サード・ポイント(Third Point)とダニエル・ローブ氏(Daniel Loeb)
今回は、大手アクティビストファンドのサード・ポイント(Third Point)と、その運営トップであるダニエル・ローブ氏(Daniel Loeb)についてみていきます。
今般、ダニエル・ローブ氏率いるサードポイントは、いったん利食いを入れたソニー株を再度買い直していることを表明したそうです。
これは、ソニーの映像・音楽事業の分社化などを再度求めていくことと同義であると思われます。
また2013年のソニー株への最初の投資時点と異なり、今回はスマホ事業なども大きく毀損している状態です。
今後、そうした部分に対しても強く経営改善を求めていく可能性が期待されます。
サード・ポイントを率いるダニエル・ローブ氏の経歴
ここで、アクティビストファンドのサードポイントを率いるダニエル・ローブ氏についてみていきましょう。
ダニエル・ローブ氏は1961年12月18日生まれの57歳
カリフォルニア大学バークレー校で学んだあと、コロンビア大学で経済学の学位取得
その後ウォーバーグピンカスで最初に働いたのち、ジェフリーズ、シティなどを渡り歩き、
1995年にサードポイントマネジメントを立ち上げます。
運用は順調だったとされ、非常に大きな資金があつまります。
当初はアクティビストではなく、普通にヘッジファンドとして行動していたようです。
つぎに、サードポイントマネジメントのこれまでの投資の歴史を見ていきましょう。
ダニエル・ローブ率いるサードポイントマネジメントと米ヤフー
サードポイントマネジメントの名を広く知らしめることになったのは、2012年のアメリカのYahoo!株をめぐる攻防でしょう。
サードポイントマネジメントはヤフー株を買い集め、大株主になるのですが、取締役の人選を巡って当時のヤフー経営陣と揉めてしまいます。
そこでサードポイントマネジメント側が採った手段がなんと・・・
当時のヤフー経営トップ、スコット・トンプソンCEOの学歴詐称スキャンダルを暴くというものでした(笑)
コンピュータサイエンスを専攻していると経歴にはあるのに、その事実がないことが明るみにされます。
これを受けてスコット・トンプソンCEOは辞任
晴れてサードポイントマネジメント側がダニエル・ローブ氏本人がヤフー取締役の椅子に座ることになりました。
そして、さらには新CEOとして元Googleのマリッサ・メイヤー氏を招へい。
非常に優秀な方で、ヤフー株を短期間で二倍以上に引き上げることに成功し、サードポイントマネジメントはそこで ヤフーに自社株買いをさせることでExitすることができました。
非常に華麗なアクティビストファンドのお手本のようなやり口でした。
ダニエル・ローブ率いるサードポイントマネジメントとハーバライフ
サードポイントマネジメントはアメリカのサプリメント・健康食品会社、ハーバライフを巡っても勝負に出ます。
ハーバライフは、いわゆるニュースキンやアムウェイと似たようなビジネスモデルをとっており、Wikipediaによると、日本では連鎖販売取引業者として定義しているのだそうです。
とりあえず、そんなわけでして、この会社のやり口はマルチ商法だとして罵るアクティビストファンドが現れました。
ビル・アックマン氏のファンドです。
これに対抗して買いで応戦したのが、サードポイントマネジメントやソロスファンド、アッカーマンなどでした。
この件でビル・アックマンは大きく損を出したと思われます。
具体的なところはわかりませんが、一番おいしいところをサードポイントマネジメントはとっていったように、個人的にはみています。
ダニエル・ローブ率いるサードポイントマネジメントとネスレ
世界最大の食品メーカーネスレですが、近年、食品事業のコモディティ化の進展でかつてほどの利益成長力をキープできない状態になっています。
そこで多角化をすすめるつもりなのでしょうか、化粧品のロレアルなどにも投資を広げているのですが、これがサードポイントマネジメントの目に留まりました。
基本的に、事業はシンプルであればあるほど投資家にとっては好ましく、バリュエーション評価も高くなりがちです。
一方で、事業が多岐にわたるような企業は低く見積もられがちです。
こうしたものをコングロマリットディスカウントといいますが、サードポイントマネジメントもこの原則に従い、ネスレにロレアル株の売却を求めて活動します。
まだ完全には決着がついていませんが、どうやら売却の準備に入っている模様です。(コルゲートなどが応札見通しとのこと)
今後はこの売却資金を使って自社株買いを求めていくことでしょう。
ダニエル・ローブ率いるサードポイントマネジメントとファナック
なお、サードポイントマネジメントは日本企業にも積極的に関与してきています。
日本株はとてもバリュエーションが低いです。
その理由は、企業統治が酷く、経営者の能力が劣っているのが大きな理由です。
ファナックもそういう会社であり、本来必要な経営者としての能力が稲葉氏にはありませんでした。
技術はわかっても、経営の何たるかがわかっていない。
会社というのは、つまるところ法的には株主のためのハコでしかない、という当たり前の解釈が理解できていませんでしたから、株主還元も非常に低い会社でした。
IR活動にも積極的でなく、何をしているのか、上場している意味すらわからないような会社でした。
こういうダメ経営者のケツを叩いて背筋を正させたのが、ダニエル・ローブ氏率いるサードポイントマネジメントです。
ダニエル・ローブ率いるサードポイントマネジメントはセブン&アイにも介入
なお、サードポイントマネジメントはセブン&アイホールディングスのお家騒動にも一枚かんでいるそうです。
各種報道からすると、前経営トップの鈴木敏文は自分の息子を経営上層部につけようと画策していたとのこと。
これに対して賛同できない、ちゃんと能力のある人物を経営トップにつけるべき、といったような内容の書状を鈴木のもとに送ったのがサードポイントマネジメントだったそうです。
こうした甲斐もあり、鈴木敏文はセブン&アイを退任することになり、親子での経営権移譲というのはなくなりました。
ダニエル・ローブ率いるサードポイントマネジメントはソニーに映画部門売却を要求
サードポイントマネジメントは以前、2013年にもソニー株に投資をしています。
この時は、映画部門の売却を強く求めました。
これを現経営陣は拒否
映画部門は立て直せることをサードポイントマネジメント側に説明します。
代わりに、赤字が定着していた電池やデバイス事業などでリストラを実施。
ソニーの経営状態はアクティビストファンドの監視のもとで大きく改善
株価も二倍にあがったところで、サードポイントマネジメントは利食いを入れて去ります。
しかしサードポイントマネジメントの指摘は、個人的にも正しかったと思います。
映画事業は赤字と黒字をいったりきたいりしている状況にかわりがありません。
サードポイントマネジメントは今回、再度ソニー株を取得しているとのこと。
たぶん、また同様の要求をつきつけてくるものと思います。
でもそれは愛の鞭です。
よろこんで、ご褒美ッフォー\(^o^)/
と受け入れる態度が、いまソニーには求められていると思います。
以上です。