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李書福率いる吉利汽車(ジーリー/Geely)の業績をみてみよう

李書福率いる浙江吉利控股集団(Zheijiang Geely Group Holding)と吉利汽車(ジーリー・オートモービル/Geely Automobile Holdings)の業績を見てみよう

 

今回は以前質問箱で依頼のあった

中国の民営自動車最大手、浙江吉利控股集団(Zheijiang Geely Group Holding)傘下の吉利汽車(ジーリー・オートモービル・ホールディングス/Geely Automobile Holdings)の業績についてみていきます。

 

なお、吉利汽車は中国企業にありがちなことですが、資本関係がぐちゃぐちゃしていてわかりにくいです。

ざっくりまとめると、

浙江吉利控股集団(ジーリー・グループ・ホールディングス)の傘下に吉利汽車(ジーリー・オートモービル・ホールディングス/Geely Automobile Holdings)があり、さらには李書福自身もダイムラー株の買収などを行っている

 

・・・という構図になっています。

今回、企業業績をみていくのはこのうち吉利汽車(ジーリー・オート)の部分ですが、親会社である浙江吉利控股集団(ジーリー・グループ)や李書福董事長の動向などについても書いていきたいと思います。

 

とりあえず、まずは吉利汽車、および浙江吉利控股集団の紹介から始めます。


 

吉利汽車、および浙江吉利控股集団とは?

 

吉利汽車、および浙江吉利控股集団とは、中国の浙江省杭州に本拠地を置く、民営自動車メーカーの最大手です。

巨大な中国の自動車市場には、多くの外資系、国有系、民営の自動車メーカーが参入しているのですが、そのうち吉利汽車は民営系トップにあたります。

今年上半期1-6月の中国国内のシェアで、吉利汽車(ジーリーオート)はドイツのフォルクスワーゲン(VW)、アメリカのゼネラルモーターズ(GM)に次いで第三位に浮上。
吉利汽車(ジーリーオート)のシェアは6.4%となり、17年の5%から上昇。日産自動車、ホンダ、トヨタも抜き去りました。

Volvo Owner’s China Unit Beats Nissan as Sales to Top Target …

 

 

このように、今では中国を代表する民営自動車メーカーとなった吉利汽車(ジーリー、Geely Automobile)ですが、その道のりは平たんではありませんでした。

吉利汽車の親会社、浙江吉利控股集団(ジーリーホールディンググループ、Zheijiang Geely Group Holding Co. Ltd.)の基となった吉利は、もともとは李書福が廃品回収業で稼いだカネで1986年に立ち上げた冷蔵庫の部品製造会社だったと言われています。

その後、部品製造技術を蓄積した吉利は1989年には冷蔵庫本体の製造に乗り出し、生産管理技術を蓄積。

1992年には吉利は二輪車事業に参入。

1997年には二輪事業をしていた吉利が民営企業初の小型車生産に参入します。これが吉利汽車です。

この当時は中国の自動車市場は、外資と国有大手自動車メーカーとの合弁企業での生産がほとんどで、民営自動車メーカーというと安かろう悪かろうの代名詞でした。

江沢民政権時代は、上海汽車、広州汽車、第一汽車など大手国有企業に技術を蓄積させるために外資との提携を活発化させました。その一方で、民営企業にはあまり陽があたらない時代だったように思います。

ちょうどこの頃、浙江省党委書記に習近平が就任します(2002年11月)。

吉利汽車はさきほども書きましたとおり、浙江省杭州を本拠地とする企業です。

習近平は2003年に吉利汽車を訪問します。

吉利汽車の李書福董事長とも会い、今後は同社のような民営企業が伸びていくべき、のような発言をしたと伝わっています。

習近平は2008年3月15日、第11回全国人民代表大会第1回会議で国家副主席に選出されます。

このころから、吉利汽車(Geely)は一部で噂されはじめます。習近平関連銘柄だ、政治銘柄だ・・・と。

吉利汽車(Geely)の株価は、ぶっちゃけた話、2000年代を通じてほぼ横ばいを続けてきました。

リーマンショックを背景とした世界恐慌時代には、安値0.150まで売られていたボロ株です。

当時中国株をやっていた人なら、ウォーレン・バフェットが出資を決めたBYDか、BMWと合弁企業を立ち上げていたブリリアンスチャイナくらいしか自動車メーカーとして魅力を感じていなかった人がほとんどじゃないかと思います。

そのボロボロだった吉利汽車が、習近平の権力拡大とともに成長軌道をたどります。

 

習近平が国家副主席についてすぐ、2008年半ばころから吉利汽車(Geely)の親会社浙江吉利控股集団はスウェーデンの自動車メーカーボルボの買収可能性について打診しはじめていたと伝えられています。

この浙江吉利控股集団によるボルボの買収は、2010年に乗用車部門ボルボ・カーズのみ行われることで決定します。

同年、浙江吉利控股集団はロンドンタクシーの生産メーカーであるロンドンタクシーインターナショナル(LTI)をマンガニーズ・ブロンズから買収しました。

これらの買収資金を浙江吉利控股集団どうやって捻出したのか?

