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企業短評:国際貨物輸送大手 フェデックス(FedEx)

企業短評:国際貨物輸送大手 フェデックス(FedEx)をみてみよう

 

会社側が決算資料として公開しているものなどを利用して、企業を短評していきます。今回は国際貨物輸送大手、クーリエのフェデックス(FedEx)をみてみましょう。

 

(なお、この記事を書いているのは2018年6月20日です。バリュエーション評価などに利用する決算数字などは、書いている当日に入手可能なものを利用しております。)

 

とりあえずまず、フェデックス(FedEx)という会社についてご存じでない方のために軽く説明をしたいと思います。

フェデックス(FedEx / Federal Express)はアメリカを中心として、世界220の国と地域をつなぐ航空貨物、陸上運送、配送のほか、その管理、ロジスティクス(物流)全般を担う企業です。こういった会社をクーリエと呼びますが、同様の企業には米国のUPS(ユナイテッド・パーセル・サービス/United Parcel Service)やドイツのドイツポスト(Deutsche Post)傘下のDHLがあります。クロネコヤマトや日本郵便(Japan Post)が超巨大になった感じ、といえばわかりやすいと思います。(規模が違いすぎますが・・・)

動画でみるのが一番わかりやすいと思うので、フェデックス(FedEx)公式のYoutube動画を張っておきます。

 

とりあえず、企業紹介が済んだところで、直近発表の決算関連書類などを元にフェデックス(FedEx)の短評をしていきたいと思います。

 

 

フェデックス(FedEx)のセグメント別売上推移

フェデックス(FedEx)の売上(revenue)と営業利益(operating income)がセグメントごとに分けられて載っています。個別セグメントについてかきますと、

 

フェデックス(FedEx)の輸送事業はおおまかにいって

  • FedEx Express segment・・・国際航空貨物部門です。小口荷物から大きなものまで、航空網などを用いて世界中に運びます。もともとのFedExの事業になります。
  • FedEx Ground segment・・・陸上輸送部門です。小口の荷物を配達したりしています。
  • FedEx Freight segment・・・大型フリート車両による輸送部門です。
  • FedEx Service segment・・・サービス部門、いろいろです。
  • その他

にわかれます。

フェデックス(FedEx)の売り上げについてみてみましょう。

どの分野も順調に伸びていることがわかりますが、特にFedEx ExpressとFedEx Groundが堅調に推移していることがわかります。これは簡単にいってしまうと、ネット通販、Eコマースの進展によるものです。世界中で小口荷物の輸送ニーズが高まっています。特に中国などでは年率30%程度の伸びを示しているようです。東南アジアやインド市場はこれから伸びていくでしょう。そういった需要、とくに国をまたぐような配送需要を受けてフェデックス(FedEx)の業績も好調に推移しています。

 

フェデックス(FedEx)の営業費用(Operating Expenses)についてもみていきましょう。

こちらはちょっと厄介です。まずsalaries and employee benefets(雇用者報酬、福利厚生、保険コストなど)が売上高の伸びとパラレルに伸びています。配送は結局のところ人手を利用してするしかありませんから、多く運ぶためには多く人を雇う必要があります。また、米国を中心に賃金の上昇がキツいです。そんなわけで、運送業界の雇用者報酬は膨らみがちです。売上の約1/3が人件費です。この点、先日書いたユニオンパシフィック鉄道の決算と比較してみてください。同じ運輸業界ですが、人件費の比率はユニオンパシフィック鉄道は売上の1/4程度でしかありません。鉄道の方がより労働生産性が高くなる、と言えると思います。

Purchased transportationも増えています。こちらは自社で運べない場所や、運べない量を他社に肩代わりして運んでもらう際に支払う委託費用がのっています。こちらも売り上げの伸びを上回るペースで伸びていることがわかります。

Rentals and landing feesは空港への離発着や倉庫の利用などの際に支払う手数料についてのっています。

Depreciation and amortizationは減価償却です。

Fuelは燃料費

Maintenance and repairsはメンテナンスコスト

Goodwill and other asset impairment chargesはのれんの償却についてです。

Retirement plans mark-to-market adjustmentは退職給付引き当て

とりあえず以上より、フェデックス(FedEx)の営業費用においては、人件費と委託費が大きいことがわかります。

業績が拡大基調にあるときは、どうしてもこの二つが大きく跳ね上がります。逆に業績が何らかの要素で下押し圧力を受けた際には、フェデックス(FedEx)は人件費と委託費用を調整することで乗り切ってきました。今後もたぶんそういうふうに経営していくはずです。

 

以上のように営業費用がかなり嵩むサービスですから、上記の表でセグメント別営業利益をみてもさほど大きくは伸びていないことがわかると思います。

下の方にOperating Margin(営業利益率)が載っていますが、一けた台で推移しています。たくさん運んでたくさん稼ぐサービスといえます。参入障壁は、このマージンの薄さです。こんな資本効率の悪そうなサービス、今から構築する奴は愚かです。

Amazonは一時期物流事業に参入しようとしていましたが、結局その報道以来なにも進展していません。そりゃそうでしょう、こんな儲からないこと、ふつうは外部委託した方が良いってなります。

 

 

 

とりあえず、参考までにフェデックス(FedEx)のExpressセグメントにおける輸送商品ごとの推移を載せておきます。

 

意外なことに、一晩で届けるサービスが減っています。

輸送コストの上昇から、フェデックス(FedEx)の多くの顧客はエクスプレスサービスよりも通常のゆっくりしたDeferredなサービスを選んでいるようです。

 

 

とりあえず、フェデックス(FedEx)の株価チャートとバリュエーションについてもみてみましょう。

 

フェデックス(FedEx)のティッカーはFDXです。

フェデックス(FedEx)日足

フェデックス(FedEx)週足

 

フェデックス(FedEx)のバリュエーションは、アナリストコンセンサスの2019年通期決算の数字でみてPER15.5倍、EV/EBITDAで8.05倍くらいです。

 

フェデックス(FedEx)の株価チャートは非常に急激に上がっているようにみえますが、バリュエーションから見れば適正な範囲にみえます。

フェデックスはその事業内容からかなりシクリカルに業績が動きやすい銘柄です。ですから、できれば業績がめためたに押される時期に買う方がいいです。

 

とりあえず、フェデックス(FedEx)の短評は以上になります。


 

なお、最初にも書きましたが、この記事を書いているのは2018年6月20日ですので、バリュエーション評価などに使う数字も書いている当日にわかる範囲のものを利用しています。投資判断にあたっては、できるだけ最新のデータを基に判断されますようお勧めいたします。