『トヨタ自動車』が米国会計基準GAAPから国際会計基準IFRSに変更へ~持ち合い株式による評価損発生をみえにくくするため?
トヨタ自動車が米国会計基準GAAPから国際会計基準IFRSに変更へ~持ち合い株式の評価損を嫌気~
トヨタ自動車が先日決算を発表しましたが、デンソーやアイシンなど持ち合い株式の評価減により、大幅な減益要因として利益を削ることになりました。
この背景に、米国会計基準GAAPにおける、ルール変更要因がありました。
簡単にいってしまうと、これまで政策保有株(持ち合い株)の価値下落を会計に反映させずに済んできたものを、あらたなルール変更では会計上の利益に反映させなくてはいけなくなったから。
これに対して、トヨタ自動車の白柳正義執行役員は
「IFRS(国際会計基準)の導入を検討している。なるべく早期に導入したい。」
と言っているとのことです。
米会計基準の採用企業 持ち合い株で損失相次ぐ 2019年2月23日 日経新聞
つまり簡単に言ってしまうと
「米国会計基準だと投資家に持ち合い株の価値下落分をみせなくちゃいけなくなる」
「国際会計基準に移ればそういうのは見えにくくなる」
「投資家は包括利益なんてあまりみないだろうし、国際会計基準に移っておこう」
ということでしょう。
持ち合い株式(政策保有株式)の会計方法の違い~国際会計基準IFRSの場合
株式の評価方法ですが、国際会計基準では銘柄ごとに純利益で評価するか、包括利益で評価するかを決定します。
たとえば持ち合い株式(政策保有株式)では、包括利益で評価して、トレーディング用のものは純利益で評価するなどの方法がとられます。
こうすることで株式持ち合いしていても、純利益が日々の株価の変動でブレることはなくなります。
一般的に投資尺度の計算に使われやすいのは純利益ですから、包括利益の変動がどうであれ、純利益が変動しなければ問題は意識されにくい・・・そういう算段が働いています。
アメリカではnon-GAAPな数字を開示する企業が多いですが、それと似たものといえるでしょう。
国際会計基準IFRSに移ったことで持ち合い株式の評価損がみえにくくなる・・・それは誰のためのことか?
今回、トヨタは持ち合い株式の評価変動をみえにくくするために、国際会計基準に移りたい旨の発言を執行役員が語っています。
しかしよく考えてみてください。
会計基準っていうのは、誰のためのものですか?
投資家のためのものですよね?
投資家としては、投資しようとしている先の会社になにかネガティブなことが発生しているのなら、さっさと教えてくれと思うはずでしょう。
間違っても、見えにくくしてくれ、とは思わないはずです。
トヨタ自動車は、投資家を大切にしようと経営しているならば、小手先の会計基準変更などで誤魔化そうとすべきではない。
より重要なのは政策保有株式を抱え込みすぎている現状をどうにかすべきということでしょう。
そこに手を付けず、株式持ち合いを続けるいっぽうで、損失は見えにくくしたい・・・そういうやり方をしようというのが、今回の白柳正義執行役員の発言からはみてとれます。
そうした内向きの思考は、品質偽装の問題とも通底するものがあります。
何のための会計なのか、という点をもう一度考え直すべき時だと思います。
以上。