2018年4月国際収支速報発表 サービス収支の赤字が大幅拡大です
金額 | 前年同月比 | ||||
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貿易・サービス収支 | 723億円 | ▲1,996億円 | (黒字幅縮小) | ||
貿易収支 | 5,738億円 | +212億円 | (黒字幅拡大) | ||
輸出 | 6兆6,321億円 | +4,556億円 | (+7.4%増加) | ||
輸入 | 6兆 583億円 | +4,343億円 | (+7.7%増加) | ||
サービス収支 | ▲5,015億円 | ▲2,208億円 | (赤字幅拡大) | ||
第一次所得収支 | 1兆9,394億円 | +787億円 | (黒字幅拡大) | ||
第二次所得収支 | ▲1,666億円 | ▲144億円 | (赤字幅拡大) | ||
経常収支 | 1兆8,451億円 | ▲1,353億円 | (黒字幅縮小) |
https://www.mof.go.jp/international_policy/reference/balance_of_payments/preliminary/pg201804.htm
今回は、4月の経常収支を細かく語りたいわけではないので端折りますが、とりあえず、
前年同月比でみてサービス収支の赤字が大きく拡大したのが特徴的
なのはおわかりいただけると思います。
とりあえず、このサービス収支の内訳をみてみましょう。
元データは以下から取得可能です。
グラフ化すると以下のようになります。
かつて赤字だった旅行の収支が2014年ころから黒字定着してきたことがわかります。
(実質実効為替レートでみるとめちゃめちゃ円安方向だから当然という面はありますが、それについてはまたの機会にします)
旅行は黒字定着してきましたが、しかし同時に、その他サービス収支が大幅に赤字になることが増えてきました。それも2006年頃から定期的にです。これは何でしょうか?
とりあえず、「その他サービス収支」の内訳をみてみましょう。
先程のファイルをその他サービス収支の部分のみグラフ化すると以下のようになります。
こうやってみると、知的財産権等使用料は黒字基調をキープしていることがわかります。海外に子会社を作って生産活動を行い、そこからのパテント収入を得ている日本企業が多いことが反映されています。日本企業の海外進出が活発化した2012年以降にこの傾向が強まっています。
と同時に、2006年頃より「その他業務サービス」において、定期的に大きな赤字が出ていることがわかります。
直近2018年4月に至っては、とうとう5857億円という巨額の「その他業務サービス」赤字を出すことになっています。
これはいったいどうしたことでしょうか?
とりあえず、その他業務サービスに何が含まれるのかを確認してみましょう。
以下で項目別計上方法はわかります。
これの7ページ目によると
1.A.b.3.8 その他業務サービス 上記以外の様々な事業者向けサービスの取引を計上します。この項目は、さ らに「研究開発サービス」、「専門・経営コンサルティングサービス」および 「技術・貿易関連・その他業務サービス」に区分します。 1.A.b.3.8.1 研究開発サービス 研究開発(基礎研究、応用研究、新製品開発等)に係るサービス取引のほか、 研究開発の成果である産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権)の売買を計 上します。 1.A.b.3.8.2 専門・経営コンサルティングサービス 法務、会計・経営コンサルティング、広報、広告・市場調査に係るサービス 取引を計上します。 1.A.b.3.8.3 技術・貿易関連・その他業務サービス 建築、工学等の技術サービス、農業、鉱業サービス、オペレーショナルリー スサービス、貿易関連サービス、その他の専門業務サービスの取引を計上しま す。
と書かれています。
もうひとつ、地域別国際収支で「その他業務サービス収支」をみることもできます。
簡単にまとめてしまうと、
「その他業務サービス収支における赤字を地域別にみてみると、米国に対する赤字が全世界に対する赤字に占める比率は約3/5」
ということがわかります。
これは、多くの企業がタックスヘイブンを利用していることから考えても、随分と大きな数字です。まじめに米国に還元しているだけでも3/5もの金額になっているんですから、その他の国に置いてある分を含めるともっと大きな金額が流れているはずです。
というわけで、アメリカ企業で、なおかつ巨額の黒字を、定期的に本国に持って行っている企業・・・もうおわかりですね・・・
その他業務サービス収支の赤字の原因って、GoogleやFacebook、Twitterとかじゃありませんか?
もう一度、さきほどの「その他業務サービス」の内容をみてみます。
二段目に注目です。
1.A.b.3.8.1 研究開発サービス 研究開発(基礎研究、応用研究、新製品開発等)に係るサービス取引のほか、 研究開発の成果である産業財産権(特許権、実用新案権、意匠権)の売買を計 上します。 1.A.b.3.8.2 専門・経営コンサルティングサービス 法務、会計・経営コンサルティング、広報、広告・市場調査に係るサービス 取引を計上します。 1.A.b.3.8.3 技術・貿易関連・その他業務サービス 建築、工学等の技術サービス、農業、鉱業サービス、オペレーショナルリー スサービス、貿易関連サービス、その他の専門業務サービスの取引を計上しま す。
法務、会計、経営コンサルも日本企業は弱いですが、通常これらは定期的なフローではありません。
また、農業、鉱業、建築、工学の技術サービスなどであれば日本企業も強いはずですし、これも定期的なフローにはなりえません。
研究開発はもしかしたらありうるかなと思いますが(最近は海外の研究機関に頼る例も増えていますので)、それにしてもこれだけ巨額にはならないでしょう。
これだけ巨額のフローが定期的に発生していることからすると、大手ネット広告メディアしか考えられません。
二段目の「広報、広告・市場調査に係るサービス取引」です。
ちょうどGoogleやFacebookなどアメリカのネット企業が大きくなってきた流れとともに、このマイナスフローが拡大しています。
たぶん、おいらの見方は正しいと思います。日経新聞も
経常黒字、4月は6.8%減 ネット広告の支払い増 :日本経済新聞
と書いています。
このネット広告の支払い増が、日本の経常収支の伸びを抑える働きをし始めています。
それにしても凄いサービス収支の赤字です。
FAANGってやっぱすげぇなぁ
って思います。
つい20年前には存在すらしてなくて、つい10年前にはまだまだ小さかった企業が、今では大きなカネを稼ぐ企業になっている・・・アメリカ経済のダイナミズムって本当に凄いなぁって思います。
それと同時に、この波に乗れなかった日本や欧州の当局者たちが
トランプ関税へやり返すなら、GoogleやFacebookをターゲットにしてやれ・・・
と考えだしても、不思議ではないんですよね。
いま起きているのは、たぶんそういうことなんだと思います。