カナダ政府『トランス・マウンテン・パイプライン』拡張計画を推進へ
カナダ政府が国有トランス・マウンテン・パイプライン拡張を推進へ
賛否両論渦巻く中、カナダ政府はトランス・マウンテン・パイプラインを推進させることを決定したそうです。
このトランス・マウンテン・パイプライン、もとは米パイプライン大手のキンダーモーガンが所有するパイプラインでしたが、
かねてより環境保護団体、ブリティッシュコロンビア州の左派政権、先住民族などと係争を抱えており、拡張が思うようにいかない事態に直面。
カナダのエネルギー産業において極めて重要なパイプラインであったこともあり、カナダ政府が2018年にキンダーモーガンより買収した経緯があります。
アルバータ州とブリティッシュコロンビア州を結ぶトランス・マウンテン・パイプライン
トランス・マウンテン・パイプラインは、カナダ・アルバータ州から、太平洋に面したブリティッシュコロンビア州を結びます。
これが何を意味するか説明しますと、つまり、
「オイルサンド由来の原油(改質したあと)を太平洋の積み出し基地まで運べる」
ということです。
今の時代、一番経済発展が著しく、エネルギーの需要が高まっているのはアジア地域です。
この地域に原油を売りこむためには太平洋の積み出し基地まで運ばなくてはなりません。
それを可能にするのがトランス・マウンテン・パイプラインです。
トランス・マウンテン・パイプライン拡張はカナダのオイルサンド業界にとって最重要
カナダは原油などのエネルギー資源の埋蔵量が世界3位なのですが、そのエネルギー資源が眠っているのはアルバータ州、とくにアサバスカ地域のオイルサンドなどです。
⇒【統計】国別原油埋蔵量とシェア~ベネズエラが原油埋蔵量1位
オイルサンドはベネズエラなどにも存在しますが、非常に重質でそのままでは商品価値が低い。
コンデンセートやガソリンなどで希釈したり改質しなくてはなりません。
まずこの時点で、非常に高コストであり、原油価格が一定以上でなければ採算があいません。
そしてさらに、アルバータ州は内陸なので、輸送力の問題に直面しています。
つまり、トランス・マウンテン・パイプラインが拡張されなければ、掘っても低コストで輸送できない。
低コストで輸送できなければ、採算があわないわけです。
そういう意味で、カナダのエネルギー業界にとっては最重要な案件、、、と言えるのです。
実際、ここ最近の原油価格低迷でカナダのリグ稼働数は激減していますが、この背景には上記のような問題が存在しているわけです。
トランス・マウンテン・パイプラインに反対する人々
しかしここで問題になるのが、トランス・マウンテン・パイプラインに反対する人々の存在です。
まず第一に、環境保護団体が反対しています。
化石燃料に頼ったエネルギー開発をすべきでない、という理由と
パイプラインから原油がこぼれたら環境汚染につながる、という理由がメインです。
第二に、先住民が反対しています。
先祖代々受け継いできた我々の神聖な土地を汚染するような真似はやめろ、というわけです。
第三に、これらの人々の支持を受けているブリティッシュコロンビア州の州政府が反対しています。
カナダは連邦制ですから、各州政府の権限が強い。
州が反対すれば本来は建設が出来ないはずで、完全に訴訟モードに入っています。
とりあえず、環境汚染に関しては過去の問題がいろいろとあります。
みていきましょう。
トランス・マウンテン・パイプラインで繰り返される環境汚染問題
カナダ国家エネルギー委員会への報告によりますと、過去にトランス・マウンテン・パイプラインでは82件の原油流出が発生したとのことです。
とくに2005年、2007年、2009年には1000バレルを超える流出を記録
カナダは冬になると寒くなりますから、パイプラインも傷んで破裂事故なども多発しやすい。
とりあえずそんなわけですから、環境保護団体の懸念もあながち外れたものともいえないわけです。
それでもカナダ政府はトランス・マウンテン・パイプライン拡張計画を続行へ
そんな反対に直面しているトランス・マウンテン・パイプラインですが、カナダ政府としては産業界への影響が極めて大きいこともあり、推進する方針を示しています。
ただ、カナダのトルドー首相はご存知の通りメチャクチャ支持率が低い。
今回の件も産業界に媚を売り過ぎだとして批判的に報じる向きも多いようです。
この件が政治的にも影響を及ぼさないかどうか、そういった点にも注意が必要でしょう。
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