以下の記事は、単なるコラムです。
そして、非常に長いです。
読んでもほとんどカネにならないと思います。
とりあえず、飛ばしていいと思います。
化学兵器ノビチョクによるセルゲイ・スクリパリ氏暗殺未遂に関し、米国政府はロシア政府の関与を断定。経済制裁を科す方針
英国で3月に起きた、化学兵器ノビチョクを使用したセルゲイ・スクリパリ、ユリア・スクリパリ両氏に対する暗殺未遂事件に関し、アメリカ政府がロシアを制裁するとのことです。
これは、たぶんエネルギー権益をめぐるハナシです。
アメリカがイランに制裁を科すのと同じ理屈だと思います。
ドイツと日本と中国は、この影響を大きく受けるでしょう。
とくに日本は長期的なLNG調達においてアメリカ依存度があがります。
非常に危険な状態に陥ると思います。
これで潤うのはサウジとアメリカです。
とりあえずみていきます。
今回の制裁の根拠としてはノビチョク(※1)使用が「生物化学兵器の使用を禁じる1991年の法律」に抵触しているからだと日経新聞は報じています。
1991年の法律ってのが何を意味しているのかわかりません。1990年に米ソ間で化学兵器の生産停止と廃棄に関する二国間協定を結んでいますから、これのことじゃないかと思いますが・・・
また、そもそもノビチョクによるスクリパリ親子暗殺未遂事件に関しては、ロシア側は一貫して関与を否定しています・・・ノビチョク使用も、そもそもの暗殺への関与もどちらも否定しています。
・・・が、そんなのどうでもいいようです。根拠はよくわかりませんが、とにかく制裁したいらしいです。
これはたぶん、トランプ大統領による米共和党ネオコン勢力へのゴマすりです。
トランプ大統領としては禁断のゴールデンシャワー映像をロシア側に暴露されるリスクが怖いはず
・・・ですから、本来ならあまりロシア側とは揉めたくないはずです。
実際、先日のフィンランド・ヘルシンキでの米ロ会談では、トランプ大統領は常時ロシア側の肩を持つような発言を繰り返し、プーチン大統領を褒めるような言動はアメリカ国内メディアの批判を浴びました。
トランプ大統領はよっぽどやましいことをしたんだな・・・ゴールデンシャワー事件を明らかにされるのが怖いんだなと個人的には思いましたが・・・
しかし今回、議会の要求に屈してロシアへかなり強硬な制裁を発表しました。
今年4月6日のオレグ・デリパスカ氏(と、その傘下企業のアルミ大手ルサール)に対する経済制裁もかなり唐突感がありましたが、今回もまた唐突に制裁が発表されました。
中間選挙を前にして、共和党新保守派勢力からの圧力がかなり強まっているようです。
このネオコン一派の一部に、石油業界とのコネがかなり酷いのがいる・・・そう個人的にはみています。
なお、今回の制裁は前回のデリパスカ氏への制裁と比べて、その範囲が国レベルであることに注意が必要です。前回はRUSALとノリリスクニッケル、EN+あたりの破綻と取引先企業への影響を警戒しておけばよかったのですが、今回はより広範囲に規制されます。
これを受けロシア通貨ルーブルが急落しています。
ロシアルーブル/米ドル 5分足
制裁は二段階で発動されるとのこと。
一段目はロシア電子部品などの輸出を停止とのこと。
この程度なら、困るのはロシアの航空会社が困るくらいなものですからあまり日本には影響ありません。
ですが二段目は厳しい。ノビチョク製造・保管が疑われる施設に対する国連による査察をロシアが受け入れないかぎり、追加制裁を加えるというものですが・・・
この第二段目の制裁ではロシア貿易のほぼ完全な停止と、アエロフロート・ロシア航空の米国空港の使用も禁止される
・・・とのことです。
ロシアはこんなもの受けないでしょうし、もし仮にロシア側が査察を受けいれたとしても、アメリカはなんやかんやイチャモンつけて制裁発動するでしょう。
