ジェニファー・ダウドナ教授がゲノム編集技術クリスパーの最新型『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』を開発
ジェニファー・ダウドナ教授が、新たなゲノム編集技術『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』を開発
アメリカ、カリフォルニア大学バークレー校のジェニファー・ダウドナ教授らのグループは、これまでのクリスパーキャスナインに代わるゲノム編集酵素、『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』を開発したと発表しました。
この『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』をもちいれば、今までのキャスナインよりもより効率的に、安全にゲノム編集ができるということです。
Scientists find new and smaller CRISPR gene editor: CasX
(なお、自分はこの分野は非常に疎いため、間違ったことを書いているかもしれません。一部の記述は学生時代の記憶を頼りに書いている部分が多いため、古すぎるかもしれません。もし間違いがあれば指摘していただければ幸いです。自分も勉強になりますので。)
『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』の前身、クリスパー・キャス・ナインを開発したジェニファー・ダウドナ教授
遺伝子工学は1970年代から活発に研究されてきました。
この当時は、無害化したウイルスに遺伝子を運ばせる手法で、たとえばヒトインスリン遺伝子を大腸菌や酵母菌に導入してヒト型インスリンを生産したり、遺伝子操作をしたマウスなどのトランスジェニック動物をつくったり、除草剤に耐性を持つモンサント社の遺伝子組み換え作物(GM作物)などというのも作られました。
実際、日本人が食す大豆などの数パーセントはGM作物であり、味の素の生産や、飼料用アミノ酸、糖尿病に利用されるインスリンなども遺伝子組み換えによる大量生産のおかげで安く調達できており、これは当時の研究の成果によるものです。
ですが、こうした開発のしかたは非常に非効率で高コスト。
90年代になると、古典的で非効率なやり方ではなく、直接ゲノムを編集する技術を開発しようという機運が盛り上がります。
まず、特定の位置でDNAを切断するための制限酵素が利用されるようになるとともに、DNA修復のための手法も開発が進みます。
これらの手法にはいくつかの種類がありますが、そのうちのひとつがのジェニファー・ダウドナ教授とエマニュエル・シャルパンティエ教授らのグループの開発した『クリスパー・キャス・ナイン(CRISPR Cas 9)』というものです。
こちらの動画では『クリスパー・キャス・ナイン(CRISPR Cas 9)』の分子構造がどのようにDNAの二重らせんをカットするかが描かれています。
外部の研究者が製作した動画ですが、ダウドナ教授も絶賛したというお墨付きのついた動画だそうです。
『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』より以前のクリスパーの利点と問題点
『クリスパー・キャス・ナイン(CRISPR Cas 9)』には、的確な部分でDNAのらせん構造をカットできる利点があります。
部位の選択自由度は非常に高く、この点で他の手法に比べて明らかな利点となっています。
実験費用は安く、実験効率も高く、多重化も容易であるなどの魅力的なメリットもあるそうですが、その一方でオフターゲット効果(意図しない部位での挿入欠損変異がおきること)が問題になっていました。
今回のダウドナ教授たちが開発した『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』では、このあたりがかなり改善されているということです。
『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』の向かう先・・・
これまでのCRISPR技術も多大な変革を人類にもたらすものでしたが、オフターゲット効果を小さくするなどの進化が進めば、それこそ、利用範囲は無限大に広がることでしょう。
受精卵のゲノム編集は既存のCRISPRでは危険性が高いとして避けられてきましたが、そういったものも簡単に行われる可能性が高い。
すでに中国では、今回の『クリスパー・キャス・エックス(CRISPR Cas X)』とは違った手法で塩基配列をひとつひとつ交換する手法を開発していると言います。
かなり高コストになりそうにも思いますが、現実にできるようになれば、それこそ不老不死だって、超絶な能力を持たせたデザイナーズベビーだって、まったく絵空事ではなくなります。
将来的には、国家が国民に対してワクチンを接種させるのと同様に、国家が国民に対してゲノム編集を強いる社会が登場するかもしれません。
社会保障費の抑制と、国民のニュータイプ化のために国民をゲノム編集する国家。
国家が国民に対してワクチン接種を義務化するのが正当化されるのですから、ゲノム編集だって正当化されていい・・・という理屈は成り立ちます。
かつては倫理的に問題があるとされた行為でも、時間がたって安全性が確立されれば、道徳倫理より功利が優先されるのが世の常ですから。
金持ちは、自分の身体が老化してきたら、それを妨げるようなゲノム編集をしながら長寿命化を果たそうとするかもしれません。
金持ちは、自分の子供にゲノム編集を施して、絶対に障害のない子供、能力の高い子供、背が高くてイケメンで性格的に難のない子供を作ろうとするかもしれません。
金持ちは、自分の子供をオリンピックに出場させるために、マダイ養殖と同様に筋肉細胞の抑制遺伝子を破壊して、筋肉馬鹿を作ろうとするかもしれませんし、超絶な長身の選手を作ってバスケットボールで無双させようとするかもしれません。
金持ちは、性病に全くかからないようにゲノム編集して、いっぱいいっぱい生セックスを楽しめるようにするかもしれません。(これは是非、俺が生きている間に実現してほしいなぁw)
さらには、宇宙に人類が適応しやすいようなゲノム編集方法が見つかったり、人間ではない別の遺伝子を導入して超人化を図ったりするかもしれません。
例えば光合成ができるように改変したり、長時間水の中で過ごせるように鰓呼吸できるようにしたり、空を飛べるように鳥の骨格と羽をつけたりだとかするかもしれません。
国家は、自国の人々にゲノム編集を施して置き、自国民だけ生き残る化学兵器をしようするかもしれません。
人間版グリフォサートのようなもの(化学物質でもウイルスでも)が開発されれば、全世界の他民族を殺して、自分のとこだけ生き残るなんてこともできるかもしれません。
今ここで書いたことが、ひとつも実現しなければ、それはそれで人類にとっては停滞です。
ですが、実現すればするほど、それは人間ではない何かへの変化です。
それは、きっと多大な論議を呼ぶことになると思います。
以上。