【私見】会長職とCEO職を同一視する悪習は断つべき~日経記事「日産ゴーン会長、検査不正時に陣頭指揮とらず」を読んで~親子上場こそが諸悪の根源
この記事はあくまでも私見です。
各メディアの報道で騒がれているとおり、日産のカルロス・ゴーン会長が金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)容疑で逮捕されました。
ここぞとばかりカルロス・ゴーン会長への不満が噴出している模様で、「なかの人」からの話もいろいろと漏れ伝わってきているようです。
日経新聞に以下のような記事が載っていました。
ゴーン氏 変節した「カリスマ」 長期君臨 社内に不満 日経新聞
全体内容はともかく、自分が非常に違和感を感じたのは以下の一文です。
完成車の不正検査問題が発覚したとき、ゴーン会長は事態収拾への陣頭指揮を執ることなく、親族と西日本の島で余暇を楽しんでいた。「自分には全く責任がないと思っている。どこの会社の会長なんだか」と、ある日産幹部は嘆いている。
(引用はしたくなかったので要約しましたが、できれば本文をご覧ください。)
この幹部が誰なのかはよくわかりませんが、この方は「会長職とCEO職は別」という感覚がないのだと思います。
「監督と執行は別」という意識がない。
また、会長職とCEO職を分けることが企業統治上きわめて重要であることも、まったく理解していないのでしょう。
日産のCEOは西川廣人です。
現場の指揮をとるのがCEOであり、会長職はそのCEOのクビの挿げ替えをする役目です。
会長が執行の現場に出てきたらどうなりますか?
船頭多くして舟、山に上りますよ。
現場が混乱しますし、だれが執行責任を負うのか訳が分からなくなるでしょう。
とりあえず、今回の件で
「ゴーンに権限が集中し過ぎていたのが問題」
とか言ってる幹部たちは、もう少し企業統治の仕組みをよくよく考えなおしたらいいです。
そして、社外取締役、監査役の役割が形骸化していなかったか、よく検証し直したらいい。
そうしたら、理詰めで考えていけば、結論として、
「ルノーが大株主として君臨し続けるなかで、親子上場を維持し続けることが企業統治上の問題なのだ」
と気づくはずです。
日産のボードメンバーを決めるとき、ほとんどルノーの言いなりにならねばならない状況であること(日産自動車株式の4割超をルノーが保有)が、その他の株主の利益と背反する決定に繋がっていることは間違いないのです。
そのうえで、どうやったら日産自動車の既存株主の利害に反しない形に持っていけるか?そこを考えるべきだと思います。
この日産の既存株主というのは、もちろんルノーも含めて、です。
ルノーが4割超を握っているのですから、ルノーの利害に反するような決定はできないはずです。したなら、それこそ善管注意義務違反です。
(なお、カルロス・ゴーンの不正流用などを善管注意義務違反と言っている幹部がいるようですが、それ、善管注意義務違反言いたかっただけちゃうかと。本来の意味ちがうでしょ?って思います。むしろ忠実義務違反の方が正しいと思います。)
とりあえず、結論を書かせていただきます。
今回のような企業統治上の問題を解消するためには、日産自動車は即刻ルノーの完全子会社化されてしまった方がいい。
そして、日産自動車の既存株主はルノー株を受け取って、ルノーは東証にも上場すればいいと思います。
むしろ、企業統治を整理するにはそれしかないと思います。
もとから、親子上場が問題なのです。
ルノーと株式交換して傘下入りしてしまえば、既存株主の利害はしっかり守られる環境が作られます。
もしもルノー傘下入りして株主価値が落ちるとしたなら、それはルノーの企業統治の問題であり、それはその時にルノーのボードメンバーの交代を株主が要求すればいいことです。
とりあえず、権利と義務の関係をいったん綺麗に整理することが重要です。
でもたぶん、役職を失いたくない日産の幹部たちはそういった方向には持っていきたくないでしょう。
ルノー株を買い増しして独立維持に持ち込みたい、とか考えていそうです。
それこそ株主価値をないがしろにした行為であるのに、そういったことを言っている人もいるらしい・・・
この国に真の意味で企業統治が根付くかどうかは、今後の日産自動車とルノーのの資本関係の整理の行方にかかっているように思います。
以上です。