インドが不良債権処理のため国有銀行バローダ銀行、ビジャヤ銀行、ディーナ銀行の統合を発表
インドのジャイトリー財務相が、国有銀行バローダ銀行、ビジャヤ銀行、ディーナ銀行の統合を発表しました。これは、不良債権処理を円滑に行うためのものと、市場では受け止められています。
インドの国有銀行における不良債権問題は非常に問題が根深く、この三行においても、バローダ銀行が5.4%、ビジャヤ銀行が4.1%、ディーナ銀行に至っては11%もの不良債権比率があるとされています。
個人的な見解を言わせてもらうなら、インドは、銀行に限らず情報通信から医薬に至るまで、あまりにも管理が杜撰な企業が多いです。
インド企業の管理問題は経営管理に限りません。
たとえば第一三共が46億ドル(約5000億円)で買収した、インドの後発医薬品業界の期待の星ランバクシーラボラトリーズですが、生産管理、衛生管理の問題が発覚して大損を出すことになりました。
かつて飛ぶ鳥を落とす勢いで伸びていたインドを代表する自動車メーカーであるタタモーターズは、見当違いな格安自動車ナノを販売するなど迷走し、いまではごらんのありさまです。
(上がっているようにみえますか?インドはインフレ率が高いですから、これは実質的には大幅安なんですよ。)
インド二位の富豪であるアニル・アンバニ氏が率いていてた大手通信事業者、リライアンス・コミュニケーションズの株価は以下のようになっています。
お兄さんの会社と競争が激化したというのも一つの理由ではありますが、それにしても通信インフラを担う大手企業とは思えないような株価の推移です。
そして、インドの国有銀行の不良債権問題は非常に問題です。
これについてはみずほ総合研究所アジア調査部主任研究員稲垣博史氏のレポートが参考になります。
要約すると
・2013年にインド準備銀行の総裁に就任したラジャン前総裁が、銀行経営の実態を把握するために検査を厳格化。
・ラジャン前総裁による措置を受けて、インドの国有銀行の不良債権比率は上昇
・不良債権の大部分は国営銀行が抱えている状態
・国営銀行の不良債権比率は2017年に入ってもなお上昇している状態
・一般的な国では、バブル崩壊で不良債権が大量発生するものだが、インドの場合には全く別の構図がある。
・インドは、経済成長が高い伸びを示しているのに、不良債権が増え続ける状態にある。
・もっとも低成長だった2012年でさえ、インドのGDP成長率は5.5%あった。それでも不良債権が増えつづけている。
・つまり、国営銀行が積極的に貸し過ぎているからではないか。
・また、返済可能であるにも関わらず、債務不履行を宣言する企業が多すぎるのではないか。
・国営銀行だけ突出して不良債権比率が高く、民間銀行は健全なのは、政府による国営銀行へのプロジェクト融資などにおける圧力があるからではないか
・つまるところ、銀行経営における統治問題を解決することが必要なのでは?
という指摘です。
全く同感です。全面的に同感。
個人的には、これはインドの銀行だけの問題ではないように思います。
銀行だけでなく、企業、そして政府の人々の感覚も、インドはいまだに遅れているのだと思います。
先日、知人が銀行さんにインド株を組み入れた投信を勧められたそうです。
曰く、「インド人はアメリカ大企業のCEOになる人も増えている」「インド企業の経営は透明性が高く安心安全」とのことだそうです。
たしかに、アメリカの大企業でCEOになるインド人も増えています。
しかし、それらはインドで仕事をするインド人ではなく、アメリカで働けるだけの水準をみたした優秀なインド人。
「インド企業の経営の透明性が高い」などと、どうしたら言えるのでしょうか。
こういうマヤカシじみた文句には注意しないといかんですね。
とりあえず、インドが魅力的な投資先であることは確かですが、それはインド企業への投資が魅力的なこととは一致していません。
個人的には、インドで事業を展開している先進国企業への投資こそが一番の安全なインド株投資の方法だと思います。
(ただ、それすら政策的リスクは抱えますが。)
とりあえず、インド株投信は選択肢としてないなぁ・・・と感じます。
以上です。