スプラトリー諸島(南沙諸島)のガベン礁/南薫礁とジョンソン南礁/赤瓜礁の近辺で行われていた「航行の自由作戦」、米海軍イージス駆逐艦ディケーターが中国軍艦艇から妨害を受け中断へ
南シナ海のスプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)のガベン礁(中国名:南薫礁)とジョンソン南礁(中国名:赤瓜礁)の近海で行われていた米海軍による「航行の自由作戦」ですが、イージス駆逐艦ディケーターが中国側艦艇から妨害を受けたためいったん中断したもようです。
9月30日から米国側が南シナ海スプラトリー諸島周辺で展開している「航行の自由作戦」ですが、これに参加していたアーレイ・バーク級ミサイル駆逐艦ディケーター(USS Decatur / DDG-73)に対し、中国側艦艇が前方約45ヤード(41メートル)の距離にまで近づくなどの妨害行為をとったため、いったん中断したとのことです。
通商摩擦問題を抱える米中両国ですが、ここにきて軍事面でも緊張が高まっています。
もしもぶつかっていたら?
と考えると、いろいろと恐ろしいものがあります。
なお、この直前にもアメリカは中国側を刺激するような行動をとっており、たとえば23日と25日には核兵器搭載が可能な爆撃機B52を南シナ海で飛行させています。
#B52 Stratofortress bomber aircraft conducted operations in the South China Sea and Indian Ocean on Sept. 23 and Sept. 25, 2018 (HST) @PacificCommand @usairforce @AndersenAFBGuam https://t.co/xeAcPf1cZB pic.twitter.com/kMMO2GFgzD
— PACAF (@PACAF) September 27, 2018
これに対して中国側は当然、猛抗議していました。
今回のミサイル駆逐艦ディケーター(USS Decatur / DDG-73)に対する牽制は、そういった一連の流れの中で起きた事件です。
日本でも広く伝えられているとおり、中国は南シナ海の海洋権益の確保をめざし、パラセル諸島(西沙諸島)、スプラトリー諸島(中国名:南沙諸島)などに進出。
環礁に人工島をつくり軍用機が発着できる滑走路を整備するなど、実効支配を拡大させようとしています。
中国側の主張としては、「九段線(Nine-dotted Line)で囲まれた地域は我々の領土」というものです。
九段線(Nine-dotted Line)とは?
九段線(Nine-dotted Line)というのは、中国が歴史的に領有してきたと主張している領海の範囲をしめしたもので、その形から別名U字線、牛の舌とも呼ばれるものです。
こちらの地図上で緑色をした9本の破線部分がありますが、これが九段線です。
図はWikipediaより
この緑の破線(九段線)の内側の島は全部中国のものであり、それらから12海里が中国領海、さらにそこから12海里が接続水域、基線から200海里を中国の排他的経済水域(EEZ)であると、中国は主張しています。
なおこの海域は他にもベトナム、ブルネイ、フィリピン、マレーシア、台湾などが領有を主張しており、現在でも領海が確定していない、というのが国際関係上の位置づけとなっています。
2016年7月12日にハーグの常設仲裁裁判所は、「中国側の主張には根拠がない」と判断していますが(南シナ海判決 ※1)、その後も中国側は実効支配を続けているのが実情です。
※1 南シナ海判決・・・ようするに、この地域の岩礁はすべて低潮高地や岩など「人が住めるような島じゃない」のだから、「12海里の領海のみを有するだけで、排他的経済水域は認められない。」「そもそもそれらが中国のものであるわけでもない。」というのが判決内容です。
こうした中国側の実効支配ともいえる方針に対し、米国は中国の海洋覇権を阻むために周辺各国のみならず、西側諸国などもあわせて周辺海域での活動を活発化させています。
米国は、この南シナ海はあくまでも国際水域であり、誰のものでもない、との立場です。
先日、英国の揚陸艦アルビオン(HMS Albion)が晴海ふ頭にも来航しましたが、その任務こそが南シナ海における北朝鮮の瀬取監視とパラセル諸島沖を警戒するためでした。
英海軍の艦艇、南シナ海の西沙諸島周辺を航行=関係筋 | ロイター
アメリカは英国や日本も巻き込んで、南シナ海での中国の活動を牽制しようとしています。
今回は、ミサイル駆逐艦ディケーター(USS Decatur / DDG-73)側が急速転回することにより最悪の事態は回避できました。
しかし、もしこれが実際の衝突になったらどうなったでしょう?
間違いなくアメリカは許すはずもなく、様々な製品の禁輸措置を繰り出すはずです。
半導体製造装置、産業・工作機械、それらの部品などの中国への禁輸を日本や欧州にも迫る可能性がありました。
そういった非常に危険な、一触即発の状態が起きていたということです。
もしかしたら、いつか近い将来にそういったことが起きるかもしれません。
そのとききっと、多くの人は想定外と騒ぐでしょう。
でも、それらはまったくの想定外ではないということは、頭の隅に入れておいた方が良いと思います。