アナログ半導体シェアトップ テキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)の業績と株価
今回は、アナログICのシェア一位、テキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)の業績と株価についてみていきます。
まずは会社の説明から。
テキサスインスツルメンツ(Texas Instruments / TI)とは?
テキサスインスツルメンツとは、アナログ半導体で世界最大手(シェア30%超)の企業です。
テキサス・インスツルメンツの売上を事業ごとにみると、アナログ半導体が全体の8割超を占めますが、
他にもDSPなどの組み込みプロセッサにも強く、またデジタルシネマや3Dプリンターなどに用いるDLP(Digital Light Processing)などもテキサス・インスツルメンツは供給しています。
アナログ半導体のシェア順位 円グラフ
ソース IC Insights company reports
アナログ半導体シェアランキング 表
2017 アナログ半導体ランキング
|
伸び率 | |
Texas Instruments | 9900 | 16% |
Analog Devices | 4310 | 14% |
Skyworks Solutions | 3710 | 16% |
Infineon | 3355 | 11% |
ST | 2930 | 16% |
NXP | 2415 | -1% |
Maxim | 2025 | 7% |
ON Semi | 1800 | 35% |
Microchip | 940 | 15% |
Renesas | 915 | 13% |
ソース IC Insights company reports 単位100万ドル
テキサス・インスツルメンツの扱うアナログ半導体とは?
ここでテキサス・インスツルメンツの売上8割超を占めるアナログ半導体(アナログIC)について説明しておきます。
アナログ半導体とは、簡単に言ってしまうと自然界のあらゆるアナログなデータを、デジタル処理しやすいように0と1の情報(ビット)に変換するための半導体です。
アナログ半導体が扱うアナログデータは、温度、湿度、光量、圧力、音量、音の周波数、色、電位、加速度、傾きなどさまざまです(CCD/CMOSもその意味ではアナログ半導体に含まれます)
たとえば、電源やバッテリーの温度が高くなり過ぎて壊れてしまいそうなとき、それを検知して指示を出したりするためには温度を知る必要があります。そういうところにもテキサス・インスツルメンツのアナログ半導体は使われています。
テキサス・インスツルメンツの扱う組み込みプロセッサとは?
テキサス・インスツルメンツの扱う組み込みプロセッサ(Embedded Processor)とは、おもにアナログ半導体などから受け取ったデータを高速に計算処理するための半導体です。
組み込みプロセッサはCPUなどと異なりできることに限りがありますが、そのぶん高速に処理でき、非常に低消費電力、低発熱で利用できるように設計されています。
つまり、テキサス・インスツルメンツはアナログ半導体と組み込みプロセッサをあわせることで、自然界のデータとの橋渡しをしている会社、ということになります。
なお、この技術を応用し、近年ではワイヤレス通信周りのコントローラも供給しています。そのため、テキサス・インスツルメンツの業績は世界中のスマホ販売に業績が左右されやすい一面もあります。
テキサス・インスツルメンツの業績
(以下は2018年10月24日に書きました)
テキサス・インスツルメンツの2018年第3四半期決算は売上4%増、営業利益8%増、純利益22%増、一株あたり純利益25%増
一見して、非常に好調なようにみえます。
テキサス・インスツルメンツはキャッシュフローも潤沢で、まったく問題ないようにみえます。
しかし、テキサス・インスツルメンツの業績に対する市場の期待はもっと上でした。この決算を受けて株価は大きく下がりました(のちほど株価についても解説します。)
テキサス・インスツルメンツの2018年Q3決算をセグメントごとにみると以下のようになります。
テキサス・インスツルメンツのアナログ半導体事業は前年同期に比べて売上8%増、営業利益14%増と伸びていますが、組み込みプロセッサが売上4%減、営業利益5%減とふるいません。
テキサス・インスツルメンツのDLP事業などが含まれるその他も、売上6%減、営業利益7%減と地味な動きになっています。
テキサス・インスツルメンツによる事業見通し
また同時にテキサス・インスツルメンツは10-12月期の見通しをしめしており、このなかでラファエル・リサルディ最高財務責任者CFOは、「米中貿易戦争の影響で顧客の需要が減っているのか、それとも過去二年の好調な季節の反動によるものかはわからないが、受注が減っている」といったかんじのことを話していました。
テキサス・インスツルメンツは多方面の需要先を抱えていますから、これが世界的な景気後退の先触れではないか?との懸念を生み、株価は世界的に大きく下落しています。
テキサス・インスツルメンツの株価
んー・・・テキサス・インスツルメンツの株価はかなり弱いですね。
ここもと、ネックラインを切ってきて大きく下げる余地をみせています。
市場は、世界的な景気後退を先取りするような動きを示しています。
目先、80~90あたりが意識される展開でしょうか。
基本的に、テキサス・インスツルメンツの営業利益は安定的に推移しています。
株価の下落でバリュエーションはかなり落ちてきているので、ここから大きく下落するとしたら、世界的な大不況などがあった場合だと思われます。
テキサス・インスツルメンツのリスク
テキサス・インスツルメンツのリスクとしては、世界的な景気後退による需要減少や米中貿易戦争などのほかにも、ひとつ個人的に気がかりなものはあります。
それは、中国が本格的に半導体を内製化してくること。
現在、中国は半導体の調達を輸入に依存しています。
これを自前で確保する動きが出てきています。
中国はやるとなったらなりふり構わず、コスト度外視でやりますから、この点には警戒感をもって見ていく必要があると思われます。
とりあえず、以上になります。
なお、上記はあくまでも個人的見解であり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資にあたっては自己責任でされるようお願いいたします。