破産者マップ問題を考える
過去に自己破産した人の実名と住所を地図上に示す『破産者マップ』
『破産者マップ』というサイトがありました。
自己破産した人の実名・住所などをGoogleマップ上にピンで示すものでした。
つい数日前までアクセスできていたのですが、徐々にアクセスが不安定になり、今はもう、管理人が閉めてしまってサイトアクセスできなくなっています。
多方面に波紋を広げた『破産者マップ』の問題について、今回はみていきます。
ネット上で騒ぎになった『破産者マップ』
『破産者マップ』の登場がいつだったのかはわかりませんが、数日前に話題になった時には、非常にアクセスが重たく、かなり人気のサイトになっていることがうかがわれました。
とりあえず、こちらの方が検証されていますが、先週はかなり債務整理関連のサイトアクセスが伸びていたとのこと。
そのうち特に破産系ワードの検索が伸びているとのこと。
先週のG変動後に債務整理サイトのアクセス数がめちゃ伸びてる!と思ったら、破産者マップなるものができて、それで破産系ワードの検索数が伸びてることによる影響だった。さほど順位変動なく破産系ページのみアクセス急増。 pic.twitter.com/EuiigfvCfU
— パシ (@pacificus) March 17, 2019
また、破産者マップのアカウントの方は、24時間当たり1000万ビューを超えるアクセスがきている、と報告しています。
24時間あたり1000万ビューを超えるアクセスと多数の削除申請が断続的にあり、サーバーにアクセスできず管理できていない状態が続いています。
— 破産者マップ (@hasanmaptokyo) March 16, 2019
すごいですね。
どんだけ大手のサイトでしょうかw
『破産者マップ』はどのようにして個人情報を集めたか?
『破産者マップ』のデータはどのようにして集めたのかというと、これは、一般に公開されている官報を利用しているようです。
官報に関しては、おもに紙媒体とインターネット版があります。
このうち、インターネット版の官報は直近30日無料、さらに有料サービスを利用すれば1947年以降の官報情報を検索することも可能となっています。
こうしたものを利用すればかなり効率よくデータ処理できるでしょう。
『破産者マップ』はインターネット版官報を利用していないと主張?
しかし実は、『破産者マップ』はインターネットサービスではなく、すべて紙媒体から書き起こしていると主張しているそうです。
これは、官報情報のインターネット版利用の規約を意識してのものと思われるとのこと。
官報情報インターネット版の規約には「個人的な使用の範囲を超えて利用しないこと」とあり、それに違反していることを理解しているから「紙から書き起こした」と言っているのではないかということです。
現実問題として紙媒体からそんな昔のものを全部書き起こすというのも考えにくく、データの入力作業の効率化を考えても、たぶんにインターネット版の官報を利用したのではないかと自分も思うのですが、まぁここらへんは憶測の域を出ないのでなんとも言えませんね。
とりあえず、官報からデータを引っこ抜いてきているというのは、『破産者マップ』本人がのべています。
僕の気づきを共有させてください。官報は公開情報で、誰もが図書館や大学等で自由に見ることができます。破産者の住所や名前を誰もが自由に知ることができます。官報の破産者情報は「文字列」として書かれていますが、今回のプロジェクトでは官報の文字列を地図上の「点の集合」に置き換えました。
— 破産者マップ (@hasanmaptokyo) March 18, 2019
『破産者マップ』はどのようにカネを稼いでいるか?
なお、『破産者マップ』ですが、自分が以前覗いた時には広告は全くありませんでした。
その後に広告をつけたのかもしれませんが、とりあえず以前はなかった。
(一部サイトにはGoogleアドセンスが他のサイトと一致していた、という未確認情報があるので、もしかしたら最近はアドセンスを貼っていたのかもしれませんが、未確認なので何とも言えません。)
とりあえず『破産者マップ』は何のためにこのサイトを作ったのでしょうか?
『破産者マップ』のいうように、官報のデータをまとめるため?
マネタイズとか考えず、人々のためにサーバーの帯域を借りているのでしょうか?
・・・一説によると、『破産者マップ』は削除依頼を求めてきた人からお金を奪うことが目的だったのではないか?という指摘が出ています。
個人情報を送ると一時削除料と称して3万円のAmazonギフトコードを要求されたそうです。Yahoo!知恵袋で切実な相談が寄せられていました。やはりお金だったんですね。
— メルちゃん (@wRTVRHPbUpaLEeE) March 18, 2019
果たしてこれが本当なのか、それとも偽なのかはわかりません。
続報を期待したいところだと思います。
『破産者マップ』の削除申請
なお、『破産者マップ』に削除申請するには、以下の項目を教える必要があるとのこと。
「破産に至った事情」
「破産後の生活」
「申請者の住所、生年月日、電話番号、本人確認資料」
破産者マップの削除申請フォーム
「破産に至った事情」
「破産後の生活」
「申請者の住所・生年月日・電話番号・本人確認資料」
を必須項目にしてて明らかに個人情報収集目的だし、いかにも闇金が欲しがりそうな情報だから、ほぼ間違いなく個人情報が名簿屋→闇金とかに流れて悪用されると思う…。 pic.twitter.com/CiPyFW5ZfF— ChatGPTオタク|生成AI特化の開発会社 (@fudousanchann) March 16, 2019
いやいや、こんなものを渡したら最後、ろくなことにならないのはわかりますね。
本当に『破産者マップ』がこんなものを要求しているのだとしたら、かなりエゲツないですね。
『破産者マップ』のおもしろさ
なお、『破産者マップ』はこれでなかなか面白いものを残しています。
たとえば以下・・・
https://twitter.com/igo_shogi/status/1107187162896687104
千代田区千代田1-1 つまり皇居wwwww
これにはわけがあります。
官報に載るのは本籍地なわけですね。
というわけで、世の中には本籍地を千代田区千代田1-1の皇居に設定している人が少なからずいる。
その人たち、たぶんひとりじゃなくて数千人のうち、破産した人たちがここに載っているわけです。
決して、皇居の中の人達の誰かが破産したというわけではないはずです。
『破産者マップ』が投げかける、行政なら個人情報を集めて公開していいのか?という問題
今回の『破産者マップ』の問題は、つまるところ個人情報保護の問題だと思われます。
それも、政府・行政による個人情報保護です。
人々にとって、破産をしたことがあるかないかというのは、かなりセンシティブな個人情報です。
それが官報では延々と皆に見える形で公開されている・・・
民間企業がこれをやったら、個人情報保護法違反で怒られることであっても、国・行政がやったら許されてしまうということ。
そこに一番の問題があるのではないかと思います。
今回の『破産者マップ』の騒動は、そうした行政側による個人情報の収集と公開が好ましいことなのかどうかという問題を提起していると思います。
それをつきつめていくと、日本の政府の形をも大きく変化させることになるかもしれません。
とりあえず、そういった点などを含めて、今後も注目していきたい『破産者マップ』の問題。
行政がどう対応してくるか、それが楽しみです。
以上。