ダンスケ銀行のエストニアを経由した2000億ユーロにのぼるマネーロンダリング(資金洗浄)が発覚~エスコインやe-residencyで今後見えにくくなる恐れ
デンマーク最大の銀行であるダンスケ銀行(Danske Bank A/S)には以前より巨額資金洗浄(マネーロンダリング)疑惑が浮上していましたが、このたび、米司法省が本格的に調査を開始すると伝えられています。
今回の件ではエストニアを経由した資金洗浄が問題になっています。エストニアは近年、電子政府化、独自仮想通貨エスコインの発行、e-residency制度などサイバー空間を利用した投資環境の整備に邁進しています。
このエストニアの先進的な方針が、いずれ既存システムとの間に大きな問題を起こすのではないか、と個人的にみています。
とりあえず、まずはダンスケ銀行の問題から見ていきましょう。
ダンスケ銀行は07~15年にかけて、ロシアなど東側諸国からエストニア支店を通じて2000億ユーロもの資金の違法な移動を幇助したと言われています。
ロシアのオリガルヒがロンドン・シティでの経済活動を円滑にする手助けをしていたとのこと。
この件に関し、ダンスケ銀行エストニア支店における資金洗浄を黙認していたとして、ダンスケ銀行は前CEOトーマス・ボルゲン(Thomas Borgen)を追放。
この件に詳しいアナリストによると、ダンスケ銀行はユスケ・バンクとの問題で総額62億~77億ドル規模の罰金を受ける可能性があるとみているそうです。
なお、エストニアといえば「ラトビア・エストニア・リトアニア」のバルト三国の一か国であることは中学校の地理で学びますが、どのような国であるかは多くの人が知らないと思います。(自分もまぁ、報道でしかしりませんが)
このエストニア、以前はソビエトから分離した国くらいにしか見られていなかったと思います。人口130万人の小さな国です。
しかし最近では、エストニアは行政手続きの9割以上をオンラインで完了できるなど、先進的な情報化投資で最近脚光をあびています。
またエストニアは実際の国家でありながら、電子国家(サイバー国家)としても機能することを目指しており、パスポートの写しをネット上で送信するだけでエストニア住民になれるe-residency(eレジデンシー制度)と呼ばれる電子居住権を発行しています。
すでに143カ国、2万7000人の仮想国民がいるとされ(日経新聞2018年1月1日朝刊)、この電子居住権があればエストニアの銀行口座を作り、法人登記もできるとのことです。
しかもエストニアは欧州連合EU加盟国ですから、この法人を拠点にしてEUでのビジネスも展開できる。
ようするに、エストニアはEU向けタックスヘイブンの電子化を推し進めようとしているようです。
さらには、エストニア独自の仮想通貨エスコインの発行をしたりだとか、非常に先進的な取り組みをしていることで近年注目を浴びています。
って、、、良いことだらけのように書いてますが、実際のところ結構やばいんじゃないかと感じますw
あからさまにマネーロンダリングしやすい状況を作るあたり、確信犯であるように思います。
しかもロシア人が関わりやすい地域ですから、間違いなくそういう汚い資金の流れも想定しているでしょう。
今回のダンスケ銀行の一件は、エストニアでe-residency(eレジデンシー制度)などが導入される以前の問題です。
エストニアってのはつまり、昔からこういうマネーロンダリングにかなり寛容な地域だったのだと思います。
なお、おとなりのラトビアのABLV銀行でも巨額マネーロンダリング事件が発覚しています。
欧州当局:ABLV銀清算へ、ラトビア金融業界の混乱に歯止め Bloomberg
ABLV銀行は巨額の制裁金に耐えられず破綻しており、今回、ダンスケ銀がそうならないかに注目が集まっています。
ちなみにABLVの一件では、ECB政策委員会メンバーのリムシェービッチ・ラトビア中銀総裁が汚職容疑で逮捕されています。(容疑は別でしたが、当時、多くの人はABLV関連だとみていました)
なお、ダンスケ銀行のモルテン・モースゴーCEOは、「引当金は足りていない」旨の発言をしています。
Danske Bank Says U.S. Is Now Investigating Laundering Case (3) Bloomberg
正直でよろしいですが、このままでは「マネーロンダリングやったもん勝ち」な状況をECBは二度続けることになります。非常によろしくないと思います。
なお、今後はエストニアの電子政府化、エスコインの発行などによって膨らんだ資金の流れのなかで、これまでよりもマネーロンダリングしやすい環境が醸成されることが予想されます。
エスコインやそれを用いたICO(イニシャル・コインオファリング)をエストニアは試そうとしているようですが、これなんてまさにマネーロンダリングのためのツールとしか思えませんw
これに関してはECBのドラギ総裁も「ユーロを採用する国は別の通貨を発行できない」と釘をさしていますが、エストニアがどういったことをしていくのか、本当に興味ぶかいところです。
今後、第二、第三のダンスケ銀は出てくると思います。
それらは今までと違った、よりネット時代に適した資金洗浄手法をとってくるはずです。
今のうちから、それらに備えた動きはとっておいた方が良いと思います。
ぶっちゃけていうと、自分は以前から「仮想通貨なんて、国家にとっては百害あって一利なし」だと思っています。
政府の偉い人たちはそろそろ、仮想通貨の本質に気づいたら良いと思います。