フィリピンのドゥテルテ大統領、鉱山廃止決定へ?住友金属鉱山はどうなる?

すごいニュースが飛び込んできました。

まさか本気だとは思いたくないのですが・・・

 

フィリピンのドゥテルテ大統領、数日以内に鉱山廃止を決断

Philippines’ Duterte says to end mining ‘one of these days’

 

インドネシアに次いで世界二位のニッケル鉱石輸出国であるフィリピン。

ドゥテルテ大統領就任後、環境保護を目的として鉱山開発に逆風が吹いています。

まず、ドゥテルテ大統領就任直後に環境天然資源相に就任したのはレジーナ・ロペス(Resina Lopez)という環境保護運動をしてきた女性です。

この人は環境保護のことしか考えないような人物で、フィリピン国内の41か所の鉱山のうち28か所の閉鎖を即決断、75件の開発プロジェクトを中止するなど強権的なやり方をとりました。

これにはもちろん鉱業業界が猛反発。フィリピンの鉱山は他国からの資本で運営されている鉱山も多いですから、国際的な問題になりました。

で、レジーナ・ロペスは国会の任命承認を受けられず、2017年5月にロイ・シマツ氏に環境天然資源相の座を譲ることになりますが、このシマツ氏も仕事が遅い。わざと遅らせているのではないか?と思われるくらいに閉鎖鉱山の再開を遅らせてきました。

で、先日ようやくこの閉鎖された鉱山の再調査が完了。結果、環境基準を上回る問題は2鉱山のみ。あとは再開できることになった・・・はずでした。

 

そしたら出てきたのがこのドゥテルテ大統領の発言です。

 

フィリピンのニッケル鉱山は閉鎖しちゃえ。環境保護万歳!byドゥテルテ大統領

 

そんな感じでしょう。

レジーナ・ロペスも、ロイ・シマツもドゥテルテの意向をそのまま実行したにすぎなかったのかもしれません。

非常に危うい状況になってきています。

 

 

 

で、問題は・・・フィリピンでは日本企業も活動しているってことですね。

以前記事で紹介した住友金属鉱山ですが・・・

 

 

企業短評:住友金属鉱山についてみてみよう~三元系正極材用ニッケルが好調~

 

 

住友金属鉱山は三元系正極材用のニッケル硫化物の原料として、自社で堀ったニッケルを利用しています。

そのニッケル鉱山が、フィリピンのコーラルベイとタガニートなわけです。

どちらも環境省から表彰を受けるくらいに高いレベルの環境保護をしてきた鉱山ですが、かりに全面的な鉱山開発禁止が大統領令で決定されると、住友金属鉱山の業績には非常に大きな影響が出ることは疑いありません。

仮にコーラルベイとタガニートから供給が止まると、同社権益はソロワコとフィゲスバルしかありませんが、どちらもマイナー出資ですから開発の主導権が握れません。非常に苦しい立場になっていると思います。

 

 

なお、フィリピンのGDPに占める鉱業比率はすでに1%程度でしかないのだそうです。

観光やコールセンター業務などがどんどん増えていて、昔のように一次産品の輸出で稼ぐ時代ではなくなってきているのだそう。

だから、ドゥテルテ政権としてはこういう強気な態度がとれるようです。

 

 

紆余曲折はあるでしょうが、今後ますますアジアの国々は豊かになっていくでしょう。

そのとき、たとえばフィリピンのニッケルだとか、インドネシアのグラスバーグ鉱山の金だとか、そういうものが今と同じコストで採掘できるのか?ということは考えた方が良いかもしれません。

単純に需給問題だけでなく、単純に労働賃金の問題だけでなく、鉱業から脱却しようとする政府の試みによって、環境対策面での採掘コストが跳ね上がる可能性について、もっと精密な試算が必要な気がします。

どうも各研究機関の見通しをみると、そこらへんを複合的に眺めた論文が少ないように思います。

 

 

とりあえず、今回の件はカントリーリスクの大きさを見せつけています。

紫金集団や五鉱集団などはアフリカに乗り込んでいますが、環境コスト、ESGコストを避けるにはやはりそれしか方法はないのかもしれないな、と個人的には考えています。にしても、ケツ持ちしてくれる超大国・中国があってのことですが。

資源分野においては、軍事力、経済力、安保理事会での発言力など諸々を含めた総力戦が始まっています。日本企業は、非常に苦しい立場に追い込まれています。