【6273】SMC(エスエムシイ)の業績と株価~空気圧制御機器世界シェア1位
今回は、空気圧制御機器で世界シェアトップのSMC(エスエムシイ)の業績と株価をみていきます。
まずはSMCの会社説明からはじめましょう。
SMC(エスエムシイ)とは?
SMCとは空気圧制御機器で世界シェア1位、ドイツのフェスト社(Festo)と世界2強を構成する日本の企業です。
SMCの沿革
1959年、焼結濾過体の製造販売を目的に焼結金属工業株式会社を設立。
その後、空気圧補助機器や方向制御機器などの製造にも乗り出し、「ショーケツ」ブランドで機器販売。
1986年にSMC株式会社に社名変更(Sintered Metal Companyの頭文字をとったもの)
2000年には知財裁判では有名なフェスト事件(Festo事件)に勝訴し、現在に至ります。
SMCの手掛ける空気圧制御システムとは?
SMCは空気圧制御システムの製品全般を製造、販売します。
圧縮空気清浄化機器であるエアドライヤ、ミストセパレータ(除湿、濾過をするための機器)
空気圧補助機器であるエアフィルタ(ちりの除去をするためのフィルタ)、レギュレータ(空気圧の調整機)、ルブリケータ(潤滑油供給機)
方向制御機器であるソレノイドバルブ(圧縮空気の流れを変化させることで、エアシリンダなどを動かす機器)
駆動機器であるシリンダ、ロータリアクチュエータ(回転運動を加える機器)、エアチャック(空圧でモノを掴む動作をする機器)
一応、他社の製品ですが、わかりやすいように動画を貼っておきます。
https://www.youtube.com/watch?v=XWQIwgxS0f4
SMCは空圧制御機器で国内シェア、世界シェア1位
(SMC決算資料)
SMCの空気圧制御機器市場シェアは2017年に国内シェア65%、世界シェア36%でともにトップ。
国内市場では2位がCKD、世界市場では2位はFesto(フェスト)となっています。
SMCのライバル空気圧制御機器メーカー
SMCの同業空気圧制御機器メーカーとしては、以下のメーカーがあります。
Festo(フェスト)・・・ドイツのメーカー。世界シェア2位
Parker(パーカー・ハネフィン/PH)・・・米国企業。国内ではTAIYO、クロダニューマティクスで販売
Norgren(ノルグレン)・・・米国
Bosch Rexroth(レックスロス)・・・ボッシュ傘下
Camozzi
CKD・・・日本国内2位
その他、妙徳、甲南、ピスコ、コガネイなどありますが割愛。
SMCの業績は2010年代のFA投資で大きく回復
リーマンショック後に落ち込んだSMCの業績ですが、2010年代の中国の製造業勃興、FA(ファクトリーオートメーション)投資で大きく回復しました。
これはあくまでも私見ですが、これは2010年から設備投資循環が上向きになったことと一致していると思っています。
最後の噴きが2017年であり、現在はその後退局面入りではないかと、個人的にはみています。
ただ、以前よりも設備投資循環も短くなっているんで、落ち込んでも数年で回復するとは見ていますが、ちょっと今回は皆が思っているよりも長引くかも?って見ています。
SMCとフェスト事件(Festo事件)と均等論
1985年当時空気圧制御機器世界トップだったフェスト社(Festo)にSMC(当時は焼結金属工業)が特許侵害で訴えられた事件は、知財判決における重要事件、フェスト事件(Festo事件)として広く知られています。
このフェスト裁判では、特許権の及ぶ範囲(均等論)が争点にされました。
特許の内容を文字で表現するには限界があります。特許を見て細かな変更を加えて製品にする方が圧倒的に楽です。これでは特許を出願する方が損になる。それでは特許権者が可哀そう。
そうした理由から、特許を出願した時点でその意図する範囲を拡大して認めようというのが均等論のざっくりとした意味になります。
で、特許を出願するときにはその対象を狭めるための縮減補正をされるわけですが、これがされた場合には(ほぼすべてされるわけですが)、特許権の及ぶ範囲が狭められることになるかどうか(コンプリートバーと言います)、が争われたのがこのフェスト裁判です。
って、これについて書いていくと日が暮れるのでやめておきますが、とりあえず、コンプリートバーは否定されたのですが(フレキシブルバー)、地裁差戻しのあとはフェスト側の予見可能性などを巡ってあれやこれや争って、SMCが確か最後は勝ちました。(よね?記憶があやふやです)
より詳しくはこちらの本をごらんください。分かりやすく事件の過程が書いてあります。
特許のルールが変わるとき―知財大国アメリカを揺るがせた特許侵害事件「フェスト」
フェスト事件は、自分が相場を始めたころに凄く騒がれていた事件なのでよく覚えています。
もしこれが認められないと多くの技術系企業の特許権が価値激減して、バランスシートにも影響するとか何とか…そんな感じで騒がれた裁判です。
SMCの業績とはあまり関係がないのですが、非常に面白いのでよかったらどうぞ。
SMCの業績
ここからはSMCの業績を会社説明資料や決算関連資料などをもとにみていきます。
(この記事は2018年11月10日に書きました)
SMCの2019年3月期第2四半期決算の業績は対前年比で売上3.8%増、営業利益2.2%増、経常利益8.6%増、四半期純利益2.7%増、一株当たり四半期純利益1130.84円、自己資本比率88.8%
となりました。
SMCの業績は昨年の強い成長からも、第1四半期の段階からも大きく減速してきています。
売上、営業利益など全般的に下方修正しています。
何が原因なのか、とりあえずみていきましょう。
SMC業績~単体業種別売上高
SMCの業種別売上高ですが、全体的に大きく落ち込んでいます。
2017年通期の業種別売上高は、
自動車が8%、半導体が34%、半導体以外電機が28%、工作機械19%、食品7%、医療13%、その他12%のプラスでした。
それが今回は半導体以外電機がいっきにマイナス7%になっているほか、あれほど高い伸びを示していた半導体が伸び半減しています。
かなり大きな落ち込みといえるでしょう。
SMC業績~単体輸出先別売上高
なお、SMCの2018年上期輸出は、北米向けが20%減、欧州19%増、アジア9%減、その他15%増となっていますが、
これはSMCの2017年通期輸出が、北米向け51%増、欧州20%増、アジア29%増、その他10%増だったことからみると、恐ろしいほどの急減といえると思います。
とりあえず、国内の設備投資がまだそこまで減っていないので救いはありますが、国内の設備投資はいつだって世界の設備投資の後追いであることを考えると、じきに国内への販売も落ち込むことが予想され、それはSMCの業績に対してリスクとなると思われます。
SMCの株価
SMC 日足株価
SMC 週足株価
高値からだいぶ調整してきたSMCの株価ですが、まだ下落トレンドの最中だなぁという気がします。
とりあえず、2015年のチャイナショック後くらいの傷で済めば、あと数か月先には底入れすると思われますが、もし大きな設備投資循環の影響を受けるようであれば、あと1年半以上の低迷は余儀なくされる可能性があるとみています。
以上、今回はSMCの業績と株価についてみてきました。
なお、上記はあくまでも個人的な見解であり、特定の投資スタンスをお勧めするものではありません。投資にあたっては自己責任で行っていただきますようお願いいたします。