Amazonが日本の出版社から書籍買い切りへ~書籍の値下げ販売も検討で中小書店存亡の危機~
Amazonが日本国内の出版社から書籍買い切りへ
Amazonが出版社から書籍の買い切りを始めるそうです。
これは、日本の書籍流通のみならず、文化全体の形態なども変化させるインパクトがあります。
以前からこうなることは予想されてきましたが、いよいよ来たか、と言った感じです。
旧来型の書籍流通~Amazonが直取引をする前~
旧来の書籍流通では、
出版社⇒取次⇒書店
という流れでした。
しかしこの取次システムにはいろいろな問題がありました。
あげればキリがありませんが、とりあえず、取次は大手ばかりを優遇して小さい出版社の書籍を在庫としておこうとしないことが一番のデメリットといえるでしょう。
売れ筋の本はおくけれど、売れそうにないものは倉庫の邪魔だから置かない、、、と言ったように。
また、ある書籍を街の小さな書店が受けると、取次に照会をかけて、その取次が在庫や他の書店、出版社に照会をかけるわけですが、ここで時間が恐ろしく浪費するのもデメリットでした。
とにかく、在庫管理が中小書店、中小出版社側でしきれていない事が多く、非効率なシステムでした。
Amazonとの直取引を選んだ出版社が2/3
Amazonはこの取次をすっ飛ばして、出版社との直取引を始めます。
現在、いくつの出版社がAmazonと直取引しているのかは定かではありませんが、1年ほど前にアマゾンが発表したデータによれば、およそ2300社程度が直取引をしているとされていました。
日本国内には3400社程度あると言われていますので、そのうちの約2/3程度がAmazonと直取引しているということになります。
直取引をしている出版社はアマゾンの指定倉庫に在庫を置くようにし、在庫管理などもAmazon側のシステムでわかりやすいようになっているとのことです。
これにより、ユーザーとしてはすぐに欲しい本を手に入れられますし、出版社としても煩雑な在庫管理から解放されるメリットがありました。
Amazonはいよいよ出版社に対して書籍買い切りを打診しはじめた
Amazonは、この直取引をしている2300社程度?の出版社に対して、今度は書籍の買いきりを打診し始めました。
これまで、再販制度で価格を維持できるかわりに、売れなければ出版社が書籍を引き取るのがこの業界の倣いでした。
しかし、Amazonはそれをやめて、書店であるアマゾンが出版社から書籍を買い切り、在庫を抱えながら商売することを提案するということです。
多くの出版社にとっては、Amazonに書籍を渡した段階で売上計上されるので経営はしやすくなります。
返品リスクを抱えることがなくなりますから、歓迎する声も多いようです。
Amazonは書籍の価格を引き下げて販売したい
Amazonは書籍価格を引き下げて販売したいのだそうです。
書籍を出版社から買切る代わりに、売れなかったときに安く売却することを呑ませるということのようです。
これが実現すると、何が起きるでしょうか?
書籍販売に価格競争が導入されると~Amazonのような資本力のある書店だけが生き残る未来
書籍の直取引と買い切り、そして価格引き下げが実現するとどうなるでしょうか。
まず第一に、今まで本は定価が当たり前だったという前提のもとに作られたシステムが瓦解します。
Amazonなど資本力のある企業が書籍の安値販売でシェアを取る一方、中堅以下の書籍販売業者は確実に淘汰されるでしょう。
これまでも淘汰はいずれおきる運命にみえましたが、それが一気に早まる可能性があります。
中小出版社の生殺与奪権はアマゾンになる
もうひとつの要素として、書店の淘汰、取次の衰退、Amazonの勃興とともに、中小出版社の生殺与奪権はアマゾンに集中していくことになります。
日本の書籍文化をAmazonが牛耳ることになります。
とりあえず、今のところアマゾンはすべての商品を在庫することが目的のようですから問題ありませんが、Amazonがなにかのきっかけで特定の出版社との取引を行わないといった場合、その出版社にとっては非常に危ない状況に陥ります。
また同時に、そうなったときにはユーザーとしても、多様性のある書籍文化が維持されなくなるという点で不利益を被ることになります。
とりあえず、中小書店の淘汰はまぁいいとしましょう。
ぶっちゃけ、書店側のリスクというのも、さほどあるようにみえません。
問題はアマゾンによる言論の統制リスクです。
Amazonが大きすぎて逆らえないような状況にならないように、いまのうちに法整備は必要なはずです。
いずれ、この調子ならばAmazon一強になりかねませんから。
以上。