米国が国際緊急経済権限法(IEEPA)を対中国に適用する可能性について

米国が国際緊急経済権限法(IEEPA)を対中国に適用する可能性について

 

トランプ政権が中国に国際緊急経済権限法(IEEPA)を適用か?

報復関税の応酬となっている米中通商戦争ですが、

「トランプ政権の最終兵器は国際緊急経済権限法じゃないか」

という見方が浮上しています。

今回はこの国際緊急経済権限法の影響と、果たしてそれが選択される可能性がどれだけあるのか、について書いていきたいと思います。

 

中国に国際緊急経済権限法を適用する可能性について語ったトランプ大統領

トランプ大統領は2019年8月24日、以下のようなtweetをしています。

 

 

大統領に権限がないなんて言ってるフェイクニュースのレポーターへ。Emergency Economic Powers Act of 1977をしっかりみてみろ!

 

みたいなかんじです。

で、このEmergency Economic Powers Act of 1977ってのが、今回いうところのIEEPA、国際緊急経済権限法なわけです。

たぶんですが、トランプ大統領はこんな法律を知っちゃいないと思います。

誰かが助言していますね、間違いなく。

ナバロとかでしょうけど。

 

 

国際緊急経済権限法/IEEPAについて語ったムニューチン財務長官

対中国で国際緊急経済権限法を適用する可能性については、ムニューチン財務長官もFOXニュースに答えています。

「トランプ大統領は非常事態宣言を行うことで国際緊急経済権限法IEEPAを実行することができるし、そうすれば、米企業を中国から強制的に撤退させることができる」

と話したそうです。

Trump Aides Say He Has Power to Force U.S. Companies From China

 

そう、国際緊急経済権限法は、米企業を当該国から強制的に引き離すことができるのです。

さらには、当該国の資産を凍結したりもできます。

 

国際緊急経済権限法/IEEPAとは?

国際緊急経済権限法(Emergency Economic Powers Act of 1977/IEEPA)は1997年10月28日に施行された米国の法律。

合衆国法典第50編第35章1701~1707に書かれているとのこと。

基本的には、敵国や、マフィア、ギャング、ヤクザなどの非合法組織などをターゲットにした非常時経済権限法です。

これまでに適用された対象は以下

国際緊急経済権限法 適用対象国・組織一覧

ざっくり挙げると、イラン、シリア、北朝鮮、ジンバブエなどのほか、アルカイダ、イラクの反体制組織、日本のヤクザ、カダフィ政権の支援者、国際的な麻薬組織、核兵器の拡散に関わった人など個人も含めて多数に上ります。

 

これが適用されると、まず当該対象の米国との貿易ができなくなります。

米企業は当該地域で活動できなくなるほか、金融取引もできなくなります。

それだけじゃありません。

当該対象の米国内の資産は没収されます。

斯様に強烈な制裁措置です。

 

これを中国に適用できる、とトランプ大統領は言っています。

 

 

トランプ大統領は国際緊急経済権限法を中国に適用できるのか?

トランプ大統領は、国際緊急経済権限法を中国に適用できると言っています。

 

ええ、法的にはできるでしょう。

しかし、もしそれをやったら、米企業は完全に弱体化します。

現代社会ではサプライチェーンが複雑に絡み合っていますから、国際緊急経済権限法を中国に適用したら大変なことになります。

 

さらには、米国に資産を置く多くの企業や個人が逃げ出しかねません。

資産をアメリカにおいておいたら、ある日とつぜん奪われるかもしれないということです。

生殺与奪権をアメリカに与えるのに等しいわけで、こんなリスキーなことはありません。

米国からどんどんカネが出ていきます。

いま起きている金への逃避だって、もとをただせばこれを懸念したものです。

中国が米国債離れ~金保有増やす動き~金価格には下支え要因か

金価格が上昇中~米国債本位制の崩壊とビン・ラディンの影響力~

 

もし今すぐ国際緊急経済権限法を導入したら、大恐慌どころじゃない問題に発展すると思います。

 

現時点では、これを発動することはまずありえません。

 

 

トランプ大統領周辺の最終目的は国際緊急経済権限法

個人的には、いますぐ国際緊急経済権限法を中国に適用することは、ありえないと思っています。

そんなことをしたら米国経済はオワコンです。

そんなことはトランプ大統領もわかっているはず。

 

しかし、トランプ大統領は国際緊急経済権限法について言及はしています。

つまり、誰かがこれを吹き込んでいます。

まったく考えに上っていないというわけではないことがわかります。

 

きっと、最終目的は国際緊急経済権限法を中国に適用することなんでしょう。

その前段階として、徐々にアメリカ企業を中国から引きはがしていきたい。

そういうことだろうと個人的には見ています。

 

しかし産業界もそんなことは百も承知で中国との付き合いを維持しようとしています。

 

国際緊急経済権限法を中国に適用することは不可能か

基本的に、アメリカ人は保護主義を嫌い、縛られるのを嫌がることを嫌います。

今回、米中貿易戦争に関しても、いくら政府が音頭を取っても踊らない態度を示しています。

半導体各社はどうにかしてファーウェイに供給し続けようとしていますし、製造装置各社もそうです。

 

既に産業界は、米政権の方針により負担が増しており、PMIもISMもセンチメント系指標は下向きです。

今後は、追加の対中関税措置で米国民の購買力が削られます。

関税引き上げの負の局面を国民が感じることになるでしょう。

 

そうした時にどうなるか。

 

たぶんですが、トランプ大統領の目論見は上手くいかないと思います。

とりあえず、そこまでかなり時間はかかります。

米経済がそのあいだ持ちこたえられるかは不確実です。

設備投資が削られる事態には既に突入しています。

次は雇用、そして購買力が削られる事態に発展するかに注目です。

以上。