前回の記事では、JD.com(京東商城、ジンドン)の2017Q4決算を取り上げました。
さて、前回の記事でも触れましたが、物流事業は、新規で構築するにはあまりにも効率が悪いです。
UPSやFedexみたいなところに任せておいた方が良いと、個人的には思っています。
それはAmazon.comとて同じことです。
ご存知の方も多いかもしれませんが、Amazon.comの小売り事業は赤字です。
AWS(Amazon Web Service)というクラウドサービスで儲けた利益を小売り事業の赤字補填に使っている状態です。
一応北米事業は黒字のようですが、これまでに注ぎ込んだ投資額に見合った利益とは到底思えません。投下資本利益率なんぼなんでしょうか。
おいらは中卒の低能なので、なぜAmazonが高い評価を受けているのかよくわかりません。
GoogleやMicrosoftが本気でクラウド事業を拡大させたら、AWSの利益率が下がったら、Amazonの稼ぎは大きく損なわれるのではないかと思うのですが・・・
とりあえず、JD.COMはAmazon.com型のビジネスです。自社で在庫を持ち、倉庫を持ち、配送にも乗り出そうとしています。
北米よりも一人当たりGDPが小さい中国でAmazonのような自社在庫保有ビジネスをするのですから、Amazonよりも過酷な商売になるだろうと俺は予想しています。
これに対して、Alibabaは楽天やYahooショッピングのような場所貸しサービスです。出店企業からサービスの対価を受け取るサービスなのでローリスクです。
個人的には、JD.COMよりも身軽なアリババの方がスマートな経営をやっているように思っています・・・
が、最近はどうも風向きが怪しくなってきました。
JD.COMの実質的親会社である騰訊(テンセント、tencent ティッカー0700.HK) が、アリババ(阿里巴巴、Alibaba ティッカーBABA) と戦略的提携を結んでいたはずの(?)海澜之家(ハイランハウス? Hailan House)というメンズファッション小売りを自陣営に招き入れたのです。
https://www.cnbeta.com/articles/tech/695869.htm (20180204) (中国語サイトです)
この海澜之家ですが、以下のような若者向けの服を売っているアパレルショップのようで(正直おいらはどこが良いのかさっぱりわかりませんが)
https://www.youtube.com/watch?v=qAi7V-tMZ5I
アリババの年間販売がピークになる11月11日の独身の日に、メンズファッション部門でトップセールスを達成している企業なのです。そう・・・ユニクロよりも上です。
ここをテンセントが掻っ攫っていってしまいました。
そりゃ、楽天とLINEのどちらと組むか?と言われたら、ふつーはLINEと組みたがるでしょう。
ましてやテンセントは、中国におけるLINEであるのみならず、Youtubeでもあり、任天堂でもあり、SMEでもあり、角川書店でもあり、Amazonでもあり・・・みたいな、ようするにバケモノです。組まない手はありません。
今回の海澜之家とテンセントの提携は
アリババに対して宣戦布告を突き付けたようなものです。
まちがいなく、ポニー・マーこと馬化騰率いるテンセントは、ジャック・マーこと馬 雲率いるアリババを追い落としにきています。
アリババには油断、隙があります。
いくら注ぎ込んでもぜんぜんヒットしないエンターテイメントビジネスに多額の費用を費やしています。(この清々しいほどの目立ちたがり屋っぷりは嫌いじゃありませんがw)
インドネシアやインドなど、他国への投資を優先させるあまり、国内への投資が疎かになってきています。
自社販売サイト(タオバオ)で販売上位にある企業を完全には囲い込みきれていません。
そこをテンセントは突いてきています。
ここ最近のテンセント、JD.comにおける新小売(ニューリテール)関連の話題を振り返ってみます。
2017年12月、中産階層向けスーパー永輝超市(Yonghui Superstores 上海市場601933)にテンセント傘下が出資しました。このスーパーの様子は、以下のブログが詳しいです。
http://www.shoninsha.co.jp/blog/2016/06/16/54815/
騰訊の傘下企業、永輝超市の株式5%取得へ(20171213)
同じく2017年12月、テンセントとJD.comは中国オンライン小売3位のVIPSHOP(唯品会、VIPS)も囲い込みました。イベント型オンライン販売のVente privee(wiki)を真似たものらしく、主にブランドアウトレットに強いらしいです。
China’s Tencent, JD.com invest $863 million in online retailer Vipshop(20171218)
さらに2018年2月、テンセントと、テンセントが出資している永輝超市が共同で、中国市場で業績不振に悩んでいるカルフールに出資しました。
テンセントなどカルフール中国に投資 小売市場はアリババとの二大勢力に(20180202)
同じく2018年2月、テンセントとJD.comは、中国中西部でBetter Life Mallを展開する歩歩高商業連鎖(ベターライフ、better life commercial chain share、002251)にも出資しました。
テンセントとJDドットコム、中国の歩歩高に出資-実店舗小売り強化(20180226)
さらに18年3月、今度はJD.com傘下の京東到家とファミリーマートが提携。これでJD.comはファミマ、セブンイレブン、ローソンの三大日系コンビニすべてと提携することになったそうです。
ファミリーマートと京東到家が連携、商品配送が便利に—中国(20180302)
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ここでJD.comの決算資料をみてみます。
上位20社が全リテールマーケットに占める割合は、米国47%に対し、中国は14%しかありません。(JD.com資料より)
中国のリテール市場の伸びはアメリカを凌駕しています。(JD.com資料より)
以上のように、いまはマーケットも拡大し、お互いに利益を分け合っています。
そんななかで、両社とも布石を大きく打つ段階です。・・・が、じきにシノギ、サバキを意識した展開になるのが見えています。アリババは、とても悠長に構えているようにみえます。彼らはいまや「喰われる側」です。
日本もかつて、小売市場の大変革がありました。
ある時期の勝ち組が、次の時代の負け組になりました。
ダイエーなどはいい例です。
中国もいま、その時代に入ってきています。
一人当たりGDP約8500ドルです。
70年代後半です。
日本で起きたことを思い出しながら眺めれば、こんなにわかりやすい市場はないのではないかと、おいらは思っています。
P.S.いつも長ったらしい文章で申し訳ないのですが、自分の備忘録代わりとしてもこのブログを使っているので、いろいろと詰め込みすぎてしまっています。こんな読みにくい文章を読んでくれてありがとうございます。
by中卒くん