世界最大の小売企業ウォルマート(Walmart)の業績をみてみよう~インドのフリップカート事業に注目~
今回は、小売売上高で世界最大、インドのフリップカートや米国オンライン販売にも力を入れる、ウォルマート・ストアーズ(Walmart Stores)の業績をみていきます。
とりあえず、ウォルマートの業績をみる前に、同社の会社紹介をしようと思います。
ウォルマートの企業紹介はかきかけです
ウォルマートは小売業売上高世界最大
ダグ・マクミロンCEOがひきいるウォルマート
2014年、それまでウォルマートストアーズの経営を担っていた4代目マイク・デュークCEOが退任し、5代目ダグ・マクミロンCEO(Doug McMillon)が誕生しました。当時まだ47歳。非常に若い。
このダグ・マクミロンの経歴が面白いです。Wikipediaによると
1984年に夏季労働者としてウォルマートの物流センターで働き
1990年にMBAをとりながらウォルマートに入社
2006~2009年までサムズクラブの社長兼CEOに就任
2013年当時はウォルマートインターナショナル(ウォルマートの海外部門)のトップ。
こういう叩き上げの人材はUPSなどでもみられますが、どちらかというと、社内政治がいろいろややこしい会社に多いように思います・・・。
なお、このウォルマート・インターナショナルを率いたダグ・マクミロン本人が、ウォルマートの外国事業の選択と集中を2018年現在、強力に推し進めているのは興味深いところ。ブラジル、イギリス、そして日本からも撤退しようとしています。そしてインドに注力しようとしています。
ウォルマート・ストアーズはジェット・ドットコム(Jet.com)の買収でネット通販市場に参入。社名からストアーズを削除し、ウォルマートへ
ウォルマート・ストアーズは2016年にネット小売りの新興企業ジェット・ドット・コム(jet.com)を買収しました。
同時に、社名からストアーズを削除し、ウォルマートに変更。
アナログな時代との決別を宣言します。
ここからは、ウォルマートの業績を見ていきます。
先日2018年第2四半期決算が開示されましたので、ウォルマートの決算資料をもとに業績をみていきましょう。
(この記事は2018年8月18日午前6時ころに書きました。数字やデータ、株価などは同時点で入手可能なものを利用しています。投資を検討の際はできるかぎり新しい数字を入手して行っていただきますようお願いいたします。)
まずは以下をご覧ください。
ウォルマートの2018年第2四半期決算は、前年比で売上が3.8%増、営業利益が3.7%減、税引き前利益が91.4%減、希薄化後EPSは0.29ドルの赤字
になりました。
ざっとまとめると
米国ウォルマートの既存店売上は4.5%増、これは2008年5~7月期以来10年ぶりの高い伸び
Eコマース事業/ネット小売事業は売上高が前年同期比40%増。前期は33%増
通貨変動の要素を除いたベースでは、売上高は3.6%の増加
今回の決算には、買収したインドのオンライン小売事業フリップカートの影響は入っていません。
営業利益段階に比べて税引き前利益が大幅に減少しているのは、ブラジル事業からの撤退に伴う特損の発生によるものであり、一時的要因。おもにブラジル通貨レアル安に伴うもの。
ウォルマートの事業を個別セグメントごとにみてみましょう
ウォルマート北米事業は既存店売上4.5%増、総売上5.2%増
ウォルマート北米事業の営業利益は1.4%増
会員制小売のサムズクラブの既存店売上は5.0%増
サムズクラブの総売上は0.6%減
サムズクラブのオンライン販売は売上31%増
ウォルマートの海外事業は苦戦、通貨変動を除いたベースで売上3.1%増、営業利益20.4%減
ウォルマートの海外事業は総じて苦戦中
主要国の既存店売上でみると、英国が0.4%増、メキシコが5.4%増、カナダが2.6%増、中国1.5%増
営業利益は英国事業以外ぜんぶマイナス
ウォルマートもこの問題には気づいています。
ウォルマートは海外事業を大幅に整理中です。イギリスのスーパーマーケット子会社アズダを売却、ブラジルの子会社も売却し、インドのオンライン小売大手フリップカートを買収しています。
ウォルマートは今後、このフリップカート事業に注力するとともに、アメリカ国内のネット小売り事業を拡大していく方針とのことです。
また、各メディアの報道などによると「ウォルマートは日本の西友からも撤退するのでは?」と言われています。
ウォルマートは本格的に集中と選択を進めていくようです。
とりあえず、ウォルマート(Walmart)の株価チャートもみていきましょう。
ウォルマートのティッカーはWMTとなります。
ウォルマート 日足チャート
既存店売上高10年ぶりの大幅増加とネット小売り事業の好調な推移を受け、ウォルマート株はQ2決算後に一時11%超の上昇となりました。
今日はいったん落ち着いた動きになっているようですが、極めて強い動きとなっています。
アマゾン一強と思われていた米小売市場で、ウォルマートは好敵手になるのでは?との期待が広がっています。また、アマゾンとはインド市場でもガチンコ対決になります。(インド市場のネット小売りトップ二社がウォルマートとアマゾンということになります。)
ウォルマートは、かつてのウォルマート・ストアーズという名前からストアーズを取り去りました。
それは、「これからは実店舗に限らず事業を展開する」という意気込みだったと思います。
2018Q1決算では不慣れなオンライン事業で在庫不足を招き、大きな減益決算に繋がってしまいましたが、ウォルマートのオンライン事業はようやく事業が波に乗り始めた感があります。そういう意味では非常にポジティブです。
ただ、今回のウォルマート既存店売上高の10年ぶりの好調には、トランプ減税の影響が出ています。
逆に、まだトランプ関税の影響は出てきていません。
消費者物価など各種統計をみると、この影響が7月あたりから強く出始めています。
センチメント系指標(ミシガン大消費者信頼感指数など)は早速悪化を示し始めています。
そういった意味で、やや期待先行で上昇した株価は落ち着く場面があるかな、とみています。
とりあえず、以上です。
なお、上記はあくまでも中卒くん個人の見解であり、特定のスタンスをお勧めする物ではありません。ウォルマートへの投資に当たっては自己責任でされるようお願いいたします。