【水俣病】チッソの後藤舜吉社長はJNCの早期売却を目指していた?
水俣病加害企業の『チッソ』の後藤舜吉社長が、自身の舌禍が原因で辞任することになったようです。
後藤舜吉社長は5月に行われた水俣病犠牲者慰霊式後に行われた会見で「水俣病特別措置法(特措法)の救済は終了した」と述べたとのこと。
これが多方面からバッシングを浴び、発言を撤回する羽目になりました。
この後藤舜吉社長の発言の背景には、チッソから分離したJNC(Japan New Chisso)の早期売却への意欲があったようです。
チッソの子会社JNC(Japan New Chisso)とは?
JNCは水俣病の加害企業チッソから分離された子会社で、チッソの事業のうち水俣病補償業務以外の全部の譲渡を受けた企業です。
つまり、チッソ本体の事業のうち儲かっているものは全部JNCに譲渡され、チッソは儲からない事業だけが残る状態になります。
チッソ本体の従業員の多くもJNCに転籍となっており、事実上の事業受け皿企業のような形になっています。
水俣病の加害企業チッソは営業黒字だが債務超過企業
水俣病の加害企業であるチッソは、損益計算書上では黒字企業なのですが、水俣病裁判の結果により債務超過に陥っている企業です。
(チッソの短信より)
この債務の部分と補償業務の部分だけをチッソ本体に残し、JNCという子会社は綺麗さっぱりな企業体に再編し、分離独立させる計画が動いています。
ゆくゆくは上場もしくは売却するつもりとのこと。
ただしこれには水俣病の救済措置が完了したという事実が必要であり、そのために後藤舜吉社長は「救済は完了した」との発言をしたもようです。
水俣病特別措置法(特措法)によるチッソとJNCの将来的な分離
水俣病特別措置法(特措法)およびチッソの事業再編計画によると、JNCは毎年度250~280億円の連結経常利益を上げているとのこと。
この利益のうち毎年度80億円程度をチッソ本体に配当金として支払い、残りはJNCの事業に利用すること
当面はチッソはこの利益を使って水俣病被害者への補償をすること。
ゆくゆくは、環境大臣の認可を得てチッソがJNC株式を売却し、売却代金で公的借入金を完済、補償業務を水俣病被害者救済支援財団に引き渡し、賦課金を納付するとのことです。
チッソはJNC株売却後に精算へ~結局、追加損失分は国が補償するしかない?
問題は、上記スキームを実行する場合、あらたに水俣病の被害が認定されたり、現在水俣病で苦しんでいる人たちがより困難な状況になった場合に、補償をする原資が足りなくなるリスクがあるということです。
その場合にはJNCを買収した側は債務を引き継いでいませんので、水俣病救済のための基金が枯渇すれば国が補償するなどするほかなくなり、国民負担が発生することになると思われます。
チッソから分離されたJNCとその周辺企業にはおいしい話ですが、国民負担が発生しかねない状況はどうにも解せない話であります。
なお、チッソは旭化成、信越化学工業、積水化学工業、日本ガス、積水ハウス、センコーグループホールディングスなどの母体企業であり、関係者の親族には皇室関係の方もいらっしゃいます。
かつては総会屋や右翼を雇って株主を殴る蹴るして強行採決したと報じられるような企業です。
今回もいろいろと思惑が蠢いている可能性があり、国民はこのスキームについて注意してみていく必要がありそうです。
以上。