台湾問題への態度表明が招く国難

台湾問題への態度表明が招く国難

 

台湾問題への口先介入が一線を越えてきた

ここ最近、台湾問題に口先介入する政府閣僚が増えてきています。

 

先日は中山泰秀防衛副大臣。

https://www.sankei.com/article/20210630-4ZLSIDARIFMODOHPPR4PCQRAUU/

 

そして今週は麻生太郎副総理。

https://www.sankei.com/article/20210705-2ZWMRT2N3ZP5PKCZUMEXP2NOKA/

 

中山防衛副大臣の発言の際には、

「政府見解ではなく個人的見解が述べられたもの」

と岸防衛相が庇いましたが、今回は副総理の発言であり、庇いきれるものではありません。

たぶん、外交官たちが裏方で中国側を宥めようとしていた矢先の麻生太郎発言でしょう。

わざとやっている、と思います。

麻生太郎は、よっぽど中国側を侮辱、挑発したいのでしょう。

 

自分は、台湾問題に日本が深入りするのは、非常に危険だと思います。

 

歴史的にみれば、台湾及び周辺の島々が中国清朝の領土だったことは疑いようがないでしょう。

第二次世界大戦後に国民党が逃げ込んで居座っていますが、それは、明治維新後の函館新政府みたいなものにすぎません。

その函館新政府を、アメリカがケツ持ちしてやっている状態にすぎません。

台湾は、殖産興業に成功して世界的に一定のポジションを得て、独立国のように振る舞っていますが、中国側は独立国と見做していませんし、国際的にも独立国と見做されていません。

 

中国側からみれば、統一しようと考えるのが当然でしょうし、むしろ、それを妨げようとする連中を「アヘン戦争後の欧米列強支配を継続せんとする輩」と見做すのが当然です。

中国のことですから、もちろん敵に対しては容赦しないでしょう。

日本がいま、台湾問題に介入することは、短期的にも、超長期的に見ても、得策であるとは思えません。

 

 

台湾島は歴史的にみて中国領

台湾は、歴史的に見れば中国領であると見做すのが適当だと思います。

もともと原住民が住んでいたところにオランダ東インド会社が拠点を作り、それを鄭成功が落として鄭氏政権を樹立。

鄭氏政権が滅びたのち、清朝が領有。

日清戦争・下関条約締結後に日本が支配したのち、太平洋戦争終結とともに帰属先が宙ぶらりんになり、

そこに国共内戦で負け込んだ中国国民党が逃げ込んだ・・・というのが流れだと自分は考えています。

そして、アメリカも国際社会も、アルバニア決議と上海コミュニケ前後の一連の流れで、そのあたりを踏まえた決断をしていたはずです。

 

この経緯に基づくならば、台湾は清の後継国としての中国領であると見做されるのが筋でしょう。

中国国民党であるか、中国共産党であるかは別として、中国領であることには違いがない。

「帰属問題が未定だ」という論調も一部にありますが、それは間違いなく戦争を引き起こします。

(そもそもその論調だと台湾の主権も認められなくなります。)

 

また、「住民による民主的な決断に任せるべきだ」という主張もありますが、それならば、スペインのバスク地方も、イギリスのスコットランドも、インドのカシミール地方も、独立させたらいいのです(他にもいっぱいありますが)。

将来的には沖縄が独立したがるかもしれませんが、日本はそれを認めるのでしょうか。

もしかしたら、かなり未来にはアメリカで一部の州が離脱を表明することがあるかもしれませんが、それを米政府は平和的に認めるのでしょうか。

 

西側の国からの離脱は許さず、中国ロシアからの地域独立を促すというのであれば、それは白人お得意のダブスタ。

そのダブスタの背後には、もちろん西側諸国からみた利害関係があります。

英国商人がアヘンを中国に持ち込み始めた頃から始まる一連の政策が、今も続いていると見做すのが適当でしょう。

 

中国は独裁国家なので台湾は独立すべき?

