【三菱重工】MRJ製造の三菱航空機に2200億円の財務支援~いっぽう、加ボンバルディアは元技術者による機密情報の不正流用を米連邦地裁に訴え~
MRJ(三菱リージョナルジェット)を開発している三菱重工傘下の三菱航空機を巡り、二つの大きな動きが出ています。
ひとつは三菱重工本体による2200億円もの財務支援
もうひとつはカナダの小型旅客機メーカー、ボンバルディアによる機密情報流出を根拠としたシアトルの連邦地裁への提訴です。
ボンバルディアによる三菱航空機MRJに関する訴え
ボンバルディアによると、三菱航空機と、三菱航空機の協力企業であるエアロテック社はボンバルディアに在籍していた技術者らを採用。
三菱航空機のMRJは、米連邦航空局FAAとカナダ航空局TCCAの型式証明取得において、ボンバルディアの機密情報やデータを不正に流用したとボンバルディアは主張しています。
これを根拠に、ボンバルディアは三菱航空機が所在し、飛行試験も行っているシアトルの連邦地裁に、損害賠償や情報の使用差し止めなどを求めて提訴しました。
なお、三菱航空機のMRJ開発に携わった元ボンバルディアの技術者たちですが、もともとはボンバルディアの小型旅客機Cシリーズ※1の開発に参加していたとのこと。
※1ボンバルディアCシリーズ=エアバスA220
ボンバルディアはCシリーズを制作していたユニットCSALP(C Series Aircraft Limited Partnership)の株式の50.1%をエアバスに譲渡(2018年7月)。エアバスA220と名称変更されました。
カナダのケベック州で作られているエアバスA220は座席数100~150のMRJの競合機です。
三菱航空機MRJは経産省主導プロジェクト
三菱航空機のMRJは、もともと民間主導で行われたプロジェクトではなく、官主導のプロジェクトでした。
2000年代初めころ、日本の企業は下請けとしては優秀だが、結局おいしいところは全部ボーイングなどに持っていかれてしまう。
日本にも最終工程まで一貫して担える航空機メーカーを作ろう。
という理念が先行する形で、経済産業省主導で始まったのが最初で、これに応じたのが三菱重工でした。三菱のリージョナルジェットだから、MRJと名付けられました。
あの当時は、NHKがプロジェクトXなどを放送していた時代です。
日本の製造業は世界的競争力を失いつつありましたが、それを直視せずに根性で諦めずに頑張る素晴らしさを称揚する・・・そういう精神論がまかり通っていたのが2000年代です。
当初から自前主義が当然とされ、日本人だらけの開発陣で始まったといいます。
MRJは純国産民間航空機
と、当時はしょっちゅう報道されていました。(実際にはエンジンはPWなんですけどね)
しかし、現代の航空機製造は当然そんなあまいものでなく。
三菱航空機は幾度となく遅延、損失を発生させ、当初2013年には納入可能とされてきた計画がどんどん後ずれしました。
結局2016年11月、型式証明に詳しい外国人のスーパー技術者を多数採用すること決定。
これが、さきほどの機密情報をボンバルディアから盗んだ、と指摘されている人物たちです。
報道によると、MRJを開発する三菱航空機の2018年4月時点の従業員数は1800人、うち300人がこういった高度なお雇い外国人だそうです。
また、開発責任者にはボンバルディアのCシリーズの開発担当アレックス・ベラミー氏を起用。
また、管理職の多くも外国人が占めている状態で、ほとんどボンバルディアのユニットが移動してきたようなもの・・・という指摘もありました。
ある意味、中国企業が半導体分野などで日本の技術者を高額で引き抜いているのと同じことを、日本はカナダに対してしてきたわけです。
MRJを開発する三菱航空機に対する2200億円の財政支援
現在、MRJと競合する機種としてはほとんどなく、ボンバルディアのCシリーズとエンブラエル(実質的にボーイング子会社)のE2シリーズなどの下位製品が該当するかな?というところ。
とりあえず、エンブラエルのE190-E2は先日、羽田にも来訪しましたが、もうすでに実用化間近。試験飛行をばんばん行っている最中です。
このE2シリーズの下位製品がMRJと同じ70~90席クラス。
だから、エアバスとエンブラエルは現在ある機体を席数減らせばいいだけのこと。
つまるところ、コストがMRJとは段違いに低くなる可能性がある。
なお、当初コンセプトの段階では世界の最先端を走っていた三菱航空機MRJですが、2018年現在では、世界のリージョナルジェットのマーケットで周回遅れ。
もはや挽回不可能な状況にまで追い込まれています。
しかし、かといって諦めたら多額の損失を確定しなければならなくなる。
諦めきれずに投資を続ける・・・いちばん悪いパターンに入ってきているようにみえます。
そうこうしているうちに、ロシアのスホーイや中国のCOMACなども参入してきます。
はっきり言って、この業界はボーイング(エンブラエル)とエアバス(ボンバルディア)二強+多数の新参でなりたっています。
三菱航空機は、ぶっちゃけ詰んでいると思います。
三菱重工はそれでも2200億円をつぎ込みます。
こういう経営判断をする企業は株主を財布としか見ていないと思われます。
以上です。