統計:中国の2018年8月の鉱工業生産指数
中国の2018年8月の鉱工業生産指数の伸びは前月に比べて若干回復し6.1%上昇
ただし、好調なように見える2018年8月の中国の鉱工業生産指数だが、その中身をみると印象は変わる。
まず、鉱工業生産全体でみて、1-8月の前年比上昇率は6.5%である一方、8月単独は6.1%上昇に留まる。
このうち、鉱業、採石業など上流部門が1.7→2.0と回復しているが、製造業は6.8%増→6.1%増に低下、電気ガスなども10.2%増→9.9%増に低下している。
鉱工業生産において回復基調にあるところは
化学原料及び化学製品の 3.8%増→4.8%増
非金属鉱物製品 3.2%増→5.2%増
鉄鋼・プレス製造5.3%増→5.9%増
非鉄金属製造加工 5.7%増→9.5%増
金属製品製造 3.7%増→4.4%増
コンピュータ通信機器製造 13.3%増→17.1%増
などであり、これ以外はほぼすべて低下している。
逆に鉱工業生産において悪化が著しいものは
自動車製造 8.7%増→1.9%増
鉄道、造船、航空宇宙、その他輸送 2.4%増→0.5%減
とくに鉱工業生産において、この自動車の低下はネガティブすぎると思う。
自動車については下の方で各セグメント別に個別の数字を確認できるが、これをみると
自動車全体 2.2%増→-4.4%減
うち乗用車 5.1%増→0.3%増
SUV 0.8%増→8.9%減
新エネ車 56.0%増→12.5%増
となっている。
ようするに、コストの高いSUVなど大型車が売れていない。
また、ここにきて新エネ車(EVなど)の増加ペースが落ちてきているのは気がかりである。
なお、スマートフォンの生産は2.4増→8.3増
と基調が回復している。
一時的な要因かもしれないので注意は必要だが、底割れはしていない模様。
なお、電力は7.7%→7.3%に伸び低下
うち、風力や太陽光が伸びを落としているのは、風力は天候要因、太陽光は設備投資のペースが減少していることが影響しているものと思われる。
とりあえず、輸出は7.0%増→12.5%増と好調に推移しており、底割れはしていないもよう。
ただ、これはたぶんに人民元安のおかげもあると思う。
今後も中国は鉱工業生産の底割れを防ぐため、人民元安を有効に使い続ける可能性が高いと、個人的にはみている。
また、何度も書くようだが、自動車セクターがかなり怪しくなってきているように感じる。
鉱工業生産という観点からみると、自動車生産は鋼板、鋼材だけでなく化成品やガラスなど裾野の広い産業。
また、近年では電子部品の搭載も増えており、中国の自動車生産の減少傾向が、集積回路や配線基板、受動部品など多方面の需要に影響を与えることが懸念される。
当然、自動車生産に必要な溶接ロボットや塗装ロボット、プレス機器などへの設備投資も減ることになるわけで、そういった分野への影響も大きい。
米中貿易戦争の影響というよりも、中国国内の債務問題が需要に影響している可能性が高く、改善にはかなりの時間がかかると思われる。
これが一番の懸案事項ではないかと思う。
以上。