対露制裁違反を理由に、中国共産党中央軍事委員会装備発展部と李尚福氏に対し米国が経済制裁対象に~これはインドなど、他のロシア製兵器購入国に対する圧力か~
アメリカが、中国共産党中央軍事委員会装備発展部と同部部長である李尚福氏(Li Shangfu)に対して経済制裁を科すことを決定したそうです。
US sanctions China for buying Russian military aircraft and weapons … CNN
U.S. sanctions China for buying Russian fighter jets, missiles ロイター
中国共産党中央軍事委員会装備発展部は、ロシアの国営兵器輸出企業ロスオボロンエクスポルト社(Rosoboronexport)から2017年にスホイ35を10機、2018年には最新鋭地対空ミサイルシステムS400を購入したとのこと。
米国はこの行為が重大な対露制裁違反にあたるとみており、今回、中国共産党中央軍事委員会装備発展部とその部長の李尚福氏を制裁リストに加えたとのことです。
また同時に、米国政府はロシア軍やその関係者33の団体・個人をブラックリストに追加。
この「経済制裁を通じた米国の敵対者への対抗措置法(CAATSA)」のリストに入った者たちと取引を行うと、今回のように制裁対象になる・・・
とアメリカ政府は言っています。
これは、非常に重大なニュースです。
たぶん日本のマスメディアではガン無視されがちだと思いますが、本当に重大なニュースです。
今までも中国はロシアと軍事物資や兵器をやりくりしており、今になってこれを理由に米政府が制裁を科すというのは、完全に意図的なのです。
これは、たぶん、インド、トルコなどに対するプレッシャーだと思います。
途上国で大人気の地対空ミサイルシステム「S-400(トリウームフ/ triumf/大勝利)」
今回、アメリカ側が一番問題視しているのは、たぶん地対空ミサイルシステムのS-400だと思われます。
ロシアの兵器は昔から安価で高性能なことが知られており、とくに資金に乏しい発展途上国では人気でした。
近年の輸出先をみると、中国、インド、ベトナム、イラン、エジプト、アルジェリア、ベネズエラ、アラブ首長国連邦、カタールなどとなっており、なかでも中国とインドの購入額が大きい。
インドは毎年50億~60億程度の兵器をロシアから輸入しており、ロシアの兵器輸出(150~170億ドル程度か?)の1/3近くを占めています。
いま、インドやトルコはロシアから最新鋭地対空システムのS-400を購入しようとしています。
地対空ミサイル兵器であるS-400は非常に高性能なことで知られており、アメリカのレイセオン製地対空兵器であるパトリオットシステム(PAC3)を買えないような発展途上国を中心に大人気です。(アメリカの同盟国であるはずのサウジですら購入予定です。)
なお、このS-400の売買自体はこれはずっと前から決められていたことで、オバマ政権時にはほとんど問題視されていなかったことです。
ところが、トランプが大統領になってから風向きが変わっています。あきらかに、これらの取引への締め付けを強化する動きが出ています。
関係するロシア関係者を次から次へとCAATSAのリスト入りさせ、それらと取引したら制裁するぞと脅しています。
トランプ大統領はおもに二つの面から、ロシア製地対空ミサイルS-400への対抗をしていると思われます。
ひとつは単純に安全保障問題の面から。
もうひとつは、地対空ミサイルS-400のライバルであるパトリオットミサイルを製造しているレイセオンの雇用を守るため、です。
ミサイルメーカーとして世界最大手のレイセオンは地対空ミサイルのパトリオット/PAC3のほか、巡航ミサイルのトマホーク、空対空ミサイルのスパローなどを製造しています。レイセオンは米国の軍需産業において非常に重要な企業です。
レイセオン(RTN) 日足
トランプ大統領が今回の中国共産党中央軍事委員会装備発展部に対する制裁措置で発したメッセージは
「アメリカ側につくのか、中国ロシア側につくのか態度をはっきりしろ。」
「アメリカ側につくならロシア製兵器を買うな。アメリカから買え。」
というシンプルなものです。
これは世界を二分する価値観の上に構築されたものであり、この冷戦構造が今後長く続くことを示唆しています。
軽く見てはいけないニュースだと思います。むしろ、ここ数日で一番重要なニュースだと思います。
以上です。