今までの経緯からして、アメリカは自国だけで制裁をするとは思えません。イランへの制裁措置の時と同様に、かならず日本など西側諸国も巻き込もうとするでしょう。
これが意味するのは、非常に大きい。本当に大きい。考えうるかぎり、ちょっと書き出してみます。
ノビチョク問題を発端としてロシアへの国家レベルの経済制裁が課された場合・・・
ルサールとの取引が禁止、アルミ地金相場がまた荒れるはず
ノリリスクニッケルとの取引が禁止、ニッケル相場が荒れるはず
針葉樹輸入が停止されますから、バイカル湖周辺で製材している日本企業(非上場の老舗中小企業ですが、ここでは名前を伏せます。三井物産関係先です)には影響が出るでしょう。
上場企業ですと飯田産業もロシアでの一貫製材の話がありましたが、こちらもプロジェクトに影響する可能性があります。
飯田GHD、海外開拓、米で割安住宅供給、ロシアに建材工場、100億円 …
ただでさえ南洋材、カナダの材木価格も上がっていますから、国内外問わず、世界的に住宅建設コストが一段と上昇するでしょう。
で、次にあげるものがたぶんキモになると思いますが・・・
サハリン1、サハリン2プロジェクト、およびヤマルLNGプロジェクトからの撤退が必要になるかもしれません。
まずヤマルLNGプロジェクトで開発中の天然ガス田では日本の日揮が請け負っています。また、商船三井はヤマル天然ガスプロジェクトのためだけにLNG砕氷船を作りましたし、日揮が絡んでいることからヤマル天然ガスプロジェクトで利用される制御機器などは横河電機のものが使われていると思われます。これら企業には影響が出てくると思われます。
また、こちらの方が影響が大きいですが、サハリン1プロジェクトの30%権益を保有するサハリン石油ガス開発(SODECO)の株主は金属鉱物資源機構JOGMEC、伊藤忠商事、石油資源開発JAPEX、丸紅、伊藤忠石油開発、国際石油開発帝石INPEXとなっています。(今調べたんですが、なぜか持ち株比率が変動していてよくわからない。知識が古いので、もしかしたら間違っているかもです。参考程度にしてください。)
また、サハリン2プロジェクトは(サハリン2事件により)、ガスプロム、RDS、三井物産、三菱商事が権益を保有しています。
そして、生産分与契約(PSA)によって日本側が受け取った天然ガスは、日本国内の電力・ガス会社が受け取って、日本の家庭や工場、発電所などで使われることになっていました。
これらの関係先すべてが影響を受けることになります。
アメリカはイラン核合意を一方的に破棄し、イランに制裁を科すと言っています。日本や欧州EU、中国、インドなどにもイランとの取引をやめるように迫っています。
ロシアに化学兵器ノビチョクの問題で制裁を科すのなら、きっと日本やドイツにも経済制裁への参加要求をしてくるはずです。
先日、ドイツのメルケル首相に対してトランプ大統領が「ロシアの捕虜」よばわりしましたが、その理由がドイツの輸入するロシア産天然ガスをめぐる問題です。
トランプ氏、独を口撃 メルケル氏反発 NATO首脳会議 ガス購入巡り(写真 …
トランプ大統領は、ドイツに対してロシアから天然ガスを輸入するのをやめるよう求めているようです。(現在ドイツは天然ガス輸入の20%半ば程度をロシアから輸入しているようです。これがヤマル天然ガスプロジェクトおよびノルド2パイプラインなどの開発が終了すれば30%台後半には伸びるはずです。これをアメリカは邪魔しようとしています。)
アメリカは、かつて日本に対してイランのアザデガン油田からの撤退を迫ったことがありました。今回それと同じことを(ノビチョクを口実にして)やりかねない、とみています。
また同時に、中国に対してもロシアとの天然ガス取引をやめるように要求するでしょう。ヤマル天然ガスプロジェクトとサハリンプロジェクトから輸入する天然ガスを止めるとなれば、中国は豪州かカタール、もしくは通商戦争中のアメリカから天然ガスを輸入しなくてはならなくなります。
