住専、サブプラ、CLO・・・全然懲りない農林中金につける薬はあるのか?
住専問題、そしてサブプライムローン問題で大きな痛手を被り資本注入を受けた農林中金
その農林中金が、また同じような失敗をするのではないか?と、市場の一部で囁かれています。
問題の中心になっているのは、ローン担保証券(CLO)。
農林中金は、この所有比率が非常に高く、システミックなリスクに耐えられるか疑問を呈する記事が、欧米の主要紙に増えてきています。
今回はそんなお話をしていくことにします。
農林中金が所有するCLO資産残高は620億ドル(約6.9兆円)
Wall Street Journalが伝えるところによると、農林中金が保有するCLO資産は620億ドル(約6兆9000億円)となっているとのことです。
Risky US Loan Markets Lean Too Much on Japan
The Bank for Japanese Farmers That Fuels the Global Lending Market
これはウェルズ・ファーゴとJPモルガン・チェースのCLO資産残価をも上回るとのこと。
ご存知の通り、JPモルガン・チェースは世界最大級の銀行ですし、
ウェルズ・ファーゴも米地方銀行を集めた銀行であり、規模としてはJPモルガンよりやや小さい程度です。
農林中金とは桁が違います。
そんな外銀相手にやりあう農林中金・・・すごいですね。
ぜんぜん褒められたものじゃありませんけどね。
農林中金は2018年10-12月期の暴落時にさらに100億ドルCLOを積み増し
なお記事によれば、農林中金は先日のレバレッジドローン市場の大暴落時に、果敢にも買い向かって100億ドルCLOを増やしたとのことです。
WSJによると、これは同期間の欧米のCLO発行額の1/3だとか・・・すごすぎますね。
とりあえず、その頃よりもレバレッジドローン市場も、その組成した金融商品も回復してきていますから、農林中金の読みは短期的にはうまく行っているようです。
しかし、長期的にみてリスクの取り方として大丈夫なのか?という疑問が出てきます。
2018年1Q以降のCLO発行額全体の23%を買い漁る農林中金
なお記事によると、農林中金がCLOを買い漁っているのは2018年4Qだけでなく、より長い期間だということです。
2018年1Qからの欧米のCLO発行額全体の23%を農林中金が買っているとのこと。
凄まじい大人買いです。
こういった農林中金をはじめとした日本勢のマネーが欧米の企業の債務借り入れを助けていた部分があり、
まさに日本の金融緩和のおかげで世界が回っている、といっても過言ではない状態になっているようです。
しかしどうなんでしょう?
こんなことは持続可能なんでしょうか?
農林中金は住専問題で同様の投資を行った過去
農林中金といえば、古い方なら皆おぼえていることとして、住宅金融専門会社、いわゆる住専問題があります。
地上げ目的や原野開発のようなリスクの高い不動産物件に融資を拡大させていた住専ですが、この資金の供給元が、まさに農林中金でした。
住専はその後、バブル崩壊とその後の大不況でほぼすべてが倒産するのですが、それによって大きく農林中金の資産も毀損。
農林中金は破綻するのではないか、と言われました。
その後、いわゆる住専国会によって日本の財政、国費で住専処理を進めることが決定され、農林中金はからくも金融破綻の危機を脱します。
もし農林中金が破綻すれば、自民党の票田である農業票を失うことになりかねない状況でしたから、高度な政治的判断が働いたといわれています。
農林中金はサブプライムローン危機でも破綻の危機に
農林中金と言えば、もう一つ忘れてならないのがサブプライムローンです。
1980年代からすでに米国など海外投資を進めていた農林中金でしたが、そのほとんどは株式ではなく債券でした。
とくに米連邦住宅抵当公社ファニーメイや米連邦住宅金融抵当公庫フレディマックの債券も大量に保有しており
(当時はメジャーな債券でした。証券会社が個人にも売るような。)
サブプライムローンバブル崩壊で両公社が破綻の危機に瀕した時には、両社の債券を5兆5000億円も保有する農林中金にも連鎖破綻の可能性が浮上しました。
結果として両公社が米政府に救済されたために農林中金はどうにか、かろうじて倒産を免れましたが、巨額の赤字を発生させることになり、懲りることになりました。
そしてまたCLOでつかまった農林中金
そんなこんなで、いろいろと懲りているはずの農林中金なのですが、またもや一つの金融商品ばかりに入れ込んで、大きな損失をだしそうな状況になっているようです。
もしCLO市場で格付けが落ちるものが増え、解散が相次いだらどうなるか。
もし日本からのマネーの流れが止まったらどうなるか。
そういった懸念を語る人が増えてきています。
どうやら金融庁もこのCLO問題については調査を進めるようです。
今後を楽しみにしておきましょう。
以上。