日本の住宅地価格が低迷しているのは金融緩和のせいなのか?
日本の住宅用不動産価格が低迷しています
日本の80年代後半の不動産バブル崩壊後、地価は商業地も住宅地も大幅に下落しました。
その理由を金融緩和の不足だという人がいます。
本当でしょうか?
日本の住宅用不動産価格 世界一の下落
平成バブル崩壊後は金融緩和不足で地価を下げて銀行の不良債権が増加。今は銀行の減益を恐れて金融緩和を縮小し、所有者不明、境界線不明、無価値の土地が拡大。平均価格は今もバブル崩壊状態。金融不均衡の蓄積は是正すべき。世界詳細→https://t.co/PjeGUDXbBD pic.twitter.com/X8ScdQHCZY— アダム・スミス2世 (@AdamSmith2sei) April 6, 2019
自分は経済学者ではありませんから定量的な観測はしていません。
ざっくりと、感覚的にしかみていません。
ただ、すべてを金融緩和の問題だと切って捨てるには、不動産はあまりにも他の変数が大きすぎるのではないか、と感じています。
金融政策だけでは説明できない香港の地価急上昇
はい、香港の地価は暴騰しています。
けれど、香港が金融緩和を積極的にしている、というわけではありません。
むしろ香港はペッグ制に近い管理為替制度をとっていますから、引き締め気味になることも多い市場です。
ところが、住宅地の地価が暴騰している。
なぜでしょうか?
それは香港の開発用地があまりにも少ないからです。
山と海の間の狭い所に多くの人が住んでいます。
恒常的に住宅地が足りないんです。
だから暴騰しています。
決して金融政策でここまで暴騰しているのじゃあありません。
日本の住宅地価格が上がりにくいのは金融緩和不足が原因?
ここで、日本についてみていきましょう。
日本は本当に金融緩和不足で住宅地価格があがらないんでしょうか?
・・・自分はそうは思いません。
先にも書いた通り、金融緩和の効果がないとはいいません。
もちろんあります。
けれどそれだけじゃない。
金融緩和をしまくっても、たぶん局地的にバブリーな土地は上がると思いますが、総じて住宅地があがるということは考えにくい。
それは、供給力がありすぎるからです。
日本は、香港ほど狭い土地に大量の人が住んでいるわけじゃありません。
開発余地のある土地がわんさかあります。
以下にそれを示します。
山手線各駅まで1時間で通勤できる駅の範囲が広すぎる
https://twitter.com/chu_sotu/status/1114600191636541441
上の地図は、山手線各駅へ1時間で通勤できる駅の範囲を示したものです。
なお、一時間通勤可能な駅のリストは以下に纏めてあります。
⇒東京駅、新宿駅、渋谷駅など山手線各駅に1時間以内で通勤できる駅
とりあえずですが、東京に住んでいた人なら、この地図の黄色く塗った範囲がどれくらい遠いかわかるはずです。
実感的には、辺縁部は相当に田舎です。
田畑が多く広がり、荒地も広がる地域です。
その地域の人達か、鉄道マニアの人達でなければ聞いたこともないような駅が並びます。
そういう地域が、山手線各駅への1時間通勤圏内です。
もちろん、これはあくまでも山手線各駅までの時間であり、実際の通勤時間はドアツードアでプラス30分程度はみておくべきです。
しかし、それでも1時間半
まぁ、通えない距離じゃありません。
しかもこの塗った範囲のうち、つくばエキスプレスなど一部の路線以外は、片道1000円以内です。
非常に安いです。
個人的には、こうした格安で安心安全な公共交通機関の発達が、東京圏の不動産価格の低迷に一役買っているのではないか、というふうに思っています。
鉄道会社は適切な利潤を得ていない可能性~総資産利益率は3~5%程度
ここで、鉄道会社の利益水準についてみていきます。
まず第一に、東京圏の鉄道会社は総じて総資産利益率が低いです。
鉄道事業だけを切り出すことができないのでバス事業なども含めた交通事業全般でみるほかありませんが、
東急がおよそ3.75%、東武が4.4%、西武が5.1%(ただし沿線開発も含む、)、京王が3.2%
などでしかありません。
大まかにですが、海外の鉄道、高速道路運営などの公益企業であれば、だいたいROEは5%程度はあるものです。
もしこれらの私鉄企業が適切な利潤を得られるようにするならば、今よりもっと値上げする必要があるでしょう。(だいたい2割程度?)
東京圏の不動産価格がなかなか上昇しないわけ
個人的には、東京圏の不動産価格が上がりにくいわけは、単純にまだまだ割高なのだと思います。
不動産は利用価値からみて割安か割高かを判断するものだと思います。
とりあえず、上記のとおり、山手線一時間以内はやたら広く、そして賃貸で非常に大量の物件があります。
それらの家賃は非常に低いです。
ここもとやや値戻ししているとはいえ、とても安いです。
住宅を買えば固定資産税や修繕費がかかります。
それらを差し引きして計算してみると、だいたい物件を買って自己利用した場合、益回り換算で3%~4%程度で回るものがほとんどです。
つまりPERで言ったら25倍~33倍程度。
これは非常においしくない。
だったら株でPER10倍割れ銘柄持ちながら、配当金を得てそれを家賃に回した方が合理的ということになります。
他のアセットとの比較感からみても、不動産はおいしくないのが現実です。
東京圏の不動産価格を引き上げるためには?
つまり東京圏の不動産価格を大きく引き上げるために必要なのはなんでしょうか。
自分は以下の方法があると思います。
- 金融緩和で他のアセットの価格を暴騰させ、不動産の割安感を演出
- 中国のように強制的に再開発して土地を収用、手当をつけて住宅から追い出す
- 日銀が資産買い入れに住宅用地を追加、市場に再度登場しないように日銀が塩漬け
どれも現実的ではありませんし、やめとけと言われるに違いない案ばかりです。
唯一、2だけがマシかもしれませんが、それにしても反発は凄いと思います。
とりあえず、何もしないのが一番マシかもしれません。
現実として、不動産や家賃が安くても誰も困っていませんからね。
家賃が高くなって困るというのは世界中で聞かれますが、安くなって困ったなんていうのは、バブルに踊った人達くらいなものです。
根本のところから、発想を変える必要があるんだと思います。
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