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イタリア債務危機ふたたび~ジュゼッペ・コンテ内閣の放漫財政を受けイタリア国債価格急落

ジュゼッペ・コンテ内閣によるバラマキ財政を受けイタリア国債利回り急上昇~イタリア危機ふたたび起きるか?

 

イタリアのジュゼッペ・コンテ内閣によるバラマキ財政方針を受け、イタリア国債の利回りが急上昇(国債価格は急低下)しています。

 

 

2018年10月29日現在、イタリア国債とドイツ国債の利回りは以下のように推移しています。

イタリア国債とドイツ国債の利回りスプレッドが開いてきています。

イタリア国債利回り vs ドイツ国債利回り (5年債)

 

イタリア国債利回り vs ドイツ国債利回り (10年債)

 

なかなか急激に乖離してきていることがわかります。

 

 

 

ジュゼッペ・コンテ政権下で悪化するイタリア国債価格下落と、銀行の健全性問題

 

ジュゼッペ・コンテ政権下で進むこのイタリア国債下落が、欧州の銀行の健全性を損なう可能性が懸念されています。

先ほどロイターで流れていた記事ですが、EUの当局者とイタリアの政府当局者が、モンテ・デイ・パスキ・ディ・シエナ銀行(モンテ・パスキ銀行)の問題で協議したと伝えられています。

EU, Italy monitoringclosely‘ health of Monte Paschi, other banks …

イタリア国債利回りが上昇するということは、イタリア国債価格が下落するということです。

イタリアの銀行は総額約3750億ユーロのイタリア国債を保有しているとされます。

イタリアの銀行は、全資産に占めるイタリア国債の保有比率が1割程度を占めているとされ、とくに健全性に問題があると指摘されてきたモンテ・パスキ銀のような銀行は、イタリア国債を大量に保有していることが想定されるわけです。

(現在の健全性の把握においては、自国政府発行の自国通貨建て国債は自己資本まるまる入れられるわけで、モンテパスキ銀のような健全性に疑問符をつけられている銀行が自己資本比率を保つためにイタリア国債をたんまり買い込むことは当然と言えます。)

※間違ってたら指摘お願いします。確かここら辺のBIS規制とかって議論中だったような気がします。

イタリア国債の価格が下落すると、ただでさえ脆弱なイタリアの銀行の財務が毀損してしまう、そういうリスクが発生しているわけです。

さらにいうと、イタリア国債の海外保有比率は3割を超し、フランスやドイツの金融機関が多くのイタリア国債を保有しているといわれています。

イタリアの国際価格が下落すれば、そうした欧州の銀行全体へ悪影響が出てしまう、という懸念が広がっているわけです。

 

 

 

 

五つ星運動と同盟によるジュゼッペ・コンテ内閣組閣と、これまでの経緯

 

イタリアでは2018年3月4日の総選挙で大衆迎合系ポピュリスト政党「五つ星運動」が大勝しました。

左ぎみのポピュリスト政党である五つ星運動は、極右系の「北部同盟(同盟)」と組閣で協力、フィレンツェ大学教授のジュゼッペ・コンテを第65代首相に指名します。

その後、セルジョ・マッタレッラ大統領が指名拒否を表明するなどのスッタモンダがあったものの※1、経済閣僚を交代させるなどの妥協をして6月1日にジュゼッペ・コンテ首相による政権が発足。

※1・・・経済相候補のパオロ・サボナがガチガチのEU離脱論者だったことをセルジョ・マッタレッラ大統領が懸念。本来ならお飾り的な立ち位置であるべき大統領が組閣に口を出したことで大混乱、再選挙の危機か?と言われていました。

 

 

ジュゼッペ・コンテ首相の所信表明演説

とりあえず組閣が完了して発足したジュゼッペ・コンテ内閣でしたが、しょっぱなからブッ放します。

「市民の声を聴くのがポピュリズムだというのなら、我々はそのとおりだ」

とジュゼッペ・コンテは所信表明演説をしたのです。

世界中がこれにはビックリしました。

6月5日のことです。

そして、経済政策に関しても懸念されていた事態が発生します。

 

 

 

ジュゼッペ・コンテ内閣の経済財政政策と3か年経済再生計画

たしかにEU懐疑派のパオロ・サボナは経済閣僚から外れましたが、そんな程度のことで同盟と五つ星運動の基本理念が変わろうはずもなく、やはり極端な経済政策がポンポンポンと出てくるようになりました。

そのうちのひとつが6月5日のジュゼッペ・コンテ首相の所信表明演説でも言われていた

「緊縮でなく、経済の富を増やすことで公的債務を減らしたい」

という方針。

この具体的な中身が9月27日にイタリア政府が閣議決定した、2019~21年の3か年経済財政計画で明らかになります。

このイタリアの3か年経済再生計画のなかで、ジュゼッペ・コンテ政権は対GDP比の財政赤字比率を2.4%にする方針を表明。

低所得者層向けに月780ユーロ(約10万円)を支給する最低所得保障制度(ベーシックインカムみたいなもの)を導入したり、軽減税率15%の適用対象者(小規模事業者)を拡大すると表明。

これらのために、財政赤字比率が高まるとジュゼッペ・コンテ首相は表明したのです。

 

前政権は19年0.8%、20年0.0%、21年に0.2%の財政黒字化実現を目標にしていましたから、この2.4という数字は非常にショッキングに受け止められました。

(なお、当初はトリア経済財務相は1.6%以内に収める方針だったとのことですが、五つ星運動のディマイオ副党首、同盟のサルビーニ副党首が大反対し、2.4%になったのだそうです)

 

 

ジュゼッペ・コンテ政権下で進むイタリア財政問題の深刻化とEU当局との反目

なお、イタリアの政府債務残高はGDP比130%、ユーロ圏ではギリシャ180%に次ぐ高さとなっています。

イタリアの政府債務は2兆2600億ユーロくらいですから、ギリシャの7倍程度となります。

EU規則ではこれを政府債務残高をGDPの60%以下にするよう求めていますから、ジュゼッペ・コンテ政権の財政拡張策は受け入れられません。

EUとしては手続きをふんで、イタリアに対して制裁金を科すか、供託金の増加を求めていくのではないか、とみられています。

 

 

 

ジュゼッペ・コンテ首相は欧州銀行の持つイタリア国債を人質にとり、欧州債務危機を煽る方針?

どうも今回のジュゼッペ・コンテ首相のやりかたをみていると、ギリシャのチプラス首相のやり方を思い出します。

つまり、自分のところのバラマキをある程度認めてくれないなら、困るのはお前らのところの銀行システムなんじゃないかい?

みたいな脅しのやりかたです。

 

今回、これと同じことを、ギリシャの債務の7倍デカい国がやろうとしています。

落としどころがどこかにはあるのでしょうが、いまのところそれはまだみえません。

ここもとのドイツ銀行の株価下落は、そういったリスクをみての動きのような感じがします。

 

 

とりあえず、以上です。