英ナショナル・サイバー・セキュリティ・センター/National Cyber Security Center(NCSC)がファーウェイ製品にお墨付き
英国国営サイバーセキュリティ専門家組織NCSC
GCHQ(政府通信本部)の傘下に組織NCSCは、英国政府によって2016年10月に設立されたサイバーセキュリティ分野のスペシャリスト集団です。
世界中から有能なハッカーを集めているとされ、サイバー攻撃の専門家1000人近くを有する、世界最先端の情報技術研究機関です。
このNCSCが、中国の通信機器メーカー、ファーウェイ(Huawei)の5G製品に対して、事実上の安全宣言を出してしまいました。
NCSCがファーウェイ製品に安全性のお墨付き
Financial Timesの報道によると、NCSCはファーウェイの5G製品の使用に関し、「発生するリスクを管理できる」と結論できたとのことです。
UK concludes it can mitigate risk from Huawei equipment use in 5G: FT
これはもう、本当にヤバイです。
自分が、一番懸念してきたことがおきてしまうかもしれない状況になっています。
アメリカの最大の同盟国であるイギリスの国営サイバーセキュリティ機関NCSCが、中国のファーウェイの5G製品群の利用に対して、安全保障上のお墨付きを与えるという事態・・・
これが事実だとするなら、今までとはガラリと動きが変わります。
ぶっちゃけていうと、米国についているのが損な状況になりかねない・・・
そのくらい、今回のNCSCの判断というのは、重大なものです。
これまでのNCSCおよびHCSECのファーウェイへの判断とは大いに異なる結論
これまで、NCSCはファーウェイ製品に対して危険性を喚起してきました。
NCSCはわざわざファーウェイ用に新たなユニット、ファーウェイ・サイバーセキュリティ評価センターHCSECを立ち上げて、徹底的に分析してきました。
この結果、昨年8月にファーウェイ製品を利用する際の安全保障上の安全性に対して出した経過判断としては、NCSCは「限定的に保証できる(Only Limited Assurance)」としてきました。
Huawei cyber security evaluation centre oversight board: annual report 2018
限定的に保証できる=保証できないよ
という意味です。
Limitedというのは、安全保障面で利用された場合、そういう意味合いです。
とりあえずNCSC傘下のファーウェイ調査ユニットであるHCSECは、ファーウェイに対してかなり懸念をもって接してきました。
もちろん、いまでも調査対象ですから、懸念をもって接しているでしょう。
しかし、それでもなお「ファーウェイ製品を利用した場合のリスクは許容可能、管理可能」というのがHCSECおよびNCSCの判断となった・・・
それは、非常に重要な意味を持ちます。
アメリカは欧州にファーウェイ製品排除を求めるが・・・HCSCおよびHCSECの判断は重大な影響を与える可能性
今回のHCSCおよびHCSECの判断がさらに重大な意味を持つのは、現在、アメリカのペンス副大統領が欧州歴訪しており、演説で猛烈にファーウェイをDisっているという事実があるからです。
英国の最大の同盟国であるアメリカ、アメリカから見ても英国は歴史的にも実質的にも最高の同盟国だと思いますが、その英国のHCSC、HCSECが、アメリカが敵視する中国のファーウェイの製品にお墨付きを与えてしまった。
しかも、ペンス副大統領がファーウェイをDisっている最中に・・・というのは、本当にすごいことです。
いうなれば、ペンス副大統領の顔面に泥を塗りたくるような行為を米国の最大の同盟国イギリスがやったということに等しい。
もちろん、これは政府レベルで行われた行為ではなく、あくまでもHCSCおよびHCSECの内部での判断でしょう。
FTにリークしたのはHCSCおよびHCSECの内部技術者?
今回の発表は、まだ政府レベルの発表ではありません。
しかしそう考えれば尚のこと問題です。
つまり、HCSCおよびHCSECにいるようなサイバーセキュリティの高度な専門家は、アメリカが煽っている安全保障上の不安に対しては懐疑的であるということ。
ぶっちゃけ、ファーウェイを排除したがる米国の言い分には納得できないという専門家の方は日本にも多いですが、世界トップレベルの研究者たちですらそういう判断を下しているという事実。
これは本当にいろいろ頭が痛いと思います。
英国政府はHCSCおよびHCSECのファーウェイ評価書を素直に受け入れるか?
個人的に、英国政府は今回のHCSCおよびHCSECのファーウェイ評価を焼き捨てるのではないか、という気がしています。
最終評価はされていない。
安全保障上のリスクは存在している。
として、米国に追従する態度を示す可能性です。
FTの記事はトバシ記事であり、本当はファーウェイは危険だ。排除しよう。アメリカについていこう。
という論調を政府が叩く可能性もあります。
しかし、その場合に技術者、研究者が納得するかどうか?
世論は・・・たぶんこの件の重大性がわかってないのでどうにでもなりそうですが。
また、欧州の一部の国々はファーウェイ排除に突き進んでいますが、まだフランスやドイツなどは煮え切らない態度を示しています。
こうした国々の意思決定に関して、今回のHCSCおよびHCSECの判断が大いに影響する可能性も高い。
HCSCおよびHCSECによるファーウェイ評価は斯様に大きな意味を持ちます
個人的に今回の件は、かなり最悪のシナリオだと思います。
いうなれば、ファーウェイを封鎖しようとして、逆に封鎖されかねない状態です。
ナポレオンの大陸封鎖になぞらえている方がいましたが、まさにそのとおりでしょう。
そのニュースを見て思わず唸った。ファーウェイ包囲網は逆包囲されることになる。ナポレオンの大陸封鎖例のごとく。そのとき日本は?猫が不思議そうな顔してこっちを見た。 https://t.co/zRWvIauQB5
— クッキー1103 (@knight_brompton) February 18, 2019
個人的にも一番懸念してきたことであり、朝の食事の最中、FTを読んで「あぁぁ・・・」っとなってしまいました。
【日記】おいらが超絶深刻な顔をしていた理由が妻にはわからない・・・
アメリカは、中国に対してだけでなく、イランに対しても大陸封鎖令のようなことをしています。
しかし、欧州はこれに同調してくれません。
欧州は、アメリカのいいなりになるのではなく、独自の調査分析で動き始めています。
今回の英国HCSCおよびHCSECの判断もまた、そういったもののひとつになることでしょう。
とりあえず、日本はいつまでアメリカについていくか、引き際を考えながら行動すべき時に入っているように思います。
以上。