ナイジェリア、ムハンマド・ブハリ政権がグッドラック・ジョナサン政権時の汚職摘発拡大~エニやシェル、JPモルガンなどにも波及~
ナイジェリアのムハンマド・ブハリ政権がグッドラック・ジョナサン政権時の汚職摘発を拡大しています
これは、石油開発権をめぐる取引に関するもの。
2011年、ロイヤルダッチシェルとイタリアのエニ(Eni)は、ナイジェリア企業マラブ・オイル&ガス(Malabu)とギニア湾の石油鉱区「OPL-245」に関する利害調整を目指します。
シェル、エニ、マラブはそれぞれこのOPL-245権益をめぐり2001年から揉めており、
マラブからシェルが権益取得 ⇒ ナイジェリア政府がマラブ事業免許取り消し ⇒ シェルに全権益譲渡 ⇒ マラブが免許回復、エニから資本参加 ⇒ シェルが不服申し立て
という経緯をたどっており、完全に政治マターになってゴチャゴチャになっていました。
この政治的調整のために、シェルとエニは当時のグッドラック・ジョナサン政権の石油相を務めたダン・エテテ氏とマラブに対し、油田開発権として13億ドルを送金したとのことです。
しかし、このカネが国庫に入らなかった。
本来ならナイジェリアの国庫が潤うはずの開発なのに、国庫は全然潤わない。
当時、消えた資金と話題になりました。
どうやら、その資金はダン・エテテ氏によって政治家たち・・・たぶんグッドラック・ジョナサン政権の高官たちにばら撒かれたもよう・・・
送金に関わったJPモルガンも含め、この三社にはナイジェリアの司法当局のみならず、各本拠地の国の捜査も動いているようです。
ムハンマド・ブハリ政権によって暴かれるグッドラック・ジョナサン政権時の腐敗
なお、この権益売買をめぐる案件に関して、シェルやエニは提供した資金が権利関係の調整に使われる類の資金と認識してた可能性が指摘されています。
つまりは賄賂にあたる性質のものであったと認識していた可能性があるということです。
現在のムハンマド・ブハリ政権はグッドラック・ジョナサン政権時の腐敗を暴くことに力を入れており、海外に不当に流れたナイジェリア国の資産を回収する方針を示しています。
ムハンマド・ブハリ氏は、北部のイスラム教徒と軍部からの支持を地盤にしたムスリム・軍部大統領です。
ブハリ氏自身は石油信託基金、石油・天然資源相、国営石油公社総裁などを歴任していますが、かなり堅物で知られ、財政も緊縮路線を敷いたりしてきて、それで経済が落ち込んだりもした人です。
これに対して、グッドラック・ジョナサンは基本的に南部地盤の、欧米に近い、エネルギー産業や金融にも明るいクリスチャンの大統領です。
ブハリ氏とグッドラック・ジョナサンとは全く正反対と言っていい人物で、水と油。
グッドラックはハッキリ言って政治家としては無能で、前大統領の死を受けて就任しただけの人です。
汚職と金満政治だけが後に残りました。
ムハンマド・ブハリ政権はこれを改善しようとしていますが、経済成長率の低迷に悩んでいます。
どちらもどちらで政治家として難点がある・・・というのがナイジェリアの問題点です。
とりあえず、このナイジェリアの前政権の汚職問題は相当に長引きそうにみえます。
また、こういった動きはマレーシアの1MDB問題など、他国でも似たようなものがあります。
新興国が力をつけるにつれ、以前の政権において行われた取引までさかのぼって外国企業がターゲットにされる事案も増えていきそうです。
日本でもシーメンス事件やロッキード事件などがありましたが、それと似たような構図ですね。
とりあえず、日本企業の方々もくれぐれもご注意ください。
以上です。