光学機器大手キヤノンの業績と株価を短評
今回はカメラや複写機の大手、キヤノンの業績と株価をみていきます。
まずはキヤノンの会社説明をします。
キヤノンとは?
キヤノンとは日本の光学機器、オフィス機器、映像機器、産業機器などを製造販売するメーカー。
扱う製品はカメラ、ビデオ、プリンタ、複写機、半導体製造装置、有機ELディスプレイ製造装置など幅広く、総合電機に近い位置づけとなっています。
キヤノンは日本を代表する企業であり、TOPIXコア30銘柄となっているほか、同社の御手洗 冨士夫会長は日本経済団体連合会第二代会長を務めるなど政財界の重要なポジションに位置してきました。
キヤノンの由来
キヤノンは1933年に内田三郎、吉田五郎によって作られた精機光学研究所がもとになっています。
1934年に国産初の小型カメラKWANON(カンノン)と、そのレンズKASHAPA(カシャパ)を制作。KASHAPA(カシャパ)は大迦葉(マーハ・カサーパ)に由来とのこと。
1935年、海外向けカメラブランドとしてキヤノン(CANON)を採用。これが同社の社名の由来になっているそうです。
キヤノンの事業
カメラ事業・・・デジタル一眼レフカメラ「EOSシリーズ」、ミラーレス一眼、交換レンズ、コンパクトデジカメ、デジタルビデオカメラ、デジタルシネマカメラ、ネットワークカメラ、X線写真撮影機器(デジタルラジオグラフィ)、眼科用測定機器(眼底カメラ)、ネットワークカメラ、監視カメラ「アクシス(Axis AB)」など
複写機事業・・・プリンター(PIXUS、Satera)、複写機、コピー機(ファミリーコピア、PIXUS)、インクジェットプリンター、業務用フォトプリンター「DreamLabo」、レーザープリンター
露光装置事業・・・半導体製造装置、フラットパネルディスプレイ露光装置、有機ELパネル製造装置
キヤノンの有機ELパネル(OLED)製造装置部門キヤノントッキ
AppleのiPhoneX、iPhoneXSなどにも採用されている有機EL(OLED)ですが、この生産を行っているのがサムスンディスプレイやLGディスプレイです。
そしてこのサムスンディスプレイやLGディスプレイが有機EL(OLED)を作るのに使っている有機ELディスプレイ製造装置の蒸着装置は、だいたいがキヤノンの子会社、キヤノントッキのものとなります。
(同業他社としては、アルバック、アプライドマテリアルズ、Sunic Systems、SFAなどがあります。)
キヤノンの半導体製造装置・ステッパー
キヤノンはかつては、半導体製造装置の上流工程、とくにステッパーに非常に強みを持っていました。
90年代まではニコンとキヤノンでシェアを分け合うような感じでしたが、その後の技術開発でつまづき、いまでは最先端品はASML一社のみで独占、キヤノンなどは徐々に撤退ぎみとなっています。
キヤノンの業績
ここからはキヤノンの業績についてみていきます。
利用している資料はほぼキヤノンの公式HPにあるもの(決算短信、有報、説明会資料など)を利用しています。詳しくはそちらをごらんください。
それではみていきましょう。
(この記事は2018年10月26日に書きました)
キヤノンの2018年第3四半期決算は前年比で売上2.2%減、営業利益0.7%減、四半期純利益3.4%減、希薄化後一株あたり四半期純利益167.66円、自己資本比率56.8%
となりました。
ここもと回復傾向にあったキヤノンの業績ですが、ここにきて一服感が漂っています。
キヤノンの業績ですが、四半期ベースでみると上記の通り、前年比で売上6.8%減、営業利益12.4%減となっています。
かなり悪化していることがわかります。
上の段は三か月比較で、下の段は累計比較です。
こうやってみるとわかりやすいですが、キヤノンの売上減少の主因は、おもにイメージングシステム部門、つまるところカメラ部門などであったことがわかります。
キヤノンのカメラ部門のうち、とくにハイアマチュアを対象にしたEOSシリーズが不調だった模様です。あとに載せる資料でも見えますが、世界中で需要が一巡してしまっているようにみえます。
また、メディカルシステム、産機なども減速しています。この産機には、キヤノンの半導体製造装置部門や、キヤノントッキによる有機ELディスプレイパネル製造装置部門などが含まれます。
韓国大手による有機ELパネル製造装置の導入は一服感がありますので、その影響をもろに受けた形となります。
こちらがレンズ交換式カメラ(一眼レフカメラ、ミラーレス一眼)の販売推移です。18年の販売台数が3Qに入り前年比19%減に急減しています。
こちらはキヤノンの売上高を各地域ごと、ビジネスユニットごとにわけた資料になります。
アジアオセアニアのイメージングシステムが19.8%減と非常に大きな減少になっています。
これは、つい数年前まで中国人が高額なキヤノン製のカメラを爆買いしていた反動のようにみえます。
象印の炊飯器と同様に、キヤノンの一眼レフカメラもまた、買いたい人たちは買っちゃった、ということではないでしょうか。
もう一つこの資料から見えることですが、アジアオセアニア地域の産機売上が3Q単独で30.5%減少する一方で、米州のキヤノンの産機売上は累計、四半期ともに上昇しており、しかも18.6%と加速しています。
これはもしかすると、米中貿易戦争の影響かもしれません。
こちらはキヤノンのビジネスユニットごとの売上高、営業利益、営業利益率などをみることができる資料です。
こちらをみると、昨年のキヤノンのイメージングシステム事業(カメラ事業)の利益率は15.5%と非常に高いものだったことがわかります。
これが今年は四半期ベースで9.4%の営業利益率に低下していますから、結構なインパクトです。
キヤノンの株価
キヤノンの株価は御覧の通り、大きく下落しています。
業績下方修正を受けてキヤノン株は急落するかたちで年初来安値となっており、世界的な景気後退懸念も相まって下落スピードが加速しています。
こちらはキヤノン株の週足株価チャートとなります。
キヤノン株はずっとボックス圏で推移しています。
ここもと成長率が非常に落ちており、どちらかというと過去の銘柄といった感です。
キヤノンは割安か?
なお、キヤノンのバリュエーションは2019年予想EPSベースでPER13.9倍、EV/EBITDAで6.86倍です。
この水準ですと、一般的には海外なら買収ターゲットになると思われますが、日本だとダイナミックなM&Aやアクティビストファンドによる解体などが起きません。
株主にとっては悲しい所ですね。
というわけで、今回はキヤノンの業績と株価をみてきました。
上記はあくまでも中卒くん個人の見解であり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資にあたっては自己責任で行っていただきますようお願いいたします。