【韓国】サムスン・バイオロジクスの粉飾を証券先物委が認定~背景に15年のサムスン物産と第一毛織の合併による李在鎔(イ・ジェヨン)副会長への事業継承
韓国証券先物委員会SFCは、サムスン・バイオロジクス(Samsung BioLogics)の粉飾会計疑惑に関し「故意による粉飾会計にあたる」と最終判断を下しました
韓国証券先物委員会SFCが、サムスン・バイオロジクス(Samsung BioLogics)の粉飾会計疑惑を最終認定。
サムスン・バイオロジックスの粉飾会計問題の背景には、2015年のサムスン物産と第一毛織の合併による、李健熙(イ・ゴンヒ)会長から李在鎔(イ・ジェヨン)副会長への世襲による事業継承問題が絡んでおり、サムスン財閥全体を揺るがす事態になりかねない事態となっています。
S.Korean regulator rules Samsung’s bio unit breaches accounting rules
サムスン・バイオロジックスは韓国時価総額6位の企業
サムスン・バイオロジックスは韓国の時価総額6位の企業です。
サムスン・バイオロジクスは韓国株価指数であるKOSPIの算出対象であり、指数に大きなウェイトを持ちます。
サムスン・バイオロジクスの実質親会社、サムスンC&T(旧サムスン物産+第一毛織)
サムスン・バイオロジクスの実質的親会社は、サムスンC&Tです。
サムスンC&Tはサムスン物産と第一毛織が2015年に合併してできた企業なのですが、これが今回のサムスン・バイオロジクスの粉飾のきっかけになっているといわれています。
サムスン・バイオロジクスを巡る資本関係を整理しておく
ここで、サムスンバイオロジクスを巡る資本関係を整理しておきます。
とりあえず、以下の図をご覧ください。
サムスンバイオを巡る資本関係図
矢印は資本関係を示します。
第一毛織という会社がありますが、ここはサムスンオーナー一家の資産管理会社みたいなものと言われています。
本業はダメダメでしたが、サムスンバイオロジクスへ出資しているなど、サムスン関係の企業との資本関係で潤っている会社だったといわれています。
その第一毛織とサムスン物産が合併して、サムスンC&Tになります。
図のとおり、サムスン物産はサムスン電子の大株主です。
言うまでもなく、サムスン電子は世界的な大企業です。
このサムスングループの中核的大企業であるサムスン電子の継承をめぐって、今回のサムスン・バイオロジクスの粉飾会計は行われたのではないか、といわれています。
サムスン・バイオロジクスの粉飾会計の背後に、李健熙(イ・ゴンヒ)会長から李在鎔(イ・ジェヨン)副会長への事業継承を巡る思惑か
李健熙(イ・ゴンヒ)会長は 2014年5月10日、急性心筋梗塞で倒れてしまいました。
これを受けて、急いで事業継承しなければ長男である李在鎔(イ・ジェヨン)副会長に世襲させてやることができない、という状況になります。
李健熙(イ・ゴンヒ)会長と李在鎔(イ・ジェヨン)副会長はこうした事態を受け、2015年にサムスン物産(サムスン電子の大株主)と第一毛織(サムスンオーナー一家の資金管理会社)とを上手い具合に合併させることで、世襲による影響力の維持を画策したのではないか、と言われています。
サムスン・バイオロジクスは第一毛織の実質子会社
図にもありますが、サムスングループの資金管理会社である第一毛織は、サムスンバイオロジックス株を多く保有しています。
ということは、サムスン・バイオロジックス株の価値が急上昇すれば、サムスン物産との合併比率で有利になり、サムスン電子の支配権も手に入れられる・・・というわけです。
サムスン・バイオロジクスの親会社・第一毛織が2014年上場
サムスン一家の資金管理会社、第一毛織は2014年12月l18日に新規上場します。
先ほども書きましたが、 2014年5月10日に李健熙(イ・ゴンヒ)会長が急性心筋梗塞で倒れます。
この第一毛織の上場は、その後の事業継承に向けた地ならしだったとみることができると思います。
サムスン・バイオロジクスによるサムスン・バイオエピスを用いた粉飾会計手口
サムスン・バイオロジクスの子会社にサムスン・バイオエピスという会社があります。
このサムスン・バイオエピスはサムスン・バイオロジクスとバイオジェンの共同出資子会社なのですが、サムスン・バイオロジクスはこのサムスン・バイオエピスを突如、連結対象からはずして単純な投資先として扱うよう会計変更。
こうしたことで簿価から時価に評価を変更。
しかも、サムスン・バイオエピスはバイオ株ですから、評価方法が固まっているわけではありません。
サムスン・バイオロジクスはサムスン・バイオエピスを非常に高い価値で評価しなおしました。
こうすることでサムスン・バイオロジクスの決算報告書がキラキラになり、さらには第一毛織の財務がキラキラになるというわけです。
そして、サムスン物産と第一毛織が合併します。
サムスン・バイオロジクスの出資元である第一毛織とサムスン物産が合併
以上のような経緯をたどってきていますから、サムスン・バイオロジクスの株価評価が高まった状態であり、その大口出資元である第一毛織の株価も上昇しました。
このキラキラになった第一毛織の業績で釣り上げられた株価を用い、実質的にサムスン物産を吸収するかたちで合併が行われます。
これにより、サムスン電子をも、オーナー一家が影響力を継承することができるようになりました。
つまり、サムスン・バイオロジクスの粉飾会計問題とは?
つまり、サムスン・バイオロジクスの粉飾会計問題とは、サムスングループのオーナー一家の問題に発展する可能性がある、ということです。
今回の報道を受けサムスン・バイオロジックスの実質上の親会社であるサムスンC&T(旧サムスン物産)は大幅安になっています。
サムスン・バイオロジクスは韓国市場時価総額6位
サムスン・バイオロジックスは韓国KOSPIの時価総額6位であり、指数に大きな影響を与える企業です。
今回のサムスン・バイオロジクスによる粉飾会計疑惑は、サムスン財閥全体を揺るがす事態に発展しかねず、同国の経済全体にも影響しかねません。
とりあえずそういうことです。
気をつけて見ていきましょう。
最後にサムスンバイオロジクスの株価なども見ておきましょう
サムスンバイオロジクス 株価 日足
サムスンC&T 株価 日足
以上です。