「中国は独裁国家だから、台湾は西側諸国の支援を受けて独立国家として存続すべき」

という意見があります。

 

もちろん、中国と日米欧、台湾などでは政治形態が異なることは事実です。

しかし、民主的かどうかということと、領土問題をまぜこぜにして語ることに筋が通っているようにはみえません。

民主的かどうかというのは、ある意味でイデオロギー的な対立であり、それこそ歴史的にみればカトリックかプロテスタントか、で争っているのと大差ない。

どちらのイデオロギーが正しいかというのと、領土問題は切り離して考えるのが筋だと思います。

こと領土問題という点においては、中国側に理も義もあるように、自分にはみえます。

 

台湾は中国に編入させるしかないのではないか

歴史的経緯を踏まえるなら、中国国民が台湾を自国領と見做すのは理屈が通っています。

むしろ、そう考えないのは理屈が通らない。

理屈が通っているのですから、その理屈を中国側が棄てるはずがない。

 

日本政府の閣僚が、理屈を捻じ曲げて「台湾を守れ」と煽ることは、中国側の感情を逆なでする行為だと、自分は思います。

これをずっと続けていたら、間違いなく相互の国民にわだかまりを生みます。

経済的にも摩擦が増えることでしょう。

もちろん、ゆくゆくは軍事的な衝突にも発展しかねない。

 

局地戦で終わると思っている人も多いかもしれない。

しかし、第一次世界大戦がそうであったように、短期的・局地的と当初考えられていた戦争が、連鎖的に世界大戦に繋がる可能性すらある。

その時には間違いなく核戦争に発展するはず。

米中ともにStrategic Depthが非常に大きいわけで、戦略拠点だけを狙った攻撃では短期決着しない。

核の直撃だけでなく、高高度核爆発攻撃なども多用され、電気に依存した現代文明が大きく破壊され、内燃機関のありがたさに再度気づく状況にすらなりかねない。

餓死者が数億単位で出てもおかしくありません。

参戦したすべての国の人々が、そういう状況になる可能性が高い。

 

国際社会は、この状況をどうやって回避するべきなのか?

 

自分は、

「国際社会が台湾問題・両岸問題を平和的に解決したいのならば、台湾を中国領に戻すしか方法がないのではないか」

と考えています。

もちろん、今すぐやるというのは無理すぎる。

100年後、200年後、そういうスパンで折り合いをつけるのが現実的ではないかと思います。

 

そうした場合、台湾にいま住んでいる独立派の人々は納得しないと思いますので、なんらかの飴が必要になるでしょう。

全員を説得はできないでしょうが、一部の方には日本やアメリカへの移民権を渡すなど、経済的なメリットを与えてみるのも一つの考えだと思います。

いくら独立を騒いだところで、第三次世界大戦で最前線になるとなれば、逃げようとするのが利口な考えです。

米中の軍事的な緊張が高まれば、こうした選択肢もいずれ現実化するのではないかと、自分は眺めています。

 

 

台湾問題について、あとがき

なお、ここでひとつ言っておきたいのですが、「台湾を中国に返上すべき」と自分が考えているわけではありません。

「平和的に解決したいのならば、そうせざるを得ない状況がくるのではないか」と眺めているだけです。

自分には、どちらでもいいです。

どうせ宇宙規模で考えたらどうでもいいことです。

 

なお、台湾問題を平和的に解決する気なんてさらさらない連中もいますので、そうした連中は他の軍事的な方策を探ったら良いと思います。

「中国と戦争やったら米国が圧勝できて、日本が無傷でいられる…中国を荒廃させて、再び立ち上がってきたら力で押さえつければいい。台湾問題に対する中国国民の不満は武力で押さえつけたらいい…」

そんなふうに思っている方達は、そういう主張をしたらいいでしょう。

およそ建設的な意見とは思えませんし、非常に邪悪な印象を受けますが、そういうイジメっ子体質の方には何を言っても仕方ないと思います。

勝手に主張していたらいい。

 

しかし、一般の人々は、そうした連中の言説に惑わされない方がいいと思います。

相手国を独裁国家とレッテル貼りして公然と非難し、自国ナショナリズムを煽って平和を乱し、その対立でカネを稼ごうとする火遊びマニア・・・

そんな連中の言うことを真に受けていたら、損をするのは市井の人々です。

 

小説と異なり、歴史には固定された主人公がいません。

幾つもの視点があり、どれが正しいというわけでもなく、それぞれに理屈と利害がある。

理屈と利害が一致する場合もあれば、理屈と利害が一致しない場合もある。

そうした場合、理屈を捻じ曲げて利害にあわせようとするのが、アメリカの十八番です。

これにどこまで付き合うべきか。

第三次世界大戦の前線に置かれる日本の人々は、よくよく考えた方が良いと思います。

 

以上です。