円安による物価への波及経路はひとつじゃない
(この記事は2022年12月24日に書いています)
円安による物価への影響は輸入物価だけではない
日本国内の消費者物価指数が上昇しています。
その背景として、今夏から秋にかけての輸入物価上昇が最大の要因であることは、論を待たないはずです。
そして、輸入物価上昇の最大の要因が円安であることも、論を待たないはずです。
(グラフのせるのはダルいので、各人で作って眺めてください。)
ただ、円安による輸入物価の上昇も、足元では落ち着いてきています。
「とりあえず、この傾向が続くなら国内物価上昇率も早晩ピークを打つんじゃないか」
・・・みたいなことを仰る方もいらっしゃいます。
個人的には、
「企業物価指数の伸びに比べて消費者物価指数は追いついていないし、しばらく価格転嫁をする動きが継続する」
・・・と予想していますが、とりあえず今回はそうした話をしたいのではないので割愛します。
今回話したいのは、
「円安による労働市場を通じた物価上昇率への影響について」
です。
皆さんの話を聞いていると、円安が影響するのは輸入物価だけのように聞こえてきます。
しかし実際はそうじゃありません。
円安が影響するのは輸入物価だけではありません。
端的にいえば、国内の労働需給に影響します。
円安でインバウンドが復活すれば観光業で雇用が増えますし
円安で国内製造への回帰が起きれば製造業で雇用が増えます。
(交易条件次第ではありますが)
また、円安になれば出稼ぎ労働者も減りますから、農水産品の収穫、加工にも影響が出ます。
これらは即座に物価に反映されていく類のものではありません。
ただし、時間差をおいて反映されていく可能性が高いものです。
足元の有効求人倍率は好調です。
しかも今後は人口動態から労働力不足が予想されています。
最低賃金も引き上げ方針です。
人的資本の開示義務の影響も、大企業においては無視できない賃金上昇圧力でしょう。
円安が労働市場を刺激するトリガーとなって、物価全体に影響する可能性については、無視してはいけないはずです。
とりあえず、この影響は次の景気拡大期に大きな問題となると思います。
その頃には今と異なり、労働市場への視線がもっと増えると思います。
そして、もしそうなれば
日銀は政策を大幅に変更せざるを得なくなるはずです。
だって、賃金上昇率の低さを理由にできないのですから。
そしてそれは不動産市場など、これまで10年超に及ぶ低金利環境に慣れ切ったセクターへの大きな重しになるのではないか。
いつまでも、あると思うな低金利
いつまでも、あると思うな低賃金
以上。