住友林業が地上70階建ての木造高層ビル建築へ
住友林業、木造高層ビルを建築へ
大手住宅メーカーの住友林業が、木造の高層ビルを建築するそうです。
予定では、高さ350m、地上70階建てにも及ぶとのこと。
竣工時期は2040年頃を予定。
このプロジェクトのために茨城県つくば市に研究所をつくり、火災に強い建材や構造の研究を進めるとのことです。
これまでは11階建て以上の建築物の躯体に木質建材を利用したことはなく、まったく新たなチャレンジになるということです。
この報道を受け、twitterなどでは安全性を懸念する声などがあがっています。
ただ個人的には、安全性もさることながら、経済的側面について疑問を感じています。
住友林業による木造高層ビル建築プロジェクトは株主価値向上に繋がるのか?
この木造高層ビル建築プロジェクトですが、新しい建材、新しい工法を利用するために、かかるコストは軽く見積もっても2倍以上かかるとのことです。
それを負担するのは誰なのかといえば、株主です。
同社が自己満プロジェクトを推し進めることで、リスクを背負うのは株主です。
もちろん、このリスクに見合う経済的メリットが大きいのならわかりますが、個人的にはどうにも理解ができません。
果たしてどういった議論が取締役会で行われてきたのか、大きなリスクをとるからには、ガバナンス上、そこを開示する必要があるのではないかと思います。
「国内林業活性化のために国から依頼されて研究しはじめた」とかそんなことじゃないといいんですが。
とりあえず、「企業イメージ向上」「自社の林業資源の有効活用」「研究者の意欲向上」などにはつながるかもしれません。
ただそれが、2040年までにかかる研究開発コストとビル建築コスト、およびそれを現在価値に割り戻した価値と比較してどれだけ大きいのか?(もしくは小さいのか)
その期間に株主に現金配当や自社株買いで還元した場合と比べて、どれだけ株主価値向上に繋がるのか?
そのあたりのしっかりした開示をしていくことが、日本政府の推し進める企業統治指針の観点からも重要ではないかと思われます。
もしそれをしないなら、住友林業の経営陣はJR東海の経営陣と同レベルということ。
JR東海も資本コストに見合わないリニア投資をやって株主価値を毀損しましたが、それと同じことになると思います。
住友林業の高層ビル建築計画を株主は許すのか?
とりあえず、日本企業の経営者たちは、ちょっとカネに余裕ができると自己満プロジェクトや無駄な投資をしがちです。
住友林業に限りませんが、こうした資本の無駄遣いを許す株主の甘さが、日本企業の投資効率・資本効率の悪化を起こし、それが日本株全体のバリュエーションの低下に繋がっていると、自分は思います。
また、企業ひとつひとつの資本効率の低下が、社会全体の生産性を押し下げ、日本の低成長に繋がっているとも思っています。
株主はもっとしっかりと投資先企業に対して目を向けた方がいいと思います。
駄目な経営をやっていたら取締役の再任に反対し、株主還元の要求を声高にした方がいいです。
もっというと、ダメな経営かいい経営かわからないなら、議決権行使のハガキに全部×つけて返したら良いと思います。
行使されない議決権は賛成票として扱われるのですから、経営陣の好き放題を許すことに繋がってしまいます。
ならば、ぜんぶ×つけて返すくらいしたらいい。
よほど株主への説明が丁寧で、株主価値向上に繋がる経営をしている場合だけ、〇つけて返したら良いと思います。
とりあえず、以上です。