エジプトのムハンマド・モルシ前大統領が公判中に倒れ死去
ムハンマド・モルシ前大統領が亡くなりました。
ムハンマド・モルシ前大統領(Mohammed Mohammed Mursi Essa el Ayyat)はエジプト・アラブ共和国の第5代大統領
いわゆるアラブの春の流れで大統領になりましたが、
ムスリム同胞団出身、自由公正党でイスラム色が強く、
軍クーデターで放逐。
その後、一日23時間独房に入れられるなどの過酷な環境に置かれたことで体調が急速に悪化。
67歳の若さで亡くなりました。
ムハンマド・モルシ前大統領の簡単な経歴
ムハンマド・モルシ氏はエジプト、シャルキーヤ県アル=アドワ村の農家の出身。
1975年にカイロ大学工学部を卒業
1978年にカイロ大学工学部修士
1982年南カリフォルニア大学で工学博士取得
1982年から85年までカリフォルニア州立大学ノースリッジ校の助教授
NASAに勤務しスペースシャトル開発に参加
1985年、エジプトのザガジグ大学の教授になり2010年まで勤
2000年から2005年までムスリム同胞団議員団長
2011年 ムスリム同胞団が母体となる自由と公正党の党首就任
いわゆるアラブの春の影響で、流れに乗るままにムハンマド・モルシは大統領になりました。
(ムスリム同胞団トップは出所したばかりで選挙に出られず、二番手のモルシが出馬した形になります。)
就任後は、イスラム色の強い改憲方針をとったことからエルバラダイ(同国出身の国連事務総長)などの猛反対を受け
またイスラエルに敵対的な態度をとったことから、イスラエルおよびイスラエルと結びつきの強いアメリカやサウジアラビアなどとの関係が悪化。
最終的にはシーシ国防大臣(現大統領)による軍クーデターにより放逐されました。(2013年エジプトクーデター)
その後、拘束され、2011年反政府デモで警察署を襲撃するよう扇動した罪などで死刑判決が下ったものの、
破棄院にて再審が命じられて、下級審に差し戻しされている最中でした。
ムハンマド・モルシ前大統領は独房で一日23時間拘束
一度死刑判決が下ったムハンマド・モルシ前大統領ですが、再審が命じられたことにより刑事裁判所に差し戻しされていました。
その公判中に、ムハンマド・モルシ前大統領はろれつが回らなくなり、昏倒してしまったとのことです。
しかし、このムハンマド・モルシ前大統領の早すぎる死は、ある意味で当然のものでした。
2018年に英議員によって纏められた報告書によれば、ムハンマド・モルシ前大統領は一日23時間独房に入れられて、適切な体調管理などをされていなかったとのことです。
"The denial of basic medical treatment to which he is entitled could lead to his premature death."
2018 report by British MPs found 'stark conclusions', adding that Morsi was being kept in solitary confinement for 23 hours a day https://t.co/iHm5Ahrlyf pic.twitter.com/LTXGs22VWQ
— Al Jazeera English (@AJEnglish) June 17, 2019
人間にとってこれは非常に厳しい環境であり、むしろこれだけ長きにわたり生きていたことの方が不思議なくらいです。
事実上の死刑に等しい殺し方。
これが、アメリカが中東地域で頼りにしている同盟国エジプトの姿です。
(ほかの米同盟国は、モサドによる暗殺しまくりのイスラエルと、反政府ジャーナリストの殺害も辞さないサウジアラビアです。トルコは米国からやや距離を置く姿勢。)
ムハンマド・モルシ前大統領放逐に対するアメリカの対応のマズさ
米国は2013年のエジプトクーデターに関しても、クーデターとして扱っていません。
クーデターとして扱えば、武器弾薬などの輸出ができなくなってしまいますから。
(ここらへんは、ムハンマド・ビン・サルマン皇太子にジャマル・カショギ氏殺害疑惑が掛けられた際に庇いまくったのと事情は同じです。)
現シーシ政権によるムスリム同胞団への苛烈な取り締まり、および政治犯への大規模な死刑判決の乱発に対しても、アメリカは口をつぐんでいます。
中国の政治犯収容に対して非難しているアメリカですが、エジプト政府によるムスリム同胞団などに対する扱いに関してはスルーしています。
むしろ、イスラム教理主義的な流れを阻止するために、イスラエルと組んで支援しているのではないかとすら感じられます。
⇒米国、ムスリム同胞団をテロ組織指定へ~トルコとの関係は決定的に悪化へ
アメリカの中東政策は、明らかにトップ層の懐柔のみに力点が置かれており、民衆レベルの不満を無視しています。
ムハンマド・モルシ前大統領の殉死は、シーシ政権への不満を通り越して、アメリカに向かう可能性があります。
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