実験衛星『墨子号』を利用した量子暗号通信の実験に中国科技大学が成功
中国が実験衛星『墨子号』を利用した量子暗号通信に成功
中国科技大学の潘建偉教授と彭承志氏、中国科学院の王建宇氏、オーストリア科学アカデミーのAnton Zeilinger氏などのチームが、量子暗号通信の長距離通信に成功したとのことです。
この量子暗号通信は、中国河北省とオーストリアのグラーツ基地とのあいだ7600㎞の距離を中国の実験衛星『墨子号』を介して行われたとのこと。
扱われたのは75分ぶんの通信で、約2GBの通信量だったとのこと。
1秒ごとに128bit更新されるthe Advanced Encryption Standard (AES)を用いた暗号化が行われていたとのこと。
Chinese satellite uses quantum cryptography for secure videoconference between continents
中卒くんの頭ではなにぶんよくわかりませんが、とりあえず、AES-128の共通鍵を量子テレポーテーションを用いて受け取り、それを用いて通信した、、、ということですね。
古典ビットの2GBのデータを量子ビットで送る、みたいなわけではないようです。あたりまえ。
『墨子号』を利用した量子暗号通信
量子暗号通信は、簡単に言ってしまえば、暗号の共通鍵を量子テレポーテーションで受け渡すことで実現する非公開鍵方式の通信手段です。
現在主流の公開鍵方式だと、通信データを全部傍受して、計算機ガシガシまわしてやればいつかは読めてしまいます。
それじゃあ困るってわけで、非公開鍵を使ったデータ通信をしたいな、という需要が生まれています。
しかし、遠いところにいるひとに非公開鍵を渡す手段が今までなかった。
しかも1秒間でリフレッシュされる鍵とか、ほとんど不可能に等しい。
それを実現するのが量子暗号通信なわけです。(間違ってないですよね?間違ってたら指摘お願いします。)
この非公開の共通鍵を遠くの人に渡すために、量子テレポーテーションが利用できる・・・と頭のいい人が気づきました。
量子テレポーテーションでは量子もつれの性質を利用して通信するわけですが、この方法の何がいいかっていうと、量子テレポーテーションは途中で盗聴されたら、その時点で性質が変化するって点なわけです。
鍵の通信自体を傍受されてたらたまりませんから、この「傍受されたら、ハッシュチェックで弾かれる」というのは極めて重要です。
とりあえず、この量子テレポーテーションでどのように傍受を検知するか、という点は中卒の自分には嘘なく説明しきるのはむずかしいのでパス。
そんなもんだと理解してください。
とりあえず、共通鍵を渡した後の通信手段は古典的な共通鍵方式の暗号通信と同じ。
ようするに、量子テレポーテーションで一度暗号の鍵がやりとりされてしまえば、その後セキュアに通信できるよってことです。
量子暗号通信に利用された量子科学実験衛星「墨子号」
今回、量子暗号通信に利用されたのは中国が2016年に「長征2号丁」ロケットを用いて酒泉衛星発射センターから打ち上げた量子科学実験衛星『墨子号』。
量子暗号はこれまでも様々な手法で利用が検討されてきましたが、光ファイバーを用いて通信する方法だと、光ファイバーの品質をどんなにあげても数百キロメートルが限度だと言われてきました。
この障害をクリアするために、中国科学院はまず地上500㎞の軌道上の衛星『墨子号』とのあいだで量子テレポーテーションを実験。
当初、実験には大気の澄み切ったチベット高原の高度4000m超の基地を利用したとのことです。
この地上・宇宙間の量子テレポーテーションが2017年7月10日に成功したことで、今回の量子暗号通信に道が開かれることになりました。
ちなみに、今回の実験では河北省とグラーツ基地での共通鍵の送信とのこと。
ご存知の通り、河北省は北京市の周りを取り囲む地域であり、鉄鋼生産が盛んかつ、中国の石炭産業の拠点でもあります。
空気はゴビ砂漠やチベット高原などよりも遥かに曇っていますので、そうした意味では条件が厳しかったはずですが、それでも量子暗号通信を実現したところに今回の実験の凄さがあると思います。
墨子号の名前に使われている墨子は非戦論の祖
この中国の量子実験衛星「墨子号」ですが、中学高校で世界史を習った方ならたぶんピンと来るはず。
そう、中国はこの墨子号を戦争のために使うつもりはない、博愛、非戦、非攻の精神で使うという意思を込めた名前なのだと思います。
墨家思想で運営されているから、みんな怖がらずに使ってちょうだいね、というわけです。
果たして、本当にそういうつもりなのかどうなのかはわかりませんが・・・
とりあえず、中国の科学技術は凄いレベルに到達したなぁと思います。
なお、これら技術は間違いなく宇宙でガンガン使われます。
真空では量子テレポーテーションやりやすいですし。
宇宙を舞台にした軍拡は今世紀のテーマになりそうです。
以上。