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中欧班列は中国と欧州を結ぶ国際定期貨物鉄道網~一帯一路の中心政策~

中欧班列は一帯一路政策(the Belt and Road)の核心的施策~重慶など中国内陸部の振興へ~

 

今回は、中国と欧州を定期便で結ぶ国際貨物鉄道、中欧班列についてみていきます。

 

中欧班列は、2011年に中国の重慶とドイツのノルトライン=ヴェストファーレン州デュースブルク(デュイスブルク)を結んだ渝新欧が始まりとされています。

 

2018年8月26日には、中欧班列の運行本数がとうとう累計で1万本を突破。

今回はこのユーラシア大陸を舞台にした新たな物流ルート、一帯一路とも深く関係している中欧班列についてみていきます。

 


中欧班列、これまでの経緯

これまでも中国からユーラシア大陸に向かう、中欧班列と似たようなコンセプトの鉄道は存在しており、たとえば以下のようなものがありました。

・東清鉄道(別名:中東鉄道、東支鉄道、北満鉄路、北満鉄道)

ロシア帝国によって敷設された鉄道。

東清鉄道は満洲里からハルビンを経て綏芬河へ向かう本線、およびハルビンから大連を経て旅順に向かう支線からなる鉄道で構成されており、1904年にシベリア鉄道と接続。

 

・中露国際列車

中露国際列車は北京からエレンホト、モンゴルのウランバートルを経由してモスクワに至る鉄道。もしくは北京から満州里経由でモスクワヘ至る鉄道。

 

チャイナ・ランドブリッジ(China Land Bridge / CLB )

チャイナ・ランドブリッジ(China Land Bridge /CLB)は連雲港から阿拉山口を経由してカザフスタンのドルジバ(ドスティック)に至る鉄道路線

1990年開通し、日本企業の日新が日本から中央アジアへの物流ルートとして活用してきました。

 


中欧班列の目的

 

中国が中欧班列に注力するのは、(個人的な見方になりますが)、重慶、成都など内陸の大都市を成長させるためだと思っています。

中国は一人当たりGDPをみればわかるのですが、沿海部の上海や深圳、広州などの都市のほうが内陸の都市よりも活気があります。

これは、ここ数十年の中国が加工貿易の拠点として発展してきたからということが大きい。

鉄鉱石を輸入して鉄鋼を生産したり、部品を海外から輸入して組み立てて輸出したり、そういった加工貿易で成長してきたのが、ここ数十年、とりわけ鄧小平時代以降の中国でした。

中国は歴史的にみると海洋国家というより大陸型の国であり、大都市の多くが内陸部にありました。

三国志などを好きな方ならわかると思いますが、当時の首都は長安や洛陽でした。蜀の国は成都を都にしましたし、とりあえず、内陸に人口を多く抱えているのが中国です。

今でも重慶は3000万人、市域だけでも800万人程度が住んでいるとのこと。

これらの人々を不満なく過ごさせるためにも、中国は内陸部と沿岸部の経済格差を是正せねばならず、そのためには内陸部の振興をする必要があるわけです。

 

 

しかし、内陸部は海外との貿易にはやはり不利です。

主要港である上海や広州の港へ運ぶために長距離のドレージ輸送をするのは高コストです。

そのドレージ輸送や長江を使ったフィーダー輸送などのコストを政府が補助するにしても限度がある…

「それならば、いっそ中央アジアの国を振興させつつ、欧州の需要を手に入れるために鉄道貨物輸送をやろう。そのための補助金をつけるほうが、国内輸送の補助金出すよりよっぽど効果的じゃないか?」

そんな感じで始まったのが中欧班列なんじゃないか?

と個人的には思っています。上記はあくまでも私見です。

 


 

とりあえず中欧班列ですが、2000年代から試みられてきたものの普及が進まなかった「海鉄連運※1」で作られたインフラなども接続、チャイナ・ランドブリッジ(China Land Bridge / CLB )などの要素も混ぜ込んで、補助金たっぷりついて盛り上げられてきています。

 

海鉄連運とは・・・海鉄連運とは、貨物輸送において海運と鉄道を上手く連携しようという取り組み。英語で「Sea & Rail」。陸上では「無水港」といわれる陸のコンテナターミナルによる貨物鉄道との連携が図られ、港湾まで運ばれたのちに海外へ・・・みたいなコンセプトで作られたシステム・・・だったのだけど、いろいろと不便な部分があってなかなか普及しなかったシステムです。

 

中欧班列っていうのは、ぶっちゃけた話、チャイナ・ランドブリッジ(China Land Bridge / CLB )や海鉄連運など既存のシステムに、追加でちょろちょろ継ぎ足した、一帯一路向けのキーワードだと思います。

 

先ほども書きましたが、中欧班列みたいなものは以前からありました。

それらと中欧班列のどこがどう違うのか?といわれると自分は上手く答えられませんし、たぶんそんなに違いません。

むしろ、これまでのシステムの集大成プラスアルファが中欧班列なのだ、という理解の方がしっくりくると思います。(自分は学者でも何でもないので間違ってるかもしれません。詳しい方いらっしゃいましたら指摘いただければ幸いです。)

 

 

 

中欧班列は、沿海部から欧州までのリードタイム(LT)が海運の1/3だと言われています。コストは空運の1/4だとのことです。(注:ソースは以前見たニュースなのでうろ覚えです。間違えているかも。)

中欧班列のコストにかんしては、中国政府による補助金がたっぷりついているから安くできている、と指摘する声は多いです。

具体的にどれだけの補助金がついているのかは自分はわかりませんが、かなりの額だといいます。

 

ただここで考えるべきは、リードタイムだと思います。

沿海部から欧州までのリードタイムが海運の1/3であれば、中国内陸部から沿海部までのドレージなり長江フィーダーによるリードタイムを考慮すれば十分に中欧班列に意味が出てくるはずです。

中国共産党政府は沿海部と内陸部の格差を是正したいのであり、国民の一体感を作りたいのであり、それをどうやって実現するかと考えた結果の一帯一路であり中欧班列なのだと思います。

そうやってみていくと、次に中国政府がしようとしていることもみえてくるはずです。

中国の内陸都市が本当に発展するためには、昔のシルクロードの時代と同じ経済構造を現代に実現する必要があります。

海の大量輸送に対抗できる、高度なキャラバンシステムを作る必要があります。

そのための中欧班列なのだと考えると、いろいろしっくりくると思うのです。

中欧班列だけではなく、パイプライン、超電導直流電力網などもできるかもしれません。

それらが本当に実現したら非常に面白いことになると思います。

6世紀近く昔に失われた、ユーラシア大陸の時代がやってくるかもしれないわけです。

そういう意味で、自分は中欧班列のゆくえを非常に楽しみに見ています。(ただし、もしそれらのシステムが完成した場合、パワーバランスが崩れて危険性もあると思いますが)

以上です。