当時の浙江吉利控股集団の信用力だったらまず不可能だったはずですが、きっとなんらかの政治的な力が働いたはずだと、多くの人がみています。

 

 

習近平はその後、2012年11月15日の第18回1中全会で政治局常務委員、中央委員会総書記、党中央軍事委員会主席に選出。2013年3月14日の第12期全国人民代表大会(全人代)第1回会議において国家主席・国家中央軍事委員会主席に選出。派閥争いに勝利して確固とした地位を築き上げていきます。

吉利汽車(Geely)の株価をこの習近平の政治力と比較してみると面白いと思います。

 

とりあえず、その後も政治的なバックアップを背景に吉利汽車は拡大をつづけます。

2017年5月には吉利汽車の親会社である浙江吉利控股集団(Zheijiang Geely Group)はマレーシアの国産自動車メーカーであるプロトン株の49.9%を獲得。同時に、プロトンが保有するロータス・カーズの株式も51%を取得。

2017年12月には浙江吉利控股集団がボルボグループ(ABボルボ)の筆頭株主となることでスウェーデンの投資会社と合意。

2018年2月には、メルセデス・ベンツの親会社ダイムラーの株式9.69%を浙江吉利控股集団のオーナーである李書福が個人的に取得して筆頭株主になったことが発表されました。

 

そして2018年9月、吉利汽車(Geely)がトヨタ自動車とハイブリッド技術(HV)で提携か?

 

と伝えられています。

Toyota, Geely in talks about cooperation in hybrid vehicle tech …

 

トヨタ自動車と吉利汽車(Geely)とは、車両フロント部がトヨタ自動車と似ているとして、トヨタ自動車と裁判になったこともあります。

過去にはそういった知財分野での訴訟がありましたが、さすがに中国自動車市場における吉利汽車の立ち位置が無視できなくなってきており、中国市場での拡大を目指すトヨタ自動車としても提携を強化しようという動きになっているようです。

 

なお、先にも書きましたが、吉利汽車(Geely Automobile Holdings)と浙江吉利控股集団(Zheijiang Geely Group)の関係は非常にわかりにくいです。

親会社の浙江吉利控股集団(Zheijiang Geely Group)がボルボやプロトン、その他生産設備などを所有し、子会社の吉利汽車(Geely Automobile Holdings)に生産設備を貸したり、部品供給を行ったりしているようです。

また、吉利汽車(Geely Automobile)は親会社の浙江吉利控股集団(Zheijiang Geely Group)のボルボカーズ部門とともにLynk & Coを立ち上げて販売していますが、これも資金の流れが読みにくいです。

少なくともLynk & Coがいくら売れても、合弁会社で運営しているわけですから吉利汽車(Geely Automobile)の売上には載ってきません。

しかし吉利汽車の最終利益までのどこかには利益として載ってきています。

このことが、吉利汽車の売上高利益率の向上に繋がっています。

また、上記の通り吉利汽車は親会社の浙江吉利控股集団との設備、パテントのキャッチボールが行われていますから、資産規模も小さくコンパクトに抑えられています。

このことにより、吉利汽車のROEはやたら高くみせかけられている可能性があります。

ちなみに、実質的に李会長の持ち株会社である浙江吉利控股集団は吉利汽車の持ち株比率を徐々に引き上げており、5月にはその比率は46.18%から46.39%に上昇しました。

もはや過半数間際といったところです。

この状態で、まともなガバナンスを子会社側企業である吉利汽車に求める方が酷だと思います。

 


なお、上記の通り、吉利汽車の業績は親会社の方針次第で良くも悪くも見せかけられる状態になっています。

ぶっちゃけ、それで株価操縦したりすることも可能な状態です。

 

自分は、吉利汽車の業績を今までもいろいろな側面から眺めてみようと思ってきましたが、何度やってもやっぱりわからないのです。

親会社との間で、どれくらいの規模のパテントや部品の取引が行われているのかよくわからない。

設備の貸し借りがどうなっているかもわからない。

この状態で出てくる吉利汽車側の決算数字は、ぜんぶ作られた数字だと疑った方がいい、と個人的には思います。

 

ですから、今回は吉利汽車の業績分析はやめたいと思います。

やっても無駄なんです。どうにでもなりますし。

 

 

それと、先ほども書きましたが、吉利汽車がここまで大きくなってきたのは政治との繋がりが大きいと思っています。

ですから、習近平国家主席の力がどうなるかで大きく左右されると思います。

江沢民がほぼほぼ失脚後のペトロチャイナがどうなったかをみれば、それはわかると思います。

 

 

あまりにも親会社と政治の影響が大きすぎる吉利汽車、自分はまともな評価ができません。

今後海外展開していくにつれて、大幅にコストがかかってくることは予想されます。そこをどう乗り越えていくつもりなのかも見えません。

とりあえず業績面について書きますと、「わからない」という結論です。

 


最後に、吉利汽車の株価についてもみていきましょう。

 

 

 

典型的な下落相場だと思います。

まだ完全な悲観はやってきていないと思います。

本当の悲観は、もう戻れない過去を意識した時にはじまると思います。

ざっくり見た感じだと8~10あたりで底入れするかな?と感じますが、根拠はあくまでもチャートからの印象だけです。

さきほども書きました通り、親会社が過半近く持っているような銘柄をまともに業績分析することは不可能なので。

 

とりあえず、底入れを確認数にはまだ早いと思っています。

以上です。

 

なお、上記はあくまでも中卒くん個人の見解であり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資にあたっては自己責任でお願いいたします。