカを経由した通商協定しか認めないことになります。

 

 

 

とりあえず、先ほども書きましたが、トランプ政権がやりたいのはアメリカを中心とした二国間協定。二国間協定を結ぶ対象を増やすことに注力しています。

そして、できるかぎり他国が勝手に二国間協定を結ぶ状況を邪魔しようとしてきます。

すべてがアメリカを経由するようにシステム化することが目的です。

 

 

 

米国は巨大な消費市場を抱えています。

米国は世界のGDPの24.3%を占めています。

そしてドルを基軸通貨として金融市場を支配している。

米債や米国株、商品先物市場など、米国のマーケットへのアクセスをする権利を他国に与えて覇権国でいつづけています。

だから、二国間での通商関係を他国に強要できますし、国連の枠組みから離脱して勝手な振る舞いができるのです。

まるで現代版デロス同盟のようです。

 

 

 

中国はこれに対抗しようとしています。

すでに中国の消費市場はとても大きい。

たとえば自動車などでいえば、年間販売台数は2700万台規模ですから、米国の1600万台規模と比べても圧倒的な大きさです。

しかし、中国は金融市場の発展、人民元の国際化はうまく行っていません。

 

これは肥大化した官僚組織のせいだと自分は見ていますが、この件に関して書き出すと長くなるので端折ります。

とりあえず、テンセントやペトロチャイナが中国政府の意向で暴落の憂き目にあってきたのをみている人は、中国株が米国株市場にタイマン張れるようになるには相当な時間がかかるだろうと感じると思います。

 

 

米国は、なんだかんだいって我儘を通せるだけの強みを持っています。

消費市場も、金融市場でもおいしい市場です。世界中の人がアクセスしたがっています。

 

米国政府が一番懸念しているのは、自国が我儘を通せなくなる状況がうまれること。

現代版デロス同盟の維持のためにならなんだってやる・・・それが米国政府のやり方であり、トランプ政権はそれをよりあからさまにやっているだけ。

トランプ大統領はデマゴーグの典型であり、今のアメリカを覆っているのは衆愚政治です。

人類は2000年たっても何も変わっていない。

デロス同盟加盟国の中から反旗を翻すものが現れるまでは、この状況は変わらないでしょう。

今はまだ、不満がそこまで溜まっていない、だからやっていられる、そういう平和なひとときです。