ブラジル政界汚職の中心的企業であり、世界的食肉企業でもあるJBSの米子会社で大規模サルモネラ菌汚染が発覚
ブラジル食肉大手JBSの米国子会社でサルモネラ菌汚染、少なくとも16州57人が体調不良に陥り、650万ポンド(約2945トン)の肉が回収へ
6.5 million pounds of beef recalled after 57 sickened from possible …
世界的な食肉加工・生産大手であるブラジルのJBSの米子会社で大規模なサルモネラ菌汚染が発覚。
このJBSの肉を食べた、少なくとも16の州の57人が体調不良に陥ったことが確認されたとのこと。
問題のJBSの肉は7月26日から9月7日まで長期間にわたり販売されており、ウォルマートブランドで売られたものも含まれているとのこと。
いやはや、すさまじい量のサルモネラ菌感染です。
しかもこのJBSという企業、はじめての食肉汚染じゃありません。
JBSという企業は、ブラジル国内では検査官を賄賂で買収して汚染肉を市場に流通させていた企業として有名です。
しかもこのJBSの汚染肉は世界的にばら撒かれていた。
まぁ、この件に関してはJBSだけでなく他のブラジル企業も同様のことをしていたといわれていますが。
この件で、JBSの食肉を含むブラジル産の肉は、世界各国で輸入禁止措置がとられました。
日本でも一時期、ブラジル産の肉が市場からゴッソリ消えた時期ありましたよね。
アレの背景には、JBSを含むブラジル食肉業界の汚染体質があったわけです。
ちなみに業務スーパー(神戸物産)の格安の鶏肉などもブラジル産なのですが、一応商品回収などはしていないようなので安全なのでしょうか。ちょっと不安だったんで手を出さないようにしてましたが・・・
とりあえず、このJBSという企業は、本国ブラジルでは確信犯的に汚染肉の流通環境を整えてきたような企業です。
さきほども書きましたが、このJBSという企業は食肉汚染を検査する担当官を賄賂で篭絡し、買収してきました。
と同時に、JBSは賄賂を政治家にもばら撒いていたといわれています。
そのJBSの賄賂を渡した対象には、なんと当時の大統領であったテメル元大統領もいたのです。
ミシェル・ミゲル・エリアス・テメル・ルリア(Michel Miguel Elias Temer Lulia)はブラジルの第37代大統領です。この人物もまた、JBSの賄賂の対象でした。
“ブラジル政界、再び混迷必至-テメル大統領に不祥事隠蔽疑惑が浮上” Bloomberg
グロボ紙が報じたところによると、テメル大統領はエドゥアルド・クーニャ元下院議長のマネーロンダリング疑惑(国営石油会社ペトロブラスを巡る疑獄事件にも関係)をめぐる裁判で証拠隠ぺい工作を画策。
証人となるはずの元政治家(服役中)に対して口封じのためにJBSが資金を提供していたのですが、これを続けるべきかテメル氏に尋ねたところ「続けるべきだ」とテメル氏は答えた。
このテメル大統領側との違法献金の場面や電話のやりとりを全部、JBS側は録音、録画しておいたのです。そしてそれを暴露しました。
これがブラジル疑獄事件の中心的事件です。ちなみに、テメル大統領が守ろうとした下院議長は前のルセフ大統領を罷免投票のもと失職させた人物です。
ようするに、ぜんぶ仕組まれたことなわけですが、その中心にいた企業こそがJBSなわけですね。
しかしなぜ、JBSなどという食肉会社ごときが政界献金をこんなに繰り返すのでしょう?
食肉汚染を隠すため?
もちろんそれはあったかもしれませんが、それ以上に大きいのが
JBSが受け取ってきた政府系金融機関(開発銀行など)からの低利融資の円滑な実施
を目的とするものだった、と多くの人はみています。たぶん。
JBSはもともと、1953年にブラジルのアナポリスの牧畜家ホセ・バティスタ・ソブリンホ(Jose Batista Sobrinho)が屠殺事業を行うために設立されました。
事業をしていた近くにブラジリア建設が決まり、その建設作業員たちに食肉を供給することで儲かったようです。
このJose Batista Sobrinhoの頭文字をとってJBSと名付けられた企業は、他社の買収を繰り返します。
とくに息子兄弟の代に入ってからのJBSは、2005年にアルゼンチンのSWIFT買収、2007年に上場して、ブラジル開発銀行BNDESから大規模な資金を獲得、同業他社を積極的に買収し、海外市場にも積極的に乗り出します。
この間のJBSの売り上げは、10年間でなんと25倍程度になります。
利益ではなく、売上ですからね。
凄まじい成長です。
売上規模は6兆円くらいです。
日本の食肉大手の5~6倍くらいですか。
規模からみても、世界有数の食肉業者です。
買収のための資金を政府から低利で融資されまくったJBSは、どんどん拡大します。
そのための政界工作は与党野党の政治家だけでなく、候補者の段階からばら撒いていたといわれています。
JBSから賄賂を受け取っていた議員は、少なくとも1800人超といわれています。
ところが、このブラジル開発銀行BNDESを巡る汚職事件が発覚します。JBSにももちろん、捜査の矛先が向かいました。
そしたらJBSはなんと、このブラジル開発銀行BNDESの汚職事件において司法取引をしてしまったのです。
つまり、そういう経路でさきほどのテメル元大統領の汚職が発覚した、、、というわけ。
ようするにです。
JBSというのは、その程度のコンプライアンス意識しかない企業なのです。
ちなみに、この汚職まみれのJBSを率いてきたジョシュレイ・バティスタ(Joesley Batista)とウェズリー・バティスタ(Wesley Batista)の兄弟は、その後アメリカに移住しています。(なかば亡命みたいなもの。命の危険があるので。)
本来ならば重犯罪者であるはずのふたりが、なんだかんだでアメリカに移住できてしまう・・・
このJBSの拡大には、アメリカの利害が何か絡んでいたようにもみえます。
もいろん、確たる証拠はなにもありませんが・・・。
とりあえず、です。
こういうコンプライアンスぐっだぐだのJBSが、今回アメリカで大規模食肉汚染を引き起こしました。
でもそれはもう、いつか起きて当たり前のことだったのだと思います。
内部管理がちゃんとできていない企業は、いつかそういうチョンボをやらかすもんです。
ブラジル国内であれば「みんなもやってるし仕方ないよね」で済まされることでも、アメリカならばゆるされない。
JBSの一件は、つまりそういうことなんだと思います。
で、これって、翻ってみると日本企業にも言えることだと思うんですよ。
昨今、日本メーカーで完成車検査の不正事件が相次いでいます。
日本国内では「検査が厳しいからしかたない」とか
「みんなもやってるし、適当なところで穏便に矛をおさめよう」とかって流れになりつつあります。
でもそれ、日本でなら許されますが、海外でも許されると思いますか?
個人的には、完成車不正検査問題も、JBSの食肉汚染問題も、その論理構造はなんら変わらないと思います。
ローカルな基準で許される環境を作ると、グローバルな競争の中で手痛い目に合うとも思います。
コンデンサのカルテル問題などを見ても思いますが、日本人はルールを守らないことを是とする癖がある。
向こう10年20年をみた場合、そういった甘えを治せる企業と治せない企業では、大きな違いが表れてくると思います。
気をつけていったほうがいいと思います。
長文でしたが、以上です。