武田薬品がデング熱ワクチン「TAK-003」を開発~デングウイルスの4つの型に対応
武田薬品がデング熱ワクチン「TAK-003」を開発
Takeda’s Vaccine for Break-Bone Fever Works in Late-Stage Study
武田薬品が29日に発表した内容によると、同社は新たなタイプのデング熱ワクチン「TAK-003」を開発したとのことです。
この「TAK-003」は中南米やアジアでの治験最終段階で予防効果と安全性を確認。
販売承認は2020年前半に申請するとのことです。
デング熱・・・デングウイルスを蚊が媒介することで感染する熱帯病
デング熱は、蚊が吸血行動でデングウイルスを媒介して広まる熱帯病の一種です。
主な媒介生物としては、ネッタイシマカやヒトスジシマカなどのヤブカ属となります。
こういった蚊がデング熱(デングウイルス)を持つ人の血を吸ったあと他の人を刺すと、蚊の唾液とともにデングウイルスが人体に侵入。
体内で複製されることでデングウイルスが増殖するとともに(この複製の頻度が高いことが特徴的なもよう)、自然免疫系はデングウイルスに感染した細胞全てを攻撃するT細胞を生成。
重度の症状に発展しやすいと言われています。
デング熱(デングウイルス)の4つの型
デング熱(デングウイルス)には血清型で4つに分類されるとのこと。
この4つの型のうち、一つに感染したすぐあとに他の血清型のデング熱(デングウイルス)にかかると、非常に強いショック症状や出血症状などの重度疾患に繋がるということです。
症状としては血管内皮機能障害、血液凝固障害、およびそれらにともなう胸腔や腹腔への漏出、出血性合併症、酷い場合には骨髄や肝臓などの臓器障害も伴い、死亡に至る恐ろしい状態になるということです。
このあたりの作用についてはまだ解明されていないことが多いとのことですが、このことがサノフィ社のワクチンの小児への使用禁止と関わっているようです。
四価デング熱ワクチン(CYD-TDV)の非デングウイルス曝露者への使用リスク
現在、サノフィ社から四価デング熱ワクチン(CYD-TDV)が提供されていますが、第Ⅲ相試験では2~5歳児で入院が増え、フィリピン、ブラジルでは死亡事件も起きてしまったとのこと。
これは上にも書いた抗体依存性感染増強(Antibody-dependent enhancement、ADE)によるものである可能性が疑われており、このワクチンは現在、ウイルス血清の陽性者には有効だが、陰性者にはリスクが大きすぎるとされています。
武田薬品のワクチンではこのあたりのリスクがないもようで、そのことが、同社の「TAK-003」が望まれる理由になっているようです。
デング熱ワクチン(TAK-003)が、小児および若年者に対してデング熱発症率の減少を示した 臨床第2相試験の18ヵ月時点の中間解析結果をLancet Infectious Diseasesにて発表
もしこのワクチンが販売、承認されるなら、本当にすごい、画期的なことだと思われます。
デング熱(デングウイルス)には毎年5000万人~一億人が感染
年にもよりますが、デング熱は世界中で毎年5000万人から1億人が感染すると言われています。
そして50万人が入院し、12500~25000人が死亡すると言われています。
蚊がわきやすい、熱帯地方の温暖で湿潤な環境で蔓延しやすく、そういった地域の国々の公衆衛生と産業発展の足枷となってきた病気でもあります。
これまでは、貧しい地域での感染が中心であり、デング熱のワクチン開発なども遅れてきました。
しかし、地球温暖化の影響と共に感染地域の拡大が懸念されており、デング熱ワクチンの登場は広く求められる状況となっています。
ぶっちゃけ、がん治療薬などに比べて利益の稼げる病気ではありませんが、こういったところにしっかりと予算をつけて投資をしてきた武田薬品は偉いなぁと思います。
こういった方針が、新しい経営体制でも続くのかどうか、ちょっと興味深いところです。
以上。