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三菱地所はなぜ「大手町ビルヂング」をリノベするのか~日本の不動産に将来性はあるのか?~

不動産のプロ三菱地所が「大手町ビルヂング」を建て替えせずに大規模リノベ? オフィス需要は先行きが暗そう・・・

 

 

不動産のプロ中のプロである三菱地所が、一等地にたつ自社所有の老朽化した物件を建て替えではなく、リノベするそうです。

100 年ビルへの挑戦 築 60 年の「大手町ビル」の大規模リノベーションに着手(三菱地所)

 

大手町ビルジング(東京都千代田区大手町1-6-1)は、地下鉄大手町駅で5路線に繋がり、東京駅へも徒歩圏の一等地にある建物です。紀伊国屋書店やプリファードネットワークスなどが入居しています。地下二階は大手町らしくない飲食エリアでおじさん方に人気となっております。

丸の内、大手町は賃料水準も非常に高い地域です。

日本でオフィス賃料が一番高い地域です。

一般的な感覚からしたら、大きな建物をドカンと建てようと思うはずです。

実際、隣の大手町タワーは地上38階、地下6階の大規模ビルですし、大手町ビルも建てかえようと思えば(容積率をフルに使って)建て替えられます。

もし現状の空室率と賃料が確保されるなら、ぜったいに建て替えた方が得です。

建設コストはもちろん高いですが、それをペイできるだけの家賃相場が丸の内、大手町エリアの強みです。

この写真の真ん中の低くて長いビルが大手町ビルです。これを容積率フルに使わないのはモッタイナイ!

・・・ふつうはそう考えると思います。

建設コストを負担してでも建て替えた方が得なはず、そう素人は考えるでしょう。

 

 

・・・ですが、三菱地所はそうしようとしなかった。

ここに、不動産のプロである三菱地所による市況の読みが表れているように思います。

 

つまり三菱地所は、東京のオフィス市場の需給に対して悲観的なのではないか?

 

そう、おいらは思います。

 

思えば、オフィス賃料はリーマンショック以前に回復していません。

空室率はだいぶ改善しましたが、賃料は戻ってこないのです。

かつて日本市場にやってきていた外資系金融機関などの羽振りのいい連中が消えました。東京の金融ハブ化なんて夢のまた夢です。

オフィスは埋まってますが、高い賃料を払って借りる主体がなかなか現れません。

そして、都心5区のネットアブソープションは徐々に低下してきています。

オフィスの市況感は微妙な空気になりつつあります。

三井不動産決算補足資料P43参照

 

 

そして、今後東京圏の人口はどんどん減少していきます。

たとえば、東日本旅客鉄道(JR東日本)の経営説明会資料3-2によれば、首都圏人口の減少を要因として輸送人キロが2020年をピークに減少に転じ、2030年で4%減少、2040年には9%減少します。

また、これに働き方の変化、ネット社会の進展、自動運転技術の実用化などが重なれば、プラスアルファで輸送人キロの減少が加速すると結論付けています。

 

そんな環境でありながら、三井不動産は八重洲から日本橋にかけていくつもの巨大オフィスを建てています。森ビルも虎ノ門方面を中心に開発を加速、JR東日本も田町品川のあたりで大規模な開発を行っています。それらが済めば、そのあとには品川プリンスの複合開発が行われることでしょう。

 

つまり、なんだかんだ言ってオフィスは今後も大量供給されるわけです。

とくに品川はリニアが発着しますから、その点で東京駅よりも優位性が高い・・・もちろん、羽田だって京急ですぐです。丸の内エリアのオフィス需要を取られる可能性を三菱地所は本気で心配し始めている可能性があります。

 

そういう状況で、資本コストに見合った投資であるかどうか、という尺度で考えると、大手町ビルヂングの建て替えはできなかったのだと思います。


 

不動産のプロである三菱地所の読みが当たるか外れるかはわかりませんが、とりあえず、今回の一件はそういった視点を投げかけたものだったと思います。不動産業界の人はどうみているのか、興味がありますが・・・twitterではあまり話題になっていないようで、ちょっと肩透かしです。

たぶんですけど、今後は三菱地所も三井不動産も、国内不動産よりも海外不動産比率をガシガシ増やそうとしてくると思います。その走りが、三井不動産のハドソンヤード開発であり、三菱地所の大手町ビルヂングのリノベだったと、あとから言われるようになるんじゃないかと・・・個人的には想像しています。

 


 

ついでなんで、三菱地所の株価チャートをみてみましょう。東証一部上場、ティッカーは8802です。

日足株価チャート

 

 

週足株価チャート

 

三菱地所の株価は、内需株への資金シフトにも拘わらず、ずっと低迷しています。チャートのトップを繋ぐと綺麗な右肩下がりのチャートになっていることがわかります。

なおバリュエーション指標面でみると、三菱地所は2020年通期のアナリストコンセンサスベースでPER20.8倍、EV/EBITDAが16.0倍。

 

三菱地所のバリュエーションはかなり高いですね。

というか、俺が相場を張る以前からバリュエーションは高かったです。

 

かつて2000年台くらいまではPER40倍くらいが妥当、とか言ってたアナリストが多かったですが(希少な丸ノ内の大家だから、という訳のわからない理由)、最近は三菱地所の人気はだいぶ落ちました。代わりに、かつては二番手だった三井不動産の方が成長性を囃して人気株になってます。新卒さんの就職活動の現場ではまだまだ三菱地所の方が人気なようですが、それもいずれ変わるんでしょうかね?

業界内の人気株ってのは変化するものですね。(海運だと、一時期、日本郵船→商船三井に人気が移ったりしました。京セラ→村田製作所もそうですね。)

とりあえず、まぁそんな感じで今回のコラムを〆ます。

 

なお、このコラムは2018年7月6日に書きました。バリュエーション評価などに利用している数字は、コラムを書いている時点で得られる情報をもとにしています。時間が経てば当然変化しますので、投資などの際には最新の数字を得るようにしてくださいますようお願いいたします。また、上記はあくまでも中卒くん個人の見解を書いたもので、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資に当たっては自己責任でお願いいたします。以上。