日米新貿易協議(FFR)終了~自動車関税回避なるか~

ライトハイザー米通商代表(USTR)との日米新通商協議(FFR)が終了~実質的な協議は持ち越しへ~

 

 

8月9日から10日まで、米ワシントンで行われていた日米新通商協議(FFR)が終了

茂木敏充経済財政再生相とライトハイザー米通商代表部(USTR)代表による今回の会合では、日本側の目的どおり時間稼ぎに成功しました。

日米新通商協議、初回は「入り口」で終了 トランプ政権、中間選挙にらみ …

 

次回の会合は9月を予定しているとのことです。

とりあえず、自民党総裁選を前にして農業票を失いたくない安倍政権としては、この「何も決まらなかった」という結果で御の字です。

ただ、この「時間稼ぎ」戦略はアメリカ側はすでによく理解しています。

アメリカは11月に中間選挙を控えますので成果を求めてくるでしょう。

間違いなく、次からは本格的なツメの交渉になると思われます。

というわけで、今回の件もふくめて、日米新通商協議(FFR)の双方の目的について、纏めてみたいと思います。

 


 

日米新通商協議(FFR)とは?

 

2018年4月17日、18日に米国ワシントンで開かれたトランプ大統領と安倍首相の日米首脳会談の中で、トランプ大統領は二国間の自由貿易協定FTA締結への意気込みをみせました。

これに対して安倍首相は、ペンス副大統領と麻生太郎副総理・財務相との間で進む既存の日米経済対話とは別の通商対話を提案。(ようするに時間稼ぎです。)

日本側からは茂木敏充経済財政・再生相、米国側からはライトハイザー米通商代表部(USTR)代表が出席するかたちで行われる、新しい通商協議を提案しました。

その結果行われたのが8月9、10の日程で行われた日米新通商協議/日米新貿易協議(FFR)です。

 

ちなみにFFRとは、自由(Free)、公正(Fair)、相互(Reciprocal)の略だそうです。

このFFRという語は日本側のみが利用している用語であり、米国側はまったく利用していないと言われています。

日本側は、自由、公正、相互的な交渉をしたがっているようですが、アメリカ側は現状の貿易赤字の解消を主眼において日米FTAの実現を目指している・・・このあたりにボタンの掛け違いが発生しています。

なお、この貿易協議ですが、日本側から求めたものでない以上、アメリカ側からの要求に対して日本側は防戦一方になるものと思われます。

 

とりあえず、米国側の要求としては単純です。

日米FTA締結が一番の目的です。

もちろん、これをそのまま飲めばアメリカからの農産品が日本に雪崩を打ったように流れ込んできます。

日本側としては(というより自民党としては)農業団体の票を失いますから、できるかぎりこれは避けたい。

日本側としてはアメリカをTPPに復帰させたいようですが、それを幾ら言ってもどうせトランプ大統領は聞く耳を持ちません。

ぶっちゃけ、日本側にとってはアメリカといま交渉をするメリットは一切ない。だから時間稼ぎしてのらりくらりと逃げようとしていました。

 

そんな矢先の5月23日にトランプ大統領が脅し目的で言い出したのが、通商拡大法232条による輸入自動車および自動車部品への追加関税の導入です。

FTA交渉を真面目にやらないなら、日本から輸入している自動車に高関税をかけるぞ、ということです。

 

なお、この関税(25%)が実際に導入された場合、各調査機関によっていろいろと試算に幅はあるのですが、日本からの直接輸出分だけで約1兆円、第三国(メキシコなど)からの輸出で約1兆円、さらに自動車部品で2000億円超・・・つまり、計2兆2000億円のコスト負担になると試算されているようです。(大和総研など)

 

当然、こんな多額の関税が輸出自動車にかかってきたなら日本車の市場競争力は落ちます。日本としてはこれは絶対に避けたい。

かといって、選挙のことを考えると農業票を失うわけにもいかない・・・そういうジレンマに陥っているわけです。

 

 

これに対して、日本政府は以下の提案をして逃げたいと思っているそうです。

  1. 液化天然ガスLNGの米国からの輸入拡大
  2. 米国のインフラに投資する公的ファンドの創設
  3. 防衛装備品の輸入拡大

本気でこんなアマい提案で逃げ切れると思っているなら甘いと思います・・・特に1,2は日本側のメリットばかりが強調される内容です。

3はまだ筋がいいかなと思います。以前も当ブログで書いた通り、日本の防衛費対GDP比は低すぎます。

対中国を念頭にアメリカからSM3(RIM-161スタンダード・ミサイル3/RIM-161 Standard Missile 3)などを大量に購入するという手はあります。

そして、そのSM3で米国へ飛ぶミサイルも撃ち落とすと約束すれば、トランプ大統領はよろこぶでしょう。しかしSM3にしてもなんでもそうですが、それらを運用するためには自衛隊の組織を拡大する必要があり、予算的にもいろいろ厳しそうに思います。少なくとも介護や医療を削る必要が出てくるので、これはまた別の票を失いかねません。

 

とにかく、自民党にとってアメリカからのFTA交渉入り要求は非常に厳しいものがあります。

とりあえずは9月まで先延ばしできましたが、まだまだ先はわかりません。自動車株にも受難の時が続きます。。。