2020年代には世界で一番天然ガスを消費するだろうと言われている中国です。もしロシア産とイラン産の原油、天然ガスへのアクセスが断たれたら、非常に困ることになります。とくにロシアとの間ではパワー・オブ・シベリア・パイプラインなどが建設中ですから、ここらへんの投資も無駄になってしまいます。
かといって、アメリカからの要求を断れば、中国は経済制裁を受ける可能性があります。今はアメリカと中国は追加関税の応酬をしあっていますが、これが経済封鎖になれば非常に問題です。
中国は、アメリカに対しては貿易黒字ですが、その他の国に対しては貿易赤字です。
2018年7月の貿易統計(ドルベース)でみると、中国から米国向けの貿易額は輸出が415億ドル、輸入が134億ドル。差し引き281億ドル。中国から世界(米国含む)の貿易額は、輸出が2155億ドル、輸入は1875億ドル、差し引き280億ドルです。
つまり、アメリカ以外の国々に対してはマイナス1億ドルの貿易収支ということになります。
この状況でアメリカとの貿易がストップするのは本当にマズいわけです。
とりあえず、今回のノビチョク問題を発端にした経済制裁で潤うのはアメリカとサウジです。
この二か国はイスラエルと組んでイランを虐めています。利害関係が非常に密接です。
サウジはサウジアラムコの上場をしたがっています。稼いだカネでアメリカから防衛装備品を大量に購入する約束をしています。
ストックホルム国際研究所、「サウジアラビアはアメリカ製兵器の最大の輸入国 PARS
またサウジアラムコが上場するのなら助言会社としてローファームや金融機関が噛むでしょうが、それらに強いのは・・・
つまりそういうことだと思います。
すべては利害得失のためなんじゃないか、と思います。
こうやってみていくと、神経剤ノビチョクによるスクリパリ親子の暗殺未遂も、本当にロシアのせいだったのかどうか怪しく感じられてきます。
陰謀論だと言われるかもしれませんが、すべてはシナリオが書かれていたのではないかとすら思えてきます。
だって、下にも書きましたが、ノビチョクはソ連とその後継のロシアしか持ってないとされる物質なわけですよ。
わざわざそんな、どこの国がやったかわかりやすい物質を使って殺そうとしたりするでしょうか?
もちろん、二重スパイへの見せしめという可能性もあるにはありますが・・・
真実は闇の中です。
ただ、これから向かう先は何となくみえてきています。
世界はますます分断へ向かい、高コスト体質になっていっています。
気を付けた方が良いと思います。
※1 ノビチョク(novichok)・・・ソビエト連邦、ロシアのみが研究開発、保有しているとされる5種の化学兵器の総称
ノビチョクは、世界でソ連とその後継であるロシアが「フォリアント」計画として研究開発・保有しているとされる5種の化学兵器。
そのうちノビチョク5(A-232)は汎用性が高い化学兵器と言われており(ノビチョクA5は直前に二種の比較的安全な化学物質を混ぜ合わせるバイナリー兵器とのこと)、2018年3月の元二重スパイ、セルゲイ・スクリパリ、ユリア・スクリパリ両氏に対する暗殺未遂でも、このノビチョク5が使われたものと英国当局は見ているそうです。
なお、ノビチョクの毒性はVXガスの5~8倍とされており、VXよりも検出が難しく、多くのNATO諸国の防護体制をすり抜ける可能性が高いと言われています。
ノビチョクの効果としては、神経伝達物質アセチルコリンの分解が阻害され、アセチルコリン濃度が神経繊維で増加することで筋肉の不随意運動を引き起こすとのこと。つまりは痙攣。これによって呼吸停止による窒息、心筋の運動も止まり、心不全もしくは窒息によって死に至るとのことです。