米中貿易交渉、中国人民元の安定化を覚書に盛り込みへ
米中貿易交渉、米政府は中国に人民元の安定を要請、切り下げは許さない姿勢示す
米中貿易交渉で米政府が中国に対し、人民元の切り下げを許さないとの姿勢を示しているようです。
昨年の春から年末にかけ、人民元は米中貿易戦争の激化とともに下落傾向をたどりました。
中国は貿易総量に対して外貨準備が足りていないのではないか、との懸念も出ており、人民元を売る動きが急速に広がりました。
また、中国は落ち込む内需による産業の停滞を補うために、人民元を切り下げることによって外需主導の経済にするのではないか?との懸念も広がりました。
中国1-3月期経常収支が約17年ぶりに赤字転落 人民元・インバウンド需要は続くのか? 7月12日
こうした流れにたいし、中国政府も過度の人民元安を牽制。
中国、李克強首相が夏季ダボス会議で演説。「人民元引き下げは害」と為替に言及 18年9月20日
対外関係の悪化やキャピタルフライトを起こす可能性もあり、対ドル人民元は7ドル程度までで抑えるのではないか、という見込みから、ここにきてやや人民元高に振れる動きとなっています。
米政府が中国に対して人民元の切り下げをしないように釘をさしたのは、こうした背景を踏まえてのものです。
中国人民元安はデフレを輸出し始めている件
なお、ここもと発表されている貿易統計により、中国人民元安が周辺諸外国にデフレを輸出し始めている状況がみえてきています。
中国によるデフレの輸出が始まった~日本・中国の貿易統計より~ 19年2月22日
1月の貿易統計によると、日本や韓国、台湾の貿易が不調な一方、中国の輸出は好調。
日本はこうした状況で輸出が急減、輸入は微減、中国からの輸入は増加となり、1.4兆円規模の貿易赤字に転じています。
人民元がやや対ドルで上昇しているこのタイミングですら、日本の輸出産業への影響は甚大になっています。
この調子で人民元安が進まないことは、日本にとっては一息つく内容にみえます・・・が・・・
問題は米ドルが下落し始めたとき、事実上のペッグ制である人民元も一緒に下落するという現実・・・
ここで問題になるのは、人民元がドルに事実上ペッグ制同様の状態(管理フロート制)になっているという現実です。
もしこの状況でアメリカがリセッション入りし、金利低下させ、円に買いが集まったとすると、人民元はそれだけで対円で下落することになります。
事実、こうなるリスクは高まっているのではないか、という気がしています。
いや、なんとなくですけどね。
人民元はそろそろ通貨バスケットに対する管理フロート制に移行した方がいい
個人的には、こうした事態を避けるためには、通貨バスケットを対象にした管理フロート制に移行するなどの方法があるのではないか、と思います。
ただ、現実問題として米中の間でそんな議論をいまさら始めるとも思えません。
通商問題を話し合うだけで必死でしょうから、ここで新たなお題が混ざるとも思えません。
ですから、きっと米国は米ドルに対してのみ、人民元の変動を抑えるように要求するはずです。
そしてそれこそが、東アジア諸国にとって、非常に危険性のある取り決めとなる可能性があるのではないか、というふうに思います。
人民元の対ドル切り下げ拒否で影響を受けるのは鉄鋼や一般化学など素材株
こうした人民元と米ドルとの取り決めは、米ドルの下落さえ起きなければ大きな問題にはなりません。
しかし、もしひとたびそうした事態になれば、日本の輸出産業にとっては本当にヤバい状況が待ち受けることになるのではないか、と個人的に危惧しています。
なお、この状況で一番ひどい影響を受けると思われるのが、素材関連です。
とりわけ、鉄鋼やステンレス、建材、金属精錬、汎用化学品、繊維などでしょうか。
こういった企業群は中国の内需減による外国へのデフレ輸出の影響を強く受けます。
非常に危険なものがあり、気を付ける必要があろうかと思われます。
以上です。