神威・太湖之光の開発元、無錫江南計算技術研究所(National Supercomputing Center in Wuxi)への制裁から透けてみえるトランプ政権の本音

神威・太湖之光の開発元、無錫江南計算技術研究所(National Supercomputing Center in Wuxi)への制裁から透けてみえるトランプ政権の本音

スパコン世界一になった無錫江南計算技術研究所の神威・太湖之光

神威・太湖之光(Sunway TaihuLight)というスーパーコンピュータがあります。

このスーパーコンピュータは中国が初めて世界ランキングで一位をとったスパコンです。

(2016年のInternational Supercomputer Conferenceにて)

しかも、それまで中国が開発していた高性能スパコンではインテル製CPUなどを採用していましたが、

この神威・太湖之光では純国産の申威シリーズのCPUを採用。

もちろんバス周りやI/O、ネットワークなどは国産ではありませんが、ある意味で中国の現在の到達点を示すものとなりました。

2019年6月のスパコンランキングでも未だに世界3位となっており、その性能の高さは(ソフトウェア面を含め)折り紙付きとなっています。

 

神威・太湖之光の開発元 無錫江南計算技術研究所に米政府が制裁

この神威・太湖之光の基本的な設計コンセプトとしては、一昔前のメモリ周りのアーキテクチャを利用して、そのぶん電力消費量を削減。

たくさんのCPUで処理を行うメニーコア思想を突き詰めたようなシステムと言われています。

ピーク性能は125 PFLOPS、Linpackで105 PFLOPSという2016年においてはほぼ唯一と言える100PFLOPSスパコンでした。

 

このスパコンの開発をしたのが、無錫江南計算技術研究所(National Supercomputing Center in Wuxi)という機関です。

先日、アメリカ政府はこの無錫江南計算技術研究所をエンティティリスト入りさせると公表しました。

端的に言えば、

「米国企業に対して無錫江南計算技術研究所と取引するな」

ということです。

先ほども書きましたが、神威・太湖之光のCPU「SW26010」は中国が独自に開発しました。

しかし、高速なメモリ環境、バス周り、ネットワーク周りなどはどうしても米国製品が中心になっています。

(たとえば先日Nvidiaが買収したメラノックスや、Intelやマイクロンの3次元クロスポイントメモリなどは重要だと思われます。)

マイクロンがインテルからIMフラッシュテクノロジーズを買収へ~3D

エヌビディア(Nvidia)がメラノックス・テクノロジーズ(Mellanox

そういった製品を中国のスパコン開発では使わせない、という態度をアメリカが採り始めています。

 

 

無錫江南計算技術研究所と曙光信息産業(中科曙光/Sugon)はみせしめか

米政府は、無錫江南計算技術研究所と曙光信息産業(中科曙光/Sugon)の関連企業に対して取引禁止措置をとりました。

米政府、無錫江南計算技術計算所と曙光信息産業(中科曙光/Sugon)の関連会社への禁輸措置を発動

【603019】曙光信息産業(中科曙光/Sugon/Dawning Information Industry)の業績・決算と株価

しかし、他の記事でも書きましたが、今回の両社のエンティティリスト登録は、両社だけでなく他の企業への影響も大きなものとなっています。

たとえばそれは、スパコン採用数世界ナンバーワンのレノボです。

もしレノボに禁輸措置がとられたなら、世界のパソコン向け製品の市場も驚天動地となるでしょう。(レノボはスパコンだけでなくパソコンでも世界シェアナンバーワンです。)

そうしたリスクを感じながら、今後多くの企業は中国企業と取引を続けることになります。

アメリカ政府(トランプ政権)の本音としては、中国企業とは取引するなと米国企業に言いたいわけです。

 

中国にスパコンを作らせないし、スパコンの技術開発もさせない

中国企業との取引もやめさせて、中国を孤立させたい

それがトランプ政権の本音でしょう。

それはスパコンだけでなく、あらゆる産業において言えるのだと思います。

 

ただ、経済への悪影響もありますから、そこらへんを眺めながら、徐々に徐々にやっていく、そんな感じだと思います。

特にトランプ大統領は株価にいたく御執心ですから、株価が下がれば制裁も緩みます。

この繰り返しで、米国企業に中国との取引を諦めさせる、それが米政権の作戦だと思います。

以上。