記者殺人事件を巡りサウジ政府が強硬姿勢~石油輸出禁止をチラつかせる~ソフトバンク・ビジョン・ファンドにも影響か?
サウジアラビアの総領事館でジャーナリストのジャマル・カショギ氏が殺害された可能性が出ています。
記事:サウジ出身の反体制記者ジャマル・カショギ氏がサウジ領事館内で殺害された可能性
この件を巡り、多くの国々が懸念の声を上げています。
欧州各国はもちろん、サウジの最大の同盟国であるアメリカもまた、今回ばかりは庇いきれずに苦慮しています。
サウジ記者殺害疑惑 トランプ氏、事実なら「厳しい処罰」を予告 CNN
これに対して、サウジ政府が反発を強めています。
世界経済に対する影響力行使を示唆する、と報じられています。
サウジ、世界経済への影響力行使を示唆-反体制派失踪での非難に反発
サウジが言う場合の世界経済への影響力行使、というのは決まっています。
サウジに敵対したら原油を輸出しないぞ
ということです。
1日当たりの原油生産量でみると、サウジは米国についで世界第二位です。
順位 | 国名 | 生産量(バレル/日量) |
---|---|---|
1 | 米国 | 1,305.7万 |
2 | サウジアラビア | 1,195.1万 |
3 | ロシア | 1,125.7万 |
4 | イラン | 498.2万 |
5 | カナダ | 483.1万 |
6 | イラク | 452.0万 |
7 | アラブ首長国連邦/UAE | 393.5万 |
8 | 中国 | 384.6万 |
9 | クウェート | 302.5万 |
10 | ブラジル | 273.4万 |
BP調べ
そして、1日当たり原油輸出量でみても、サウジはロシアに次いで世界第二位です。
資料はBPより
世界の原油輸出入は67592、サウジの輸出量は8238ですから、サウジは12.2%の原油輸出シェアということになります。
現在、イランへの経済制裁が検討されており、どうしても原油需給はひっ迫しています。
イランへの制裁は世界のマーケットに1~4%弱程度の影響を与えるはずです。(制裁規模にもよる)
仮にイランに対してフルに制裁が入った場合、原油需給は2%程度需要が上回ることになり、原油価格には上昇余地が生まれます。
この環境下で増産を期待できるのはサウジしかなく(米国は輸送に難がありパーミアン盆地の開発が停滞)、もしもこの状況でサウジが原油禁輸措置などをとると、原油価格が急騰して世界経済が傾く可能性がある状況となっています。
なお、サウジは他国からの干渉に対して過度の対抗措置をとることが度々ありました。
つい数か月前にも、以下のようなニュースが世界を駆け巡りました。
サウジ、カナダへの航空便停止 人権活動家拘束めぐり緊張高まる
サウジの女性人権活動家がサウジ当局に逮捕されたのですが、これにたいしてカナダが抗議をしました。
そうしたら、カナダへのエネルギー禁輸措置、航空便停止、留学生の一斉帰国措置などをサウジ政府がとったのです。
「いくらムカついても普通はそこまでやらないだろう?」と思うようなことを中東の指導者は行うことが多々あり、それはサダム・フセインもそうですし、シリアのアサドもそうですし、もっというとユダヤ人国家のイスラエルもそうなんですが、今回、サウジもまたイヤ~な感じになっているわけです。
(ここらへんは文化圏の違いだと思います。敵対者に対しては徹底的にやっつけておかねばならない、中東はそういう文化なのだと思います。)
なお、サウジの実質的な指導者であるムハンマド・ビン・サルマン皇太子は、昨年11月、他の王族を大量に拘束して金品を巻き上げたことでニュースになりました。
今回のカショギ氏殺人事件の黒幕が誰であるのかは、今のところ不明です。
不明ながら、多くの人がサウジ王室の関与を疑っています。
サウジの王室はこれに憤慨しており、もしそういった言動を続けるのであれば、原油輸出をしないぞ、と脅している・・・それが今回の件です。
サウジアラビアへの制裁が発動されれば、ソフトバンク・ビジョン・ファンドにも影響か?
今回のジャーナリスト殺人事件は本当に大きな事件です。
下手をするとアメリカの外交方針、世界のエネルギー需給、世界経済を大きく揺るがすくらいに大きな事件です。
とりあえず、今回の件を見た多くの投資家はもはやサウジには投資しないでしょうから、サウジアラムコの上場は無期限延期どころかポシャると思われます。
また、経済制裁措置が本格導入された場合、ソフトバンク・ビジョン・ファンドもまた被害を受けるでしょう。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの大口出資者はサウジ王室ですから一大事です。
もしも殺人が明確になり、サウジ政府の関与があり、米国などによる経済制裁が実行されることになった場合、ソフトバンクビジョンファンドの資金調達が滞り、それが既存事業のファイナンス、再投資への足かせになっていく・・・可能性もありえます。
なんにせよ、非常に大きな事件です。絶対に注目です。