ユニバーサルエンターテインメント創業者 岡田和生氏に逮捕命令
ユニバーサルエンターテインメント創業者 岡田和生氏に逮捕命令
ユニバーサルエンターテインメント創業者 岡田和生氏に対し、フィリピンの裁判所は5日、法務省による起訴内容3件について逮捕命令をだしたそうです。
Philippine court orders arrest of Japanese casino mogul Okada
なお、先んじてフィリピンの法務省は岡田和生氏を起訴していますが、裁判所が後追いで逮捕状を出しているのは、フィリピンの刑事訴訟法がそういった手続きを踏むように作られているからであり、日本とはその点で異なります。
(というか、日本の刑事訴訟法がフィリピンより野蛮だというのは何とも・・・)
とりあえず、今回の岡田和生氏への逮捕命令では、同時に保釈金も設定されています。
保釈金は6627ドルと格安です。
というわけで、今回の件は逮捕そのものの重要性よりも、もっと別の場所に影響があるとみて良いと思われます。
それは、簡単に言ってしまえば、ユニバーサルエンターテインメント(の大株主であり実質的な家族資産管理会社であるOkada Holdings Limited )の経営権を巡る争いです。
岡田和生氏が創業したユニバーサルエンターテインメントとは?~旧アルゼ
ユニバーサルエンターテインメントは日本のパチンコ機、パチスロ機、ゲームソフトなどを開発販売する企業です。
創業者は岡田和生氏
旧社名をアルゼといいます。
1998年にJASDAQに上場
2009年にユニバーサルエンターテインメントに社名変更
近年、会社組織を大きく再編してパチンコ、パチスロ事業から撤退していく一方、カジノ向けメダルゲーム機などの開発を積極化
岡田和生氏が率いたユニバーサルエンターテインメント傘下『Tiger Resorts Leisure and Entertainment』によるカジノ施設『Okada Manila』
ユニバーサルエンターテインメントは近年、カジノ事業にも積極的に参画
ユニバーサルエンターテインメントが99.9%を保有する傘下フィリピン企業『Tiger Resorts Leisure and Entertainment』を通じIR(統合型リゾート施設)Okada Manilaを運営
今回の事件の中心は、まさにこの『Tiger Resorts Leisure and Entertainment』が舞台となっています。
ユニバーサルエンターテインメント株の67.90%を握る岡田ホールディングス / Okada Holdings Limited をめぐる、岡田和生氏、岡田知裕氏、岡田裕美氏の骨肉の争い
ここで話をユニバーサルエンターテインメントに飛ばします。
ユニバーサルエンターテインメントは上場企業ですが、その株式のほとんどを岡田ホールディングス / Okada Holdings Limited という資産管理会社が保有する、非常に歪な親子上場関係にあります。
このOkada Holdings Limitedですが、持ち株比率は岡田和生氏46.4%、長男の岡田知裕氏41.5%、長女の岡田裕美氏9.8%となっています。
ユニバーサルエンターテインメントから岡田和生氏を放逐~下剋上に成功した岡田知裕氏と岡田裕美氏
ユニバーサルエンターテインメントを巡っては、2017年6月に経営上のガバナンス問題がおきました。
これは、会長の岡田和生氏による不正を疑った岡田知裕氏が妹の岡田裕美氏の協力を得て行ったもののようです。
なかなかに生々しい(笑)
まぁ、そんなこんなで岡田和生氏は放逐されました。
岡田和生氏、ユニバーサルエンターテインメント会長職へ復帰するために岡田裕美氏を懐柔~岡田知裕氏と対決へ
ユニバーサルエンターテインメント会長職を放逐されたのち、岡田和生氏は長女の岡田裕美氏を懐柔します。
これにより、ユニバーサルエンターテインメントの大株主である岡田家資産管理会社『Okada Holdings Limited 』のマジョリティを握れることになりました・・・
が!ことはそう簡単ではありません。
岡田裕美氏と岡田知裕氏は30年間の信託契約を契約中~岡田和生氏は会長職に戻れず
岡田裕美氏は岡田和生氏と組んで、今度は岡田知裕氏を放逐しようとしているようですが、実はここでネックになる契約問題が出てきました。
というのも岡田知裕氏は岡田裕美氏から信任を得る際、30年間の信託契約を結んでいるというのです。
これにより、両者の信託契約が続く限りにおいては、岡田和生氏はいくら岡田裕美氏と組んだところで会長職に復帰できないということになります。
とうぜん、岡田裕美氏は岡田知裕氏に対し契約無効の確認請求などの訴えを起こしました。
これを岡田知裕氏は拒否、いまに至ります。
つまり、岡田和生氏はユニバーサルエンターテインメントの会長職に戻れず、というわけです。
岡田和生氏が個人的に所有するAruze Gaming Technologies(アルゼ・ゲーミング・テクノロジーズ)とユニバーサルエンターテインメント社との訴訟
ここで今度は、Aruze Gaming Technologies(アルゼ・ゲーミング・テクノロジーズ)についてみていきます。
この会社はカジノ向け遊戯機を製造している企業なのですが、岡田和生氏が個人的に保有している企業であり、ユニバーサルエンターテインメント社とは無関係(のもよう)。
2018年4月2日、ユニバーサルエンターテインメントはネバダ地方裁判所に、岡田和生氏とAruze Gaming Americaを特許侵害で提訴
その後、訴訟対象地域は米国、マカオ、香港、フィリピンに拡大
ようするにユニバーサルエンターテインメントは岡田和生氏の資金源を断とうとしている・・・そんな感じにみえます。
岡田和生氏が有罪になれば、 Gaming Technologies(アルゼ・ゲーミング・テクノロジーズ)はゲーミングライセンスを失う可能性
岡田和生氏が実質的に所有するAruze Gaming Technologies(アルゼ・ゲーミング・テクノロジーズ)ですが、もしも岡田和生氏に今回の件で有罪判決が出たならば、ゲーミングライセンスを失う可能性が出てきます。
今回の起訴内容はフィリピンの規制当局、つまり政府高官への接待や賄賂の疑惑です。
こうしたものはアメリカでは許されません。
ユニバーサルエンターテインメント社による攻撃はひとまず成功、ということになります。
岡田和生氏が有罪になれば、ユニバーサルエンターテインメント会長への復帰も絶望的
同様の理由から岡田和生氏が有罪になれば、ユニバーサルエンターテインメント社の会長職への復帰も絶望的となります。
政府高官へのわいろを行うような人物をIR事業に就かせるわけにはいかないわけです。
日本国内でもカジノ法案通過、立地に夢洲などが上がっている状況です。
しかし、そういったものにユニバーサルエンターテインメント社が関与していくには、かなり透明な組織になっている必要があるわけです。
とりあえず、過去の不明朗な資金の動きなどが明らかにされないと、岡田和生氏の会長職への復帰はありえないのでしょう。
そしてまさにそこにこそ、岡田知裕氏が懸念するところがあるのだと思います。
ユニバーサルエンターテインメントは今、新しい組織に変化しようと努力しています。
同社と、この岡田和生氏の今後の動向には注目です。