「終身雇用との決別」は日本株の買い材料

「終身雇用との決別」は日本株の買い材料

 

各種メディアで報じられているように、経団連の中西宏明会長が終身雇用との決別を宣言しました。

  • 「正直言って、経済界は終身雇用なんてもう守れないと思っている」
  • 「どうやってそういう社会のシステムを作り替えていくか、そういうことだというふうに、お互いに理解が進んでいる」
  • 「人生100年時代、一生一つの会社で働き続けるという考えから企業も学生も変わってきている」

(各種メディア報道より)

 

自分は、これは株式市場にとっては本当に良いことだと思います。

今回は、そう思う理由について書いていきます。

 

 

 

終身雇用のせいで無駄に規模拡大に走った日本企業

日本企業のROEは非常に低いことが知られています。

2018年5月29日付日経新聞にようやく

「日本企業ROE、初の10%超え」

なんて記事が出たくらいです。

一般的な先進国のROEは10%台半ば程度ですし、借金でブーストしまくりのアメリカ企業のなかには、旧来型の産業でもROE20%台半ばの企業もざらにあります。

(旧来型のサービス=安定しているので借金しやすいという面もあるでしょう)

ROEに関しては論点がブレるのでこれ以上今回は詳しく書いていきませんが、とりあえず、日本企業はこれまで

  • レバレッジをかけない経営
  • 無駄なところに投資をする経営

を繰り返してきました。

一般的な市場目線からすると明らかに間違っている投資でも、経営陣の判断でガンガン投資をするのが一般的でした。

それで、多大な損失を積み上げたり、低い利益率や資本効率に悩まされることになりました。

 

自分は、こうした無謀な投資の背景にあるのは

「ポストの増設」

なのではないか?というふうにみています。

 

要するに、子飼いの部下を派遣するためのポストを作るために、常に拡張を続けようという価値観です。

戦国時代の感覚です。

子飼いの武将を城主に任命してやるために城を落とす・・・

城を与えてくれる殿様がいい殿様。

いつまでも治水や品種改良などの領内経営に勤しむ殿様は愚鈍な殿様。

後世の評価をみても、そんな感じの描かれ方が多いように思います。

 

もっというと第二次世界大戦前後だって同じようなもんでした。

次男坊、三男坊に新天地で旗揚げするチャンスを作ってやる。

そのための北海道開拓だったり、満蒙開拓、蘭印攻略だったりしたわけです。

 

日本人は基本的に、そういう拡張路線が大好きです。

生産性の向上よりも、ポストの増設の方が優先されてきたのがこれまでの日本企業の経営だった・・・そう自分はみています。

(日本軍は蘭印に原油を求めて侵略しますが、実はそんなことをしなくても大慶を発見すればよかったんじゃないの?ということを以前原田泰氏が書いてましたが、ご尤もだと思います。生産性向上よりも規模拡大を選ぶのは、当時の軍部と大して変わりません。)

 

 

 

終身雇用の撤廃で、無駄な投資がなくなるかもしれない

つまり何が言いたいかというと、終身雇用がなくなることで、

「ポスト拡大のために無駄に規模拡大を目指す経営に転機が訪れる可能性が高いのではないか?」

ということです。

「キャッシュがあるから設備投資に回そう」

という発想から

「資本は効率的に使わないとだめだ」

という意識に経営者の感覚が転じていく・・・

 

これは2014年ころからの企業統治改革の一段の進展や、機関投資家におけるスチュワードシップコード導入、株式持ち合いの解消、買収防衛策の廃止などに既に流れとしてあらわれてきていますが、今回の終身雇用撤廃によって、その流れが一層強まるのではないか、と個人的にはみています。

 

 

もちろん、これだけを以て、

日本株は買い

というふうにはいえませんが、少なくとも日本株のダメなところのひとつが消えていくことはポジティブにみて良いと思います。

以上です。