トルコリラが大暴落~BBVA(ビルバオ・ビスカヤ・アルヘンタリア銀行)、に影響必至か
前回記事でも書いた通り、先週、トルコリラが大暴落しました。
トルコリラ/米ドル 5分足
トルコリラ/米ドル 日足
これはトランプ大統領によるツイートをキッカケとしたものです・・・が、そもそもトルコ自体が経済運営にミスっていたことが背景にあります。
見ていきましょう。
トルコのGDP成長率です
source: tradingeconomics.com
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トルコはここ数年、非常に高い経済成長を遂げてきたことがわかります。この数字だけをみるなら、まったく怖がる必要がなさそうです。
トルコの対外債務残高です
source: tradingeconomics.com
凄い勢いでのびてますね。GDPの成長が対外債務に依存していることがよくわかります。
トルコの民間債務の対GDP比です
source: tradingeconomics.com
こちらも凄い勢いで伸びていますね。
トルコ政府債務の対GDP比は減っています
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いっぽうで、トルコ政府の債務比率は落ちています。トルコの対外債務のうちの7割は民間部門です。
トルコのニュースをみていると、エルドアン大統領が主導してインフラ工事を大量にやっている・・・みたいなものが多くみられると思います。
たしかに大型インフラ工事はやっています。
ボスポラス海峡にトンネル作ったり、橋作ったり、大きな国際空港を作ったりしています。
でも、対GDP比でみると実際には政府債務は増えていません。
つまり、何が言いたいかというと、トルコ経済は政府による財政支出主導ではなく、民間非金融部門が借金しまくって高成長にしているということ。
あまりにも好景気でイケイケすぎて、みんな借金してレバレッジかけてまわしているということ。
本来なら、この過熱しすぎた状態を冷やす必要があるんでしょうが、そこはエルドアン大統領、、、経済の素人です。
まぁ俺も経済の素人なんでアレコレいえた立場にないんですが、それにしてもちょっとセオリーと違ったことをやってくれます。
トルコ中銀が利上げしたがっているのにエルドアン大統領がやめさせようとしたりとか
そもそも大統領が中銀に介入するという時点でご法度な気がするのですが、そういうことをするのがエルドアン大統領です。
わざわざ冷やそうとしている最中にインフラへの支出を増やそうとしたりとか。
アルバイラク財務相がG20で演説 「トルコの経済成長は、力強く速度を上げ …
また、エルドアン大統領はシムシェキ経済担当大臣が辞めたあとのポストに、娘婿のアルバイラク氏を据えました。
トルコのエルドアン大統領、投資家の不安あおる-娘婿を財務相に起用 …
財務相としての手腕が実際どうなのかは詳しくありませんので何とも申しません。
まぁそもそも、日本も一応、安倍晋三総理と麻生太郎財務相は親戚同士なのでトルコのことをアレコレ言えた義理じゃないんです・・・
とりあえず、こういった一連のやり方が外資に本当に嫌気されていると思います。
まぁ、そんなこんなでトルコはかなりインフレ率が高い状態です。
トルコ:7月インフレ率15.9%に上昇、予想は下回る-リラ下げ幅縮小
とは言っても、トルコの長い歴史からみればインフレ率15.9%上昇はまだまだ序の口なんですが・・・
トルコ CPI上昇率
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いま市場は、過去の高いインフレ率と通貨安との類似した展開になるのではないか?・・・と警戒しているのだと思います。
政府債務は上記の通りですから、公債デフォルトを予想している人はあまりいないでしょう。
とりあえずこういった状況ですから、トランプ砲はあくまでも着火剤でしかなかったと思います。
なお、今回のトルコリラ安によって欧州の銀行にも影響が出てきそうな展開になっているそうです。
先ほども書きましたが、トルコは対外債務に頼った経済成長をしてきました。その借金を引受てくれていたのは、南欧の銀行だったということなのです。
とりわけ、スペインのBBVA、イタリアのウニクレディト、フランスのBNPパリバは要注意だと、欧州中央銀行ECBが言っています
またやはり、こちらはABNアムロのアナリストのコメントによると、BBVAがやばいんちゃうの?という話です。
Spain’s BBVA tops list of foreign banks exposed to Turkey -ABN AMRO
簡単にまとめると
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スペインのBBVAはトルコに対する最大の貸し手である。
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BBVAは税引き前利益の31%をトルコで稼いでいた。
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国際的な金融機関のトルコへのエクスポージャーは2250億ドル、そのうちのトップがBBVA
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BBVAは2017年2月にトルコギャランティ銀行株を約半分まで買い進めた
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BBVAの財務面でいうと、トルコはメキシコ、スペイン、南米市場について4番目の投資先
また、BBVAの次にイタリアのウニクレディトが大きな脆弱性を抱えているとのこと。さらにオランダIG、香港HSBC、フランスのBNPも脆弱性を抱えているとのことです。
トルコは純金利マージンが4.19%もとれる市場だったとのこと。欧州はご存知の通りマイナス金利状態ですから、行き場を失ったマネーがトルコのような新興国に流れ込んでいたのでしょう。それが急速に巻き戻されています。
ちなみに、このABNアムロのレポートでは、この件がグローバルな問題に発展することはないだろうとの予測をしています。
個人的にも同感です。
ただし、震源が揺れている以上、しばらくはこの影響が市場を覆うはずです。
リスクを回避するために無条件で売る動きは続くと思われます。
とりあえず、アジア危機もロシアルーブル危機も、その後のチャート推移をみればなんということのないことでしたが、その当時においては非常に大きな出来事でした。
そんな感じの展開になるんじゃないかなぁというふうに見ています。
あ、ちなみに!
トルコは再度IMFのお世話になるんじゃないか?と言っている人たちがいますけど、それはたぶんありません。
エルドアンはIMFから脱出したことが最大の功績なわけですから、再度IMFにお世話になるわけにはいかないはずです。
・・・書き忘れるとこでした。
とりあえず、以上です。