日銀貸出支援基金にマイナス金利付き貸し出しを導入か?~早川元理事が指摘
「日銀は貸出支援基金を通じてマイナス金利付きで貸し出すしかない」と早川元日銀理事
日銀の金融政策が隘路に向かいつつあるなか、日銀元理事である早川英男氏が大胆な政策提言を行っています。
80円台の円高十分ある、日銀はマイナス金利で貸し出しも-早川元理事 Bloomberg
要約すると以下になります。
- 景気後退に陥り、米国が利下げを始めればドル円は80円台の可能性
- ドル円が円高に進めば株安は必至
- 安倍政権は株価が命であり、日銀は傍観していられない
- 日銀によるマイナス金利付きでの民間銀行への貸し出ししか方策はない
というものです。
貸出支援基金とは?
貸出支援基金は物価の安定と経済下支えのために、日銀の金融緩和政策を民間金融機関へスムーズに浸透させるために、日銀のバランスシート上に作られたもの。
日銀はこの貸出支援基金を通じて民間金融機関へゼロ金利で貸し出しを行っており、早川元理事の発言は、このゼロ金利をマイナス金利に変更することで、実質的に補助金付きで銀行に借り入れしてもらおうというものです。
貸出支援基金を通じたマイナス金利付き貸し出しなんてできるの?
理屈的には、日銀が内規を変更すればいいだけですので可能だと思われます。
しかし、現実的にできるかどうかは疑問な部分もあります。
まず国内政治的には紛糾するでしょうが、よほど酷い不景気になれば導入の可能性は是認される可能性があります。これは問題ないと思われます。
ただ問題は、外交的にどうなのかということ。
トランプ大統領は為替政策の意図的な円安誘導を許そうとしていません。
この意図的な円安誘導のなかには、日銀の政策も含まれているのではないか、というのが大方の見立てです。
個人的にも、これまでの要人の発言のニュアンスからみてそういったものを感じており、日銀が果たしてすんなりとマイナス金利付き貸し出しを行えるかどうか、そこは疑問です。
もちろん、実行できるなら凄いことになると思いますが。
貸出支援基金を利用したマイナス金利貸し出しには意味がある?
もうひとつ、貸出支援基金を用いたマイナス金利貸出の効果の観点も考える必要があるかと思います。
JPモルガン証券の鵜飼博士チーフエコノミストの主張ですが、日本の金融機関の貸出残高535兆円に対して、貸出支援基金を用いた資金供給は45兆円でしかなく、効果は限定的ではないかということです。
ただ、個人的にはこれは過去の話であり、いざとなれば基金の枠自体が変更されていくでしょうから、大きな変化をもたらす可能性は否めないと思います。
えてしてエコノミストの方は過去を根拠に意味がない、と言いたがりますが、政策は過去を壊すためにあります。
たぶん、やるとなったら45兆円なんて優にこえる額が貸し出されることでしょう。
問題は、元日銀理事の「貸出支援基金マイナス金利化」提言を現役日銀理事たちが受け入れるかどうか・・・
個人的には、これが一番ネックになると思います。
この手の方たちは、メンツと手柄にこだわりますから。
本当にいい提案であったとしても、そしてそれが自分達が以前から温めていた案だとしても、ライバル視している誰かが言ったことはやりたがらないのが常です。
学者、研究者の世界にはそんな奴がごろごろいます。
そして、日銀の現職理事たちも似たようなもんです。
みなさん矜持を持っている。
たぶん、そんな理由から、貸出支援基金のマイナス金利化は実現が難しいのではないか、という気が個人的にはしています。
とりあえず、こういうのはあまり大声で言わんほうがいいです。
政策が縛られることになりますから。